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カモノハシとの対決と素材について

「出たぞ。これはデカい!」

 嬉々としたハスフェルの声に、俺はギイの背後から恐る恐る覗き込んだ。

「うわあ。これは駄目」

 思わずそう呟くくらいに、出てきたそいつは色々と駄目だった。

 まず、大きさがおかしい。あれはどう見ても4メートルはある。

 その巨大なカモノハシが、水の中を悠々と泳いでハスフェルとオンハルトの爺さんがいる側に向かって行った。

「チッ、向こうへ行きやがった」

 舌打ちするギイを、思わずジト目で見る。

「俺的には、どんな相手なのか観察出来てありがたいんだけどなあ」

 一応下手に出てそう言ったんだけど鼻で笑われた。うう、泣いてやる。

「おお、来たぞ!」

 自分達に向かって来ているのを見て、嬉しそうなハスフェルとオンハルトの爺さんの声が重なる。

「じゃあ、ケンの為に戦い方の説明をするぞ」

 ハスフェルがそう言ってくれたので、俺は慌ててギイの後ろから出る。もちろん剣は抜いて。



「まず、絶対に気をつけなければいけないのが、この口だ!」

 そう叫んだハスフェルが、いきなり持っていた槍を近づいてくる巨大カモノハシに突き立てた。

 槍は見事にカモノハシの嘴を貫いて止まり、結果として巨大カモノハシを地面に縫い付けてしまった。

 苦しげな悲鳴を上げて暴れるカモノハシ。しかし、嘴を縫い付けて突き立つ槍はびくともしない。

「最大の武器である口を押さえてしまえば、まあ安全だ。頭は硬いから、切るなら首か胴体だ。尻側も、尾で叩かれる危険があるから気をつけろよ」

 そう言って、オンハルトの爺さんが取り出した巨大な戦斧で首の辺りを一撃で叩き切った。

 巨大なジェムが転がる。そして、落っこちた素材はやっぱり見事な毛皮だった。これ、本当に誰が鞣してるんだろう?



 どうしても気になり、一歩下がってから定位置の俺の右肩にいつの間にか座っていたシャムエル様を見る。

「なあ、ちょっと質問だけどさ。あの素材の毛皮って、どうしてあんな状態で落ちるんだ?」

「え? どういう意味?」

「いやだってさ。普通、獲物の皮を剥いでから革にするまでってかなり大変だって聞くからさ。それなのに、どうやってあんなに綺麗にしてるんだろうって思ったんだよ。まあ単なる疑問」

 俺の質問に、シャムエル様は少し考えてから納得したみたいに頷いた。

「ああ、質問の意味がわかった。あのね、ケンは勘違いしてる。この世界でも普通の動物の皮は、大変な手間をかけて専門の職人さんが鞣して革にしているよ。靴や鞄。それから手綱や鞍、他にも様々なところで色々な動物の革は沢山使われているよ」

 もちろんそれは分かる。

 俺が使っている胸当てや籠手なんかの防具もほとんど革製だ。当然、鞍や手綱も。剣帯だって革製だ。

「それに対して、ジェムモンスターの素材っていうのは、そもそも成り立ちが全く違うよ。素材は、そのジェムモンスター自身の中のある部分が、この世界のマナの欠片(かけら)が融合した鉱物と同化して素材になるんだよ。マナの欠片はこの世界の鉱物と同化していてその成分をわずかに含んでいるんだよね。普通はそのまま地面に落ちたきり時間の経過と共に流れてまた地脈に帰る。だけどある種のジェムモンスターは、少しずつ周りにあるマナの欠片を取り入れて自分の体のある部分と融合させるんだ。それは地上に現れる前の、以前ベリーからもらったジェムの卵の状態の時に起こる。それが出来るのが素材持ちの亜種や上位種って訳。だから出来上がった素材は私が指定した形になる」

 ドヤ顔のその説明を聞いて考える。

「ええと、その説明だと、命を維持するために食べたり飲んだりして体に入れるマナとは別のマナがあるって事か?」

 俺の再度の質問に、またシャムエル様が考えている。

「ええと……マナの欠片は、マナを取り入れた際の残りカスって思って貰えばいいかな。喩えて言えば、ある食べ物を食べてみたけど、その一部にとても硬い部分があったとする。無理して食べれば食べられない訳ではないけど、よほど飢えているのでなければ普通なら硬い部分は残すでしょう。その考えが一番分かりやすいかも。で、地面に落ちたマナの欠片が鉱石と同化するの。亜種や上位種はそれを自身の一部と融合させているんだよ。分かった?」



 これまた、難しい話になってきたぞ。

 しばらく考えて、丸ごとまとめて難しい部分は理解するのを放棄して明後日の方角に放り投げておいた。

 要するに、素材を持つようなレベルのジェムモンスターは、成長する時にマナと一緒にそのマナの欠片を取り入れて、自分が成長するのと同時に素材も硬化させていく訳だな。で、ジェムモンスターとなって地上に出て、時間切れで消滅するので無い限りジェムになった時点でシャムエル様が決めた素材を落とす、と。

 多分これで間違ってないだろう。



「あれ?って事は、時間切れで消滅する際はどうなるんだ?」

 思わずそう呟くとシャムエル様に頬を叩かれた。

「ジェムが消滅する時に、素材部分も普通は一緒に消滅しちゃうよ。素材が残るのは、あくまでも身体が崩壊してジェムが残った場合のみだからね」

「おう、身体が崩壊とな。これまた強烈なパワーワード頂きました」

 苦笑いして、そう呟きながら頷く。

「分かった?」

「うん、多分解ったと思う」

「よろしい」

 何故だかドヤ顔のシャムエル様の尻尾を突っついてやると、横から呆れたような声が聞こえた。



「おおい、お前は参加しないのか? どうするんだ?」

 慌てて振り返ると、さっきと違うジェムがあちこちに転がってる。

「お前がのんびりシャムエルと話をしてる間に、もうそろそろ一面クリアーだぞ」

「うわあ、すんません! せっかくだから戦います!」

 そう叫んで、抜きっぱなしだった剣を持ち直す。

「じゃあ、次は小さそうだから、足止めしてやるからお前が斬る役をやってみろ」

 ギイがそう言ってくれたので、小さく頷いて構える。

 岸に上がって来た3メートルくらいのカモノハシの嘴を、ギイが見事に槍の一撃で突き刺して止めてくれる。

「行きます!」

 真横から近寄り、一気に首の下辺りを叩き斬った。

 ジェムと素材が転がる。

「これ、もしも一人の時に会ったらかなり怖いよな」

「同じだよ、槍で今のように足止めしてから剣で斬ればいい。とにかく一番危険な部分をどうにかすればこっちの勝ちだ」

「覚えておきます」

 真剣に頷くと、槍を見せられる。

「じゃあ次は一人でやってみろ、危なそうなら助けてやるからな」

 頷いた俺は、今度はミスリルの槍を持ち出して構え、もう一匹近寄ってくるやつの大きな嘴目掛けてミスリルの槍を叩き込んだ。



 何とか俺も、3メートルクラス程度なら数匹は一人で倒す事が出来たので、今回は一応肉食相手に頑張って戦ったと言っていいだろう。

 落ちた素材とジェムを集めてくれるスライム達を見ながら、ようやく三面までクリアーして、本日の出現分を終了した俺達は、その場に座って少し休憩してから、食事の為に一旦その場を離れたのだった。

 お疲れ様でした〜!

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