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カメレオンセンティピート

「うわあ、またなんか出てるなあ」

 食事を終え、片付けて大木の下に戻った俺達は、巨大な幹を見上げてそう呟くしかなかった。

 何やら樹皮と同じ色の細長いのがモゾモゾと動いているけど、あれはなんだ?

 うっかり近づいて覗き込みそうになったところを、後ろからハスフェルに無言で襟首を掴まれた。

「駄目だ。あれも危ないから勝手に近付くな」

 小さく笑ったギイの言葉に、壊れたおもちゃみたいに何度も頷く。

 危ない危ない。二度あることは三度ある。

 うん、気をつけような、俺。



「で、あれは何なんだ?」

 少し下がったところでようやく解放されて、そこから木を見上げて質問する。

「あれはカメレオンセンティピート。大きな顎で噛まれたら大惨事だ。万能薬が貴重な今、出るとはな。ふむ、どうするかな」

 ハスフェルも木を見上げて、腕を組んで考えている。

「ファルコとプティラに落としてもらって、従魔達も総がかりで仕留めるしかなかろう」

「だな、これだけの数がいれば、まあ取りこぼす事もあるまい」

「怪我には注意しろよ。毒は無いが、あの顎に本気で噛まれたら腕くらい簡単に持っていかれるぞ」

「うわあ、何それ怖いって」

 割と本気でビビりつつ、センティピートって何だろう? と、必死で頭の中で考えていた。




「お前はミスリルの槍を使え。恐らくそれが一番安全だ。狙うのは胴体の節の隙間部分だ。それから、地下迷宮でベリーに教わった投げた物を引き寄せる、あの術も出来れば使ってみるといい。ただし、獲物ごと飛んで来ても知らんからな。その時は自分で何とかしろよ」

 ハスフェルにそう言われて堪えきれずに吹き出す。それを聞いたギイとオンハルトの爺さんまで、一緒になって笑ってるし。

「古傷を抉るんじゃねえよ。そんな怖い事するか!」

 ミスリルの槍を取り出して叫び返し、ファルコとプティラを振り返る。

「って事らしいから、また木から落とすのを頑張ってやってくれるか」

「了解です。それならここは巨大化した方がいいですね。じゃあ行きます」

 一瞬で大きくなったファルコとプティラが、揃って羽ばたいて上空に舞い上がる。

「じゃあ行きますね!」

 上空からの声に、俺たちは武器を構えた。周りでは木を取り囲むように従魔達が巨大化して展開している。

 ベリーとフランマは、別の木に行ったみたいだ。

「カメレオンセンティピートが出るのは、ここと向こうの二本だけだからね。しっかり頑張って貴重な素材を確保してください!」

 右肩に現れたシャムエル様の言葉に小さく頷いた俺は、深呼吸をして構えた槍を握りしめた。



 ファルコが木に向かって突進して、ぶつかる寸前で身を翻して大きく広げた足で何かを掴んだ。

 その周りの塊が弾けて、細長いものがボトボトと落ちる。

 ファルコが掴んだそれを放り上げて地面に向かって叩き落とすのが見えて、俺は思わず叫んでいた。

「うわあ、センティピートって何かと思ったらムカデかよ。そりゃあ怖いって」

 地面に落ちた巨大ムカデは、俺の身長ぐらいは余裕でありそうだ。子供の腕くらいありそうな体の両横についたあの大量の足で、地面に落ちた後は慌てたようにあちこちへ逃げ出す。

