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ジュース作りその一

 遠くに見える巨木に、ハスフェル達が展開しているのが見える。

 おお、頑張れよ。



「それじゃあこっちも始めるか。ええと、まずはリンゴのジュースを作るか」

 そう呟いて、まずは山盛りに取り出してくれたリンゴの一つを、見本用に芯を取り除いて皮はそのままに乱切りにする。

「こんな感じだ。とりあえず二十個分切ってくれるか」

 それを見たサクラが、元気よく返事をして嬉々としてリンゴを取り込んでは切ってくれる。

 いちばん大きな銅の片手鍋を使う事にして、切ってもらったリンゴを入るだけ入れて、リンゴがひたるくらいに水を入れてから火にかける。

 今回は水が無いので手持ちの水筒の水で作る。ここへ来て最初にシャムエル様から貰った、いくらでも水が出る、あの水筒だ。



 リンゴの入った鍋を火にかけている間に、レモンを取り出してレインボースライム達に手分けして搾ってもらう。

 鍋にレモン汁も入れて一煮立ちするまで我慢、我慢。

 煮立ってリンゴが少し半透明になったら火から下ろし、待ち構えていたアクアとサクラに綺麗にすりおろしてもらう。

 これは熱くても平気なんだな。

 それをざるの上に布を敷いて流し入れれば、布を通って濾されて下のボウルに激ウマリンゴジュースが落ちてくる。

 最後のこれはもう時間仕事なので、このまま放置しておけばいい。……予定だったのだが……。



「ご主人、これはこのままなの?」

 興味津々のスライム達が、布を敷いたザルに流し入れたすり下ろしリンゴをガン見している。

「あ、それは触っちゃ駄目なやつだぞ。そのまま時間を掛けてじっくり濾すんだから……」

 しかし、時すでに遅し。

 俺の言葉が終わる前に、オレンジ色のアルファがザルごとあっという間に取り込んでしまったのだ。

「こらこら。返してくれよ。だからまだそれは取り込んだら駄目なやつなんだって」

 次の鍋を火にかけながら、慌てて止めに入る。

「これで良いんだよね?」

 ところが、1分とかからずぺろっと吐き出したそれは見事に濾し終わっていて、続いて吐き出された布の中にはリンゴの搾りかすが残っている。

「ええと、きつく絞ると渋みが出るって聞いたんだけどなあ」

 スライム内部で雑巾絞りされていたら、最悪の場合、苦味成分入りのリンゴジュースになるかと慌てたのだが、試しに少しだけスプーンですくって味見をしてみたが、苦味は全くなくて完璧な状態だ。

「ええ、どうやって絞ったんだよ、これ!」

 アルファを振り返ると、ポヨンと伸びて戻った。

 今のは分かるぞ。あれはドヤ顔だ。



「へえ、上手い事やったね。これは凄い」

 机の上に現れたシャムエル様が感心したようにそう言うのを聞いて、驚いた俺はシャムエル様を見た。

「ええと、何をどう上手い事やったわけ?」

「あのね、スライム達の収納は時間停止だって言ったでしょう?」

「うん、それは知ってる。いつもお世話になってるぞ」

「今のアルファちゃんは、その時間停止を止めて逆に時間の経過を早くしたわけ。短い時間に感じたけど、中では数時間は経ってるよ」

 一瞬、アルファの中にあるものの心配をする。

 確か、レインボースライムの中には地下迷宮で集めたジェムと、ここで集めたリンゴとぶどうが入ってたはず。数時間程度なら問題無いけど、何度も繰り返せばあっという間に傷んじゃうぞ!

「ええと……中にあるものに被害は及ばないのか? それって」

 恐る恐る尋ねると、シャムエル様は自信満々で大きく頷いた。

「そこが凄いところだよね。アルファちゃんは、任意の物だけの時間経過を加速したんだよ。中で別室を作ってその中で作業をしたわけ。分かる?」

「それってつまり……収納しているものの時間経過を、個別に任意で変更出来るって事だよな?」

「そうだね。いやあ驚いた。この子達ってテイムしてまだ一年にもならないのにね。凄い成長ぶりだね」

 そう言ったシャムエル様に拍手なんかされて、俺はもう驚きに言葉も無かった。

「つまり、これだけ時間経過を早くしてくれって言ったら、その通りに出来る?」

「うん、一瞬ってわけにはいかないけどね。まだ切ったり砕いたり擦り下ろしたりするのは無理みたいだけど、今みたいに時間の経過を変化させるのは、何となく分かったよ。次はもっと早く出来るようにするね。完成したら他の子達にも教えま〜す!」

 また得意げに伸び上がったアルファを、半ば呆然としつつも撫でてやる。

「すごいなあ。本当にお前ら最高だよ」

 おにぎりみたいにモミモミしてから戻してやる。



「お、そろそろ次が沸いたぞ」

 茹だったリンゴをすり下ろしてもらい、また次を煮る。

 何度かやっているうちにアルファはすっかり時間調整のコツを掴んだらしく、アルファに教えてもらった他の子達も順番にやってくれて、その結果、全員が時間調整の技をマスターしたのだった。

 スライム達、有能すぎるぞ。



 取り敢えず全部で二百個分のリンゴで作ったところで、一旦休憩にした。

 まあ俺は火の番をしてただけで、あとは全部スライム達がやってくれたんだから、たいして疲れてないけどさ。

「ええと、これどうするかなあ」

 大鍋に山積みになったりんごの搾りかすを見て考える。ハスフェル達も甘いものはたいして食べない。ジャムも出してあるけど、あんまり減っていないんだよな。

 マギラスさんと一緒に作ったジャムがまだまだあるし、こんなにたいても誰も食わねえって。

 ってことで、これはご褒美にこいつらにあげても良いか。

「じゃあその搾りかすは、皆で分けて食べてくれていいぞ。喧嘩するなよ」

 俺がそう言った途端、スライム達が搾りかすの入った大鍋に群がった。



「わあい、いただきま〜す!」



 同時に全員の声が揃い一瞬でゴールドスライムになって、大鍋いっぱい分の搾りかすをぺろっと平らげてしまった。

「もしかしてそれになってると、食べたものも公平に分配されるのか?」

 笑いながらそう聞くと、パタパタと羽ばたいて俺の目の前まで来て、くるっと回って見せた。

「そうだよ。これが一番上手く分けられるね」

 得意気にパタパタと羽ばたくアクアゴールドを捕まえて、笑った俺はもう一度おにぎりにしてやった。




 丁度その時、あの巨木で戦ってたハスフェル達が戻ってきて腹が減ったと言うので、一旦片付けて皆で昼食を食べる事にした。

 頑張った彼ら用には、揚げ物色々とパンも色々出しておいてやり、自分で好きに挟んで食べるようにしておいた。

 葉物の野菜や、スライスしたチーズ、燻製肉と生ハムも切って並べておく。茹で卵やタマゴサンド用に潰してマヨネーズで和えてあるのも出しておく。

 俺は、唐揚げとレタスをクロワッサンもどきに挟んだのと、コッペパンもどきに、マヨネーズとマスタードを塗って、生ハムをぎっしり挟めるだけ挟んでみた。

「うわあ、なんかめっちゃゴージャスな昼飯になったぞ」

 飲み物は、もちろん作ったばかりのリンゴジュースだ。粗熱を取ってから大急ぎで冷蔵庫で冷やしたので、何とか冷たくなってる。

 当然ハスフェル達もリンゴジュースをとっていたので、冷えた分はあっという間に無くなってしまった。

 うん。午後からはブドウジュースだけじゃ無く、もう一回リンゴジュースも作ろう。

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