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ハリネズミをテイムする

「みんな! 行くわよ〜!」

「はぁ〜い!」

 目標の巨大ハリネズミの亜種のところへ走って行ったニニの声に、巨大化した猫族軍団が嬉々として返事をする。

「じゃあ、ヘッジホッグ転がし開始〜!」

 そう言って、ニニがいきなり巨大ハリネズミを横から猫パンチで叩いた。勢い余って横に吹っ飛ぶハリネズミ。

 さすがに危険を感じたのか、叩かれたハリネズミは体を丸めてボール状になって全身トゲだらけの栗のイガみたいになって転がった。

 だけど、背中の針の突き立っている根元の横の部分を叩いたらしく、ニニの手……じゃなくて前脚には怪我はないみたいだ。



「おいおい、あんな全身トゲだらけのやつをどうやってやっつけるんだよ。怪我なんかしないでくれよ。万能薬は少ないんだからな」

 思わず心配そうにそう呟くと、マックスがつまらなさそうに鼻で鳴いた。

「ああ、私がしたかったのに先を越されてしまいましたね」

 そう言いながら、前足で地面を引っ掻いて悔しがっている。

「まあまあ、まだハリネズミはいるから好きなだけ狩れば良いって。それより、あんなトゲだらけになったハリネズミをニニ達は一体どうやって捕まえるつもりだよ」

 太い首元を叩いて興奮するマックスを宥めつつ、背中に乗ったままニニ達を見守る。

 するとバラバラに離れて展開した猫族軍団が、丸くなったハリネズミボールでキャッチボールならぬハリネズミ転がしを始めたのだ。

「ええ、痛くないのかよ。あれってどうやって転がしてるんだ?」

 身を乗り出してニニの手元をよく見てみると、何と驚いた事に、爪を全開にしてハリネズミボールの針を飛び出した鉤爪に引っ掛けて器用に転がしているのだ。

 時々、突き出た小さな岩にハリネズミボールをぶつけつつ、あっちへコロリこっちへコロリとハリネズミボールはひたすら転がされ続けた。

 あれは転がされている側にすればたまったものではない状態だろう。

 上下左右が転がって分からなくなるくらいに転がりまくって、時折いきなり岩に叩きつけられる。それでも丸くなって必死で防御していると、また転がされて岩にドカン。

 とうとう、何度目かの岩にぶつかった拍子に限界が来たらしく、丸まった身体が解けて柔らかいお腹側を上にして伸びてしまった。完全にノックアウト状態だ。

 嬉々としてニニがその腹を前脚で抑える。当然、食い込む寸前のギリギリで止められているが、爪は全開だ。



「お待たせ〜! はいどうぞ、ご主人。今ならもう大丈夫よ」



 呆気に取られて言葉も無く見ていた俺だったが、その言葉に我に返る。

「あはは、ありがとうな、さすがだよ」

 転がされまくった挙句にノックアウトされたハリネズミには同情しかないが、せっかく弱らせてくれたんだからここはしっかりテイムさせてもらおう。

 急いでマックスの背から降りて、ニニが押さえているハリネズミの側に立つ。

 針の無い首の所を押さえて、しっかりと声に力を込めてはっきりと言う。

「俺の仲間になるか?」

「はい! よろしくお願いします、ご主人!」

 何とも可愛らしい声で元気よく返事をされた直後に光を放って、大型犬サイズから更にひと回り大きくなった。

 おお、さすがは亜種だね。すごい迫力だ。しかもどうやらこの子も雌だった模様。ううん。従魔達の女子率また上がったみたいだぞ。

 ニニが押さえていた手を離してくれたので、モゾモゾと動いて腹這いに戻ったハリネズミは俺の側に寄って来た。

「紋章はどこに付ける?」

 手袋を外しながら尋ねると、巨大ハリネズミはちょっと考えて頭を下げた。

「この、頭の後ろあたりの針のところでも大丈夫でしょうか?」

 そう言った直後、とんがっていた針が毛のように体に沿って倒れた。

