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暮れない夜と明けない朝と騒動の予感?

「ご馳走さん、今日のも美味かったよ」

「あのステーキソース、確かに美味かった」

「ふむ、ほんとに美味かったな」

 大満足の夕食を食べ終えてから、ベリー達に果物を出してやってなかった事を思い出して大慌てて出してやり、食後の緑茶を用意している間中、三人は今日のステーキソースが美味かったって話で盛り上がってた。

「まあ、俺も初めて作ったからちょっと反応を見たかったってのはあるけど、そこまで喜ばれたらまた作ってやりたいと思うよな。そうか、お前ら揃って褒め上手なのか」

 俺が笑いながらそう言うと、三人が揃って大受けしていた。別にそんな気はなかったらしいが、じゃあ次からも美味かったら褒めるよなんて真顔で言われて、俺の方が恥ずかしくなったのは内緒だぞ。



 ソースだらけだった顔もすっかり綺麗になって、今はいつもの尻尾のお手入れに精を出してるシャムエル様は、そんな俺達を見て楽しそうに笑っている。

 ああ、そのぷっくらほっぺを俺に突かせてくれ。



「はい、緑茶だよ。一応他にもいくつか変わったステーキソースのレシピをマギラス師匠から貰ってるから、また順番に作ってやるよ」

「おう、ありがとうな。楽しみにしてるよ」

「それで、明日はどこへ行くんだ?」

 自分の椅子に座って、マグカップに入れた緑茶を一口飲んでからそう言って三人を振り返る。

「シャムエルに確認したところ、今回も前回と場所は違うがヘラクレスオオカブトが出ているらしいから、明日はそこへ行くよ。あとはまあ、成り行きだな」

「テントは?」

「一応撤去してから行こう。大丈夫だとは思うが、またコモドオオトカゲに突っ込まれても困るからな」

「だからもう、そのネタはやめてくれって」

 叫んだ俺の言葉に、三人が顔を見合わせて笑い、また大爆笑になった。

 緑茶を飲み終えたところで、その日はそこまでになった。




「それじゃあおやすみ」

 三人がそう言ってそれぞれのテントへ戻る。

 ギイの従魔のブラックラプトルのデネブと、オンハルトの爺さんの従魔のグレイエルクのエラフィはテントの外だ。

「おやすみ」

 二匹にも声をかけてから、自分のテントに戻って垂れ幕を下す。

「さて、それじゃあもう寝るか」

 外が不自然に明るいからどうにも違和感があるが、何となく眠くなってるのはもう外は真夜中って事なんだろう。俺の体内時計もハスフェル達と同程度には優秀らしい。

 まあ、これに関してはシャムエル様に感謝だね。

 だって、飛び地で一番怖いのは、ジェムモンスターじゃなくて体調管理らしい。明るいからと言っていつまでも起きていたり、不自然なくらいに長く寝たりすると、体内時計が狂ってきて体調不良を起こすんだって。

 確かに、普段だったら夜更かししたり寝坊したりしても、その後外に出て過ごせば否応なく体内時計は修正される。普通は時間になったら日が暮れて夜になるからな。

 それがここでは一日中同じ明るさで、日が昇る事も日が沈む事もない。当然夜なんてない。

 そんな中で一定のリズムで生活するのは、時計のないこの世界では至難の業だろう。

 確かに体調管理は必要だよな。



 そんな事をつらつらと考えながら、いったん防具を全部脱いでサクラに綺麗にしてもらう。

 ここも一応、地下迷宮のグリーンスポットと同じで武具は身につけて寝たほうが良いと言われて、剣帯だけ外してアクアに預かってもらい、防具は装着したまま寝ている。

 まあちょっと窮屈だけど、安全第一だよな。



「それじゃあ今夜もよろしくお願いします!」

 振り返るといつものスライムウォーターベッドが完成していて、すでにニニとマックスは待機している。

「もふもふの谷へ突入〜!」

 そう言いながら、二匹の間に潜り込んでいく。

「ああ、このもふもふが俺の癒しだよ」

 ニニの最高に気持ち良い腹毛に潜り込み、少しにじり寄ってきたマックスがギュッと俺を挟む。

 背中側にはいつもの巨大化したウサギコンビが収まり、タロンとフランマが二匹揃って腕の間に突っ込んで来る。

「ご主人ゲット〜!」

 タロンの嬉しそうな声に、フランマの口惜しそうなため息が聞こえる。

「あはは、残念でした。じゃあフランマはベリーと一緒に寝てやってくれよな」

 手を伸ばしてフランマを撫でてやり、顔の横にきてくっつくソレイユとフォールも撫でてやる。

「じゃあ消すね」

 一つだけつけていたランタンをサクラの声がしてニュルンと伸びた触手がランタンを確保して飲み込んだ。

「おやすみ」

 タロンの柔らかな頬毛にくっつかれながら、気持ちよく眠りの国へ旅立って行ったよ。

 本当、相変わらず見事なまでに墜落睡眠だよな、俺。






 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カルカリカリ……。

 つんつんつん……。

「うん、起きるよ……」

 やっぱり無意識で返事をしたきり、二度寝の海に気持ちよくダイブ。



 しばらくして、不意に目が覚めて自分でもびっくりしていた。

「あれ? 何でこんなに急に目が覚めたんだ?」

 しかも、完全覚醒。眠気なんてどこにもありません。

 明らかに変。

 しかも、何故だか分からないけど空気が緊張してるのを感じて、ゆっくりとゆっくりと寝返りを打とうとした。



『動くな!』



 突然、ハスフェルの緊迫した念話が届き、俺はその瞬間に硬直した。

 気がつけば、腕の中のタロンや背中側にいるウサギコンビでさえも完全に戦闘態勢。

 マックスとニニは俺が寝てるからまだ寝転がった体勢ではいるが、身体はガチガチに張り詰めてる。多分、何かあれば一瞬で飛び起きられるのだろう。

『なあ、何があったんだ?』

 出来るだけ刺激しないようにゆっくりとハスフェルに念話で質問する。

 何だかあたりが緊張感で張り詰めてるって事は鈍い俺でも分かるけど、その原因がさっぱり分からない。

『外に誰かいる。おそらく冒険者だ』

 届いた声に、目を見開く。

『少し前にここに来て、明らかにこっちを伺ってる』

『ええ、どうするんだよ!』

 焦る俺の言葉に、ハスフェルは小さく笑う。

『お前は動くな。対応は俺達に任せておけ』

『お、おう。じゃあ悪いけどよろしく頼むよ』

 相手が危険な冒険者じゃない事を願って、とにかく俺は言われた通りに大人しく成り行きを見守ることにしたのだった。

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