「うわあ、これはかなりシュールな光景だぞ」

 都会育ちなので、リアルムカデにはほとんどお目にかかった事がない。せいぜいが、庭の植木鉢の下にいる小さなヤスデくらい。

 なので、ちょっとこの光景はドン引きするレベルだよ。

 別に虫は嫌いじゃないけど、これは何と言うか……俺の苦手なあの芋虫に通じるものを感じる。



 ごめん、これ……俺は駄目かも。



 本気でドン引きしている俺と違い、猫族軍団は嬉々として飛びかかり、前脚でムカデを押さえつけて胴体の真ん中あたりに噛み付いている。

 そして驚く事に、何とそのまま食いちぎった。

 猫族の顎の力、すっげえ。

 呆気なくそのまま瞬時にジェムになって転がる巨大ムカデ。大きな顎が二本転がるのが見えて、何故か安心した。

「良かった。アンキロサウルスの胴体にある角みたいに、体の横にあるあの大量の足が全部素材とか言われたら、絶対に捨ててたところだ」

 俺の呟きに、聞こえていたらしいオンハルトの爺さんが笑っている。

「全くお前は好き嫌いの激しい奴だな。あの顎の素材も良い武器になるぞ。それから、ごく稀に胴体の部分も素材として落とす奴がいる。これは本当に偶然に期待するしかないが、それがあれば最強の胸当てになるぞ。ぜひ確保して作ると良い」

 おお、亜種の素材以外にもまだレアドロップ品があるって事か。さすがは飛び地。そりゃあ絶対欲しいな。

 しかし、また現れた巨大ムカデをファルコがボトボトと叩き落としているのを見て、やっぱり黙って一歩後ろに下がった俺だった。はは、物欲よりも嫌悪感の方が優先される程度のヘタレでごめんよ。



 しかし、そんな時って絶対に俺のところへ来るんだよ。しかも超デカいやつが!



 俺の目の前に落っこちて来た巨大ムカデは、そのまま当然の如く真っ直ぐに俺に向かって突進して来た。絶対余裕で3メートルはあるし横幅も俺の肩幅よりデカい。ハスフェルくらいありそうだ。

「ええ、何だよこの超デカイの!」

 叫びながら咄嗟に横に逃げる。

 しかし当然、巨大ムカデは向きを変えて俺を追いかけてくる。

 俺、またしても完全にロックオンされてます。

「こっち来るんじゃねえよ!」

 叫びながら振り返り、ミスリルの槍を構えて力一杯投げる。見事に体を貫いて地面に突き刺さった槍だったが、驚いた事にまだ死なない。カチカチと奇妙な鳴き声なのか何なのかわからない音を立てて大暴れしている。

「何をしてる、早く首を落とせ!」

 ハスフェルとオンハルトの爺さんの叫ぶ声が同時に聞こえて、俺は慌てて腰の剣を抜いた。

「うわあ〜〜〜!」

 叫びながら駆け寄り、巨大な顎の牙に噛まれないように、後ろ側から思いっきり振りかぶって大きな頭を叩き斬った。

 直後に巨大なジェムと顎が落ち、ミスリルの槍の周りに、数個の甲羅のような塊が落ちた。

「おお、複数落ちたぞ。これは素晴らしい」

 オンハルトの爺さんの嬉しそうな声が聞こえて、俺は安堵のため息を吐いてミスリルの槍を引き抜いた。

 今回は頭に槍が突き刺さったウェルミスさんが出てくることも無く、簡単に引き抜けて安心したのは内緒な。



「回収しま〜す!」

 嬉しそうにそう言いながらアクアが跳ね飛んで来て、転がったジェムと素材を回収してくれた。

「良かったじゃないか。あれだけあれば選べるから一番良いのを残して後は売ってやれ、泣いて喜ばれるぞ」

 オンハルトの爺さんの言葉に苦笑いした俺は。深呼吸をしてから次のために身構えたのだった。

 まあ、最初にあのデカイのをやっつければ、今いる普通サイズは怖く無くなったよ。

 って事で、それ以降はこっちへ来た時には俺も参加して、三面クリアーしたところで今日の出現回数は終わったらしい。

 はあ、怖かった。お疲れ様でした〜!

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだってあんなにタフなんでしょうかね 昔は番茶掛けて大人しくさせてから なんてやり方ありましたが 今は薬剤揃っているので楽になりました。
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