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アメンボ乱獲とジェムモンスターの出現について

「ほら、そろそろ次が出てきてるぞ」

「ふえ? 次?」

 飲んでいた水筒に蓋をしていた俺は、ハスフェルの声に驚いて川を見た。

「うわあ、また出た……」

 見ると、川の茂みの下あたりから、例の巨大アメンボがまたゾロゾロと出てきているところだった。

「はあ、二面目突入だな。仕方ない、行くか」

 カバンに水筒を入れて転がしておき、すっかり寛いでるハスフェル達を振り返った。

「なあ、せっかくの長持ちするジェムなんだから、これも街へ行ったら割引価格で出すから集めるのを手伝ってくれないか。街の人の役に立つだろう?」

 その言葉に、三人が苦笑いしながら立ち上がった。

「そこまで言われたら、知らん顔は出来んな」

「確かに、それじゃあ人助けだと思って頑張るか」

「そうだな。じゃあ頑張って戦うとしよう」

 それぞれ、少し離れて川に近付く。

 オンハルトの爺さんは、いつもの剣や斧ではなく、長い鞭を手にしていた。

「俺はここで、川下に逃げた奴を叩いてやるよ」

 そう言って、川下側に少し離れて陣取った。

「確かにそうだな。あれ、だけどそれならジェムは川の中に落ちちゃうんじゃ無いか?」

 自分の剣を抜きながらそう呟くと、ゴールドスライムがパタパタと川の上に飛んでいくのが見えた。

「あ、成る程ね。そこから落ちたジェムを拾うのか。それなら大丈夫だな」

 ばらけてあちこちに転がる俺のスライム達を見てちょっと笑った。

「じゃあ、集めるのは任せるからよろしくな!」

 大きな声でそう叫んで、目の前に滑ってきた巨大アメンボを叩き斬った。




 結局、四面クリアーしたところでその日は終了になった。

「はあ、かなり集まったみたいだな。よしよし、これなら割引価格で出しても大丈夫そうだぞ」

 息を整えるために何度か深呼吸をしてから、剣を鞘に戻した。

 スライム達がせっせと落ちたジェムを拾ってくれている。

「これ、スライムがいなかったら集めるだけでも一仕事だよな」

 小さく笑って、足元に転がる色つきジェムを拾った。

「お、レア発見」

 何だか嬉しくなって薄い緑色のジェムを透かして見る。

 世界が緑色に染まって見えるけど、その景色に歪みがなくて驚いた。普通は、歪んで見えたり見えにくい部分があったりするのに、これにはそれが全くと言って良いほど無いのだ。

「へえ、すげえ透明度だな」

 全く濁りやムラがなく、見事なまでに透き通っているそのジェムを感心して何度も眺めていた。

「それが、長持ちして強い火を出せる理由なんだよね」

 いきなり俺の座った膝の上に現れたシャムエル様が、得意げにそう言ってジェムを持つ手を叩いた。

「へえ、そうなんだ?」

「そうだよ、透明度が高いって事は結晶体が規則正しく作られている証拠な訳。なので当然、強い火力で長持ちするんだよ」

「へえ……すごいな」

 ドヤ顔で説明されても、結晶が燃えるって事の理由の根本を理解してない俺にすれば、こうとしか言えないって。




「腹減ったなあ。おおい、またさっきの草原へ戻るか? それとも続けてまだ何か出るのか?」

 鼻をひくひくさせるシャムエル様は、しばらくして俺を振り返った。

「今日のここの出現はもう終わりみたいだね」

「なんだってさ。どうする?」

「それなら河原のキャンプ場へ戻ろう。今日はもう終わりだ」

「おう、お疲れさん。それじゃあさっさと戻って飯にしようぜ」

「はい、疲れたから肉が食いたいです!」

 ギイが、手を上げて笑いながらそう大声で叫ぶ。

「俺も食いたい! じゃあ戻って肉を焼こう!」

 俺の言葉に三人が拍手して、それぞれの従魔に飛び乗った。

 全員が定位置に着くのを確認してから、俺たちはその場を離れて河原のキャンプ場へ戻って行った。



「なあ、そう言えば気になってたんだけどさ。ちょっと聞いて良いか?」

 マックスの頭に座ったシャムエル様に、少し前から気になってた事を聞いてみる。

「え、何?」

 顔だけ振り返ったシャムエル様の尻尾を突っつき、後ろを振り返る。

 もう、さっきの小川は見えない。

「ここのジェムモンスターの出現なんだけどさ、なんだか変だなって思って」

「え、何が?」

 また振り返って器用に首を傾げる。

「ここには沢山のジェムモンスターの出現箇所があるって言ってたよな」

「そうだよ。要するにこの飛び地自体が、全部地脈の吹き出し口そのものだからね」

「じゃあ、もっとジェムモンスターであふれそうなのにな」

 意味が分からないらしく、また首を傾げて目を瞬いている。おいちょっと可愛いじゃ無いか、その後ろから見てもはみ出してるその頬! ちょっともふもふさせろ。

 手を伸ばしそうになって、必死で我慢した。

 だって、今、空気に蹴られてマックスの背から落っこちたら一巻の終わりだぞ。



 脱線しそうになる思考を無理やり戻して、俺は周りを見回した。

「だって、あんな沢山ジェムモンスターが出る出現孔があちこちにあるのなら、一度に出るジェムモンスターの量も多いはずだろう? 誰にも狩られないのなら、もっと沢山はぐれのジェムモンスターがいそうなのになって思ったんだよ」

 それを聞いたシャムエル様は、納得したように頷いてまた前を向いた。

「以前、ハスフェルが説明したと思うけど、出現したジェムモンスターが飛び地の中である一定の時間を過ぎたら地脈に同化して消滅するんだ。しかも、その時間ってのは個別に決められているんだ」

「個別に決められてる?」

「そう、例えば一回の出現で千匹出るとしよう」

 さっきのアメンボならそれくらい有りそうだ。

「とすると、その中の大体一割、この場合は百匹程度が半日程度そのままの状態が保たれる個体。残り九割は割とすぐに消滅する個体なんだ」

「ええ、長くてもたった半日で、残りの九割はすぐに消えるってか?」

「そうだよ。ちなみに河原に到達して外の世界へはじき出された個体は、十日程度でこれも消滅します。もちろんジェムごと消滅して地脈に返ります」

「へえ、そうなんだ」

 確かにレアな事が分かって感心していると、またシャムエル様が振り返る。

「しかも、飛び地の出現率は二重に設定されていてね。人が近くにいれば一気に増えるんだ。そうじゃなければ一度の出現数はそれほど多く無いよ」

「へ、へえ、そりゃあすごいな。俺達が遠慮なくガンガン集めてたのは、いわばフィーバー状態だったわけか」

「前回ほど多くはないけどね。まだまだ出るからしっかり集めて帰ってね」

「あはは、そりゃあすげえや。じゃあ遠慮なくガンガン集めさせてもらいます」

 のんびりとそんな話をしてる間に、草を刈ったキャンプ地まで戻って来た。




「それじゃあテントを張って、夕食の肉を焼くか」

 マックスの背から飛び降りた俺の言葉に、同じく従魔達から飛び降りた三人から、拍手と喜ぶ声が聞こえてちょと笑ったよ。

 お前ら、ホントにどれだけ肉が好きなんだって。

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