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飛び地での明けない朝

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

「うん、起きます……」

 いつものごとくもふもふに挟まれたパラダイス空間で熟睡していると、いつものモーニングコールチームが起こしに来た。

 半ば無意識に返事をしながら、やっぱり二度寝の海にダイブする俺。



「相変わらずだねえ」

「本当に起きないですよね」

「じゃあ起こしますね〜!」


 ジョリジョリジョリジョリ!


 嬉々としたソレイユとフォールの声が聞こえた直後、耳の後ろと首筋を思いっきり舐められた。

「うわあ! 待った待った!起きるって!」

 飛び起きてそう叫んで転がる。

 寝ていたのは、スライム達が揃って作ってくれたスライムウォーターベッドだ。

 反動でポヨンと跳ね返ってニニの上に転がって戻る。

「ああ、このもふもふが俺をダメにするんだって……」

 そう呟いて、もふもふの腹毛に潜り込む。

「駄目です。もう起きてください。ご主人」

 笑ったニニにまで首筋を舐められて、もう一度悲鳴を上げて飛び起きた。

「ご主人起きた〜!」

 喉を鳴らしたニニに頬擦りされて、笑った俺は大きなその首に抱きついた。

「おはよう、それじゃあ起きるよ」

 立ち上がると、スライムベッドが一瞬で分解していつものバラバラに戻る。



 ここは水場がないので、顔を洗うのは諦めてサクラに綺麗にしてもらう。

 手早く身支度を整えて、剣帯も装備してからテントの垂れ幕を開ける。

「いつもなら、明けた空が見えるんだけどなあ。ここは相変わらず太陽のない空。分かっててもやっぱり変な感じだよな」

 変わりばえのないのっぺりとした空を見上げてそう呟き、大きく伸びをする。

「おはよう、もう起きたみたいだな」

 俺のテントと並んでいたハスフェルの言葉に振り返ると、彼もテントから出て来た所だった。

「おう、おはよう。それじゃあ何か食ったら行くか? ええと、テントはどうするんだ?」

「まだ日程に余裕があるからな。今回はじっくり攻略するつもりなんで、数日はここを拠点に近場を回るつもりなんだが、それで良いか?」

「ああ、その辺りはお任せするよ。じゃあテントはこのままでいいんだな」

 テントを見上げてそう言うと、ハスフェルも自分のテントを見て頷いた。

「ああ、万一ここに他の誰か来たら、分かるようにはしてあるから安心しろ」

「自力でここまで入ってこられるような人なら、先客がいても気にしないんじゃないか?」

 俺の言葉に、ハスフェルは鼻で笑った。

「甘いな。そんな奴ほど自分の前に誰かいるなんて知れたら大抵は怒るぞ。最悪の場合、取り分が減るなんて言って襲ってくることすらある」

「うわあ、それは勘弁してほしいなあ」

 思いっきり嫌そうに言うと、今度は苦笑いされた。

「まあ、お前ならそう言うだろうと思ったから、一応手は打ってある。だから心配するな」

 神様の打つ手がどんなものなのか、ちょっと聞きたい気もするが、絶対聞かない方が良い気もしたのでここは黙って拝んでおいた。

「了解です。何だかよく分からないけど、よろしくお願いします!」

「おお、任せろ。ところで腹が減ってるんだがな」

「はいはい、じゃあ準備が出来たら来てくれよな」

 笑って反対側の垂れ幕も巻き上げて風通しをよくしてから、テントの中に戻る。




「ベリー、果物出しておくな」

 サクラに果物の入った箱を出してもらい、声をかけて置いておく。ウサギコンビは外に出て、茂った草を黙々と食べている。ここの草は美味しいって言ってたもんな。

 嬉しそうに駆け寄ってくるベリーとフランマを見て、モモンガのアヴィもベリーに預けておく。




「さて、じゃあこっちはいつものサンドイッチでいいな」

 ちょっと考えて、いつものサンドイッチ色々と、おからサラダも出しておく。