「あ、今なら触れそうだな。じゃあここで良いか?」

 頭の後ろ、丁度後頭部の位置あたりを触ってやると嬉しそうに頷いたので、針に気を付けつつそっと手を添えて押さえつけた。

「お前の名前はエリキウスだよ。エリーって呼ぶ事にするよ。よろしくな、エリー」

 押さえたところがまた光って戻ったときには、不思議な事に針の部分に肉球マークがきれいにスタンプされていた。

 ちなみに、エリキウスはハリネズミって意味のラテン語だ。

「嬉しいです。どうかよろしくお願いします。動きはあまり速くありませんが、防御に関してはちょっとは自信がありますので!」

 そう言った瞬間、背中の針がひと回り大きくなったみたいに全体に膨らんだ。

「おお、頼もしいな。じゃあ留守番してる時の護衛役をお願いするよ」

 針の無い頭をそっと撫でてやると、嬉しそうに目を細めてか細い声で鳴いた。

「ウキュウ〜」

「あはは、可愛い鳴き声だな。よろしくな」

 もう一度撫でてやってから巨大な体を見る。

「ええと、小さくなれるか?」

「はい、どれくらいになれば良いですか?」

 そう言いながら、どんどん小さくなっていく。

「これくらいなら、ご主人の手の上に乗れそうですかね?」

 リアルハリネズミサイズにまで小さくなったエリーを、手袋をした両手でそっと抱き上げてやる。

「うわあ、これは可愛い。ちょっといつもとは違う可愛らしさだぞ」

 もふもふとは違うけど、これもまた超可愛い。

 針の向きに気をつけながらそっと撫でてやると、エリーは嬉しそうに目を細めてる。

 抱き上げたままで、他の従魔達に順番に紹介してやる。

 ハスフェル達と、彼らの従魔達にも一通り紹介してから、ちょっと考えてしまった。

「ええと、エリーは普段はどこにいたら良いかな?」

 マックスの首輪に取り付けているウサギコンビの籠の中は、俺が時々無意識に手を突っ込んでモフるから危なくて駄目だ。となると、ニニの背中か。だけど、あそこももう満員だぞ。

 困っていると、エリーは俺が背負ってる鞄を見てこう提案してくれた。

「ご主人の背負ってる鞄の外ポケットに入らないでしょうかね? 私の体はこんなですから、他の方達と一緒は危険ですので、出来れば一人で入れる場所が欲しいです」

 言われて鞄を下ろしてみると、あまり使った事は無いが、外側部分に深めの外ポケットが付いているのに気がついた。小さなボタンで留める蓋もついている。カバンの生地はかなり分厚いからエリーの針でも大丈夫だろう。

「入れるかな?」

 鞄を下ろして外ポケットに入れてみると、まるで誂えたみたいにぴったり収まった。

「ああ、ぴったりじゃんか。じゃあここで良いか?」

「はい、すごく居心地も良いですね」

 嬉しそうにそう言って収まってる。

「上手くテイム出来たみたいだな。じゃあ、そろそろ第二面が始まるから次はお前も参加しろよ」

 その声に驚いて振り返ると、さっきまであちこちにいたハリネズミ達はすっかり駆逐されちゃったみたいで、一匹も残っていなかった。

 ハスフェル達が笑って俺を見ている。

「ああ、ごめんごめん。じゃあ次は俺も参加するよ」

 そう言って鞄を背負い直した。



 だけど、マックス達や大興奮のニニ達も参加したおかげで、今回の俺はあんまり活躍出来ませんでした。

 従魔達の狩りの仕方は、先程のニニみたいにハリネズミを横から叩いて転がして無防備な腹側を押さえて一気にジェム化していく方法だ。

 ニニ達は転がして遊びながら狩りをしているが、マックスやシリウス達は、もう嬉々としてハリネズミ達を次々にジェム化していく。よほどストレスが溜まっていたみたいで、俺は黙って一歩下がったのだった。

 あの勢いのマックスの前に迂闊に出たら、俺までやっつけられそうだってちょっと思ったのは、内緒な。

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