「後はコーヒーと、あ、これも出しておこう」

 コーヒーとミルクと一緒に並べたのは、マギラスさんと一緒に作ったあのリンゴジュースと、ぶどうのジュースだ。砕いた氷を入れたお椀も一緒に並べておく。

 ちゃんと冷蔵庫に入れてしっかり冷やしてから収納してあったので、氷はいらないかも知れないけど一応出しておく。



「おはようさん」

 ちょうど準備が終わったところに身支度を整えた三人が入って来て、それぞれ席に座る。

 タマゴサンドの横で自己主張をしているシャムエル様を笑って突っついてから、ご希望のタマゴサンドと野菜サンドを取り、おからサラダも小皿に取る。単に俺が食べたかったんです。

「これも飲みたい!」

 リンゴジュースとブドウジュースの瓶を叩くシャムエル様に笑って、黙ってハスフェルが取り出してくれたグラスを二つ取って、両方注いで席に着いた。

「食、べ、たい! 食、べ、たい! 食べたいよったら食べたいよ!」

 今朝は、食べたいダンスだ。

 いつものお皿を振り回しながら、かなり激しく踊っている。

 最後はブレイクダンスみたいに片手で持ったお皿を突き上げて、尻尾を抱えてぐるぐると回転した。お見事。そして最後は、転がったまま決めのポーズを取ってる。

「はいはい、今日も格好良いぞ」

 笑ってもふもふ尻尾を摘んでやると、嫌そうに取り返された。

「これはダメ!」

「ええ、ちょっと触るくらい良いじゃんか」

 文句を言いつつ、どちらの顔も笑っている。

「じゃあ、シャムエル様はタマゴサンドだな」

 差し出されたお皿に、タマゴサンドを大きく切って乗せてやる。

「ジュースはここにお願いします!」

 何故かいつもよりも大きな盃が二つ取り出されたので、リンゴとぶどうのジュースをそれぞれに入れてやる。俺の分が少なくなったので、もう一回入れてこよう。

 結局、マギラスさんと一緒に作ったジュースは一回で無くなってしまった。

「うわあ、皆、美味しいものはよく知ってるな。急いで追加を作っておかないとな」

 そう呟いて、飲みかけていた手を止める。

「あれ、ちょっと待てよ。ここで半月過ごした後は西アポンへ行って、そのままバイゼンに行くんだよな。ううん、どこかで時間を取ってジュース作りをしたいぞ。作り置きの料理はかなりあるもんな」

 作り置きの在庫を思い出して考えていると、三人が揃ってこっちを見た。

「何だ、これ、もう無いのか?」

 ものすごく残念そうに言われて、ちょっと笑った。

「ええと、じゃあここで俺だけ留守番して作るか? 一日あればかなり作れると思うけどな」

 昨日の大ムカデとの戦いを思い出して、提案してみる。

 ジェムモンスターと戦うのと料理をするのをどちらか一つ選べって言われたら、俺は断然料理だよ。



 その言葉に、三人が真顔で相談している。



 しばらくして相談がまとまったらしく、結局、今日は俺はここで留守番をしてリンゴとぶどうのジュースを作れるだけ作る事になった。

 マックス達は全員ハスフェル達と一緒に行き、スライム達とラパンとコニー、アヴィが俺と一緒に留守番をしてくれるのも決まった。




「じゃあ行って来ますね!」

「ご主人の分のジェムと素材は、私たちがしっかり集めて来ますからね」

 頼もしい事を言ってくれる従魔達全員を、順番にしっかりと撫でたり揉んだりしてやってから、嬉々として走って行く一同を見送った。

「さてと、それじゃあ片付けたらジュース作りをするか。説明するからお手伝いよろしくな」

 バレーボールサイズで自信満々に俺を見上げるスライム達も順番に撫でてやってから、まずは机の上を片付ける事にした。

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せめて猫族1人くらい護衛で残さなくていいの?
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