表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
451/2069

美味しい夕食と吟醸酒

 宿泊所に戻った後は、何となく全員俺の部屋に集まり、好き勝手にダラダラして過ごした。

 まあ、たまにはこんなのんびりも良いよな。



 夕食は、マギラスさんに教えて貰った味付けで、グラスランドブラウンブルをサクラに頼んで山盛りミンチにしてもらい、濃いめの味付けで甘辛く炊いて肉そぼろを作ってみた。

 なかなか上手く出来たのでちょっと考えて、今夜の夕食は、この肉そぼろと炒り卵とさやえんどうもどきを刻んだのと一緒に盛り合わせて、三色肉そぼろ丼にしてみた。彩りに、真ん中部分に刻んだ紅生姜もどきも乗せてみる。付け合わせは、大根とにんじんの浅漬け。ワカメとお豆腐の味噌汁だ。

「おお、なんだかとっても華やかになったぞ」

 大きめのボウルをどんぶり代わりにして盛り合わせてみたら、すごく華やかな女子力高めのメニューになった。ま、ここにいるのはマッチョなヤローばかりだけどな。

 そしてこれを見て思った。マギラスさんの店の料理もそうだったけど、料理って、色合わせも大事な要素だよな。視覚的に華やかだったり綺麗だと、なんだか美味しそうに感じる。

 うん、これからは盛り付けもちょっとは考えてみよう。




「はいどうぞ、お代わりはここにあるから各自好きなだけどうぞ」

 それぞれの具は、大きめのお皿に山盛りにしておき、ご飯の入った木製のおひつも一緒に並べておく。

 自分の分の丼を作り、味噌汁をよそってから、いつものようにミニテーブルの即席祭壇に布を敷き、おれの分の料理を並べて手を合わせる。

「今日のメニューは三色肉そぼろ丼だよ。付け合わせは大根とにんじんの浅漬けと、ワカメと豆腐の味噌汁です。少しだけど、どうぞ」

 いつものように頭を撫でられる感触の後、料理を順番に撫でた収めの手が消えていくのを見送った。

「さて、それじゃあ俺も頂くとするか」

 どんぶりと味噌汁を持って自分の席に置き、お箸と浅漬けの小皿も持ってきて席に着く。改めて手を合わせてから食べようとしたら、三人も手を合わせている。どうやら俺のお供えが終わるまで待っていてくれたみたいで、素知らぬ顔で彼らも食べ始めた。

 さり気ない気遣い、ありがとうな。

 お前らの、そういうところ、実は俺、結構気に入ってるよ。




「うわあ、これはまた美味しそうだね。それにすごく綺麗」

 さあ食べようと丼を持とうとした瞬間、机の上に現れた目を輝かせたシャムエル様が、身を乗り出すようにして覗き込んで来た。

 そしてシャムエル様の手には、当然のようにやや深めの小鉢がある。

「食、べ、たい! 食、べ、たい! 食べたいよったら食べたいよ! 食べたいよったら食べたいよ!」

 俺の右手に尻尾を叩きつけつつ、新作ダンスをキレッキレに踊るシャムエル様。良いぞもっとやれ。

 そして最後は、お皿を差し出してキメのポーズだ。

「はいはい、今日のダンスも格好良いぞ。じゃあ、お好きなだけどうぞ」

 苦笑いしてもふもふ尻尾を突っついてやり、スプーンでご飯ごと肉そぼろの部分と炒り卵の部分、それから緑のサヤエンドウもどきの部分をそれぞれたっぷりとすくって入れてやる。

 小鉢の中でも綺麗な三色になるように盛り合わせてやり、真ん中に紅生姜もどきをちょっとだけ入れてやる。

 もう一つ取り出した盃は、味噌汁を入れてやる。

「これは? 浅漬けは要らないのか?」

 浅漬けの入った小皿を見せると、一瞬でもう一枚小さな小皿が出てきた。

「ここに入れるんだね。了解」

 笑って大根とにんじんを一本ずつ入れてやる。

 うん、後でちょっとお代わりしよう。まだ食べてないのに、二割どころじゃないくらい減ったぞ。

「はいどうぞ。新作グラスランドブラウンブルの三色肉そぼろ丼だよ」

「うわあ、美味しそうな香り。それじゃあ遠慮無く、いっただっきま〜す!」

 どうやら最近のマイブームらしい、妙なリズムのいただきますの後、やっぱり顔面から肉そぼろにダイブして行きました。




「おお、自分で作って言うのもなんだが、美味いなこれ」

 食べながら思わずそう呟くと、聞こえたらしくハスフェル達三人が、揃ってサムズアップしながら大きく頷いてくれた。

「これ、このままおにぎりの具にもなりそうだな。真ん中に三色の具を詰めて、大きめに握っておけば良いよな。あ、この味付けで肉巻きおにぎりも出来るな。よし後で作ろう」

 照り焼きほど甘くない濃い目の味付けが激ウマだったので、これも作り置きメニュー入り決定!

 ハスフェル達も、別にご飯がダメって訳じゃ無いので、たまにはご飯メニューも作ってやろう。



 大満足の夕食を食べ終わり、ハスフェルが出してくれた大吟醸を少しだけ貰った。

「明日には出発だから、少しだけな」

 そう言って、小さめのグラスに氷を入れて吟醸酒を注ぐ。

「おお、めっちゃ美味い」

 ため息と共にそう呟き、残りを飲み干す。

「ああ、美味しい。だけど、もったいないからゆっくり飲まないと」

 そう言って二杯目を注ぐために瓶の栓を抜いた。



 そして気がついたら……いつの間にか瓶の中身が半分ぐらいになってたんだけど、どうしてかな?






 ぺしぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみふみ……。

 カリカリカリカリ……。

 つんつんつんつん……。



 先程から、いつものモーニングコールチームが起こしてくれているのはわかってるんだけど、全く起きる気配無しです。

 俺の頭は起きてるんだけど……はっきり言って、俺の身体は全然動きません。

 物凄い頭痛とだるさ、そして喉の渇きと若干の吐き気。

 これは完全に、二日酔いですねえ。昨夜の俺、どんだけ飲んだんだよ。

 ってか、いつ寝たのか覚えてないんですけど?



 いやあ、あの吟醸酒は危険だよ。口当たり良いし美味しいもんだから、ついぐいぐい飲んじゃったんだよな。

 あれは翌日確実に休める日以外は、先に量を決めて別の器に移してから飲もう。ビール瓶サイズをそのまま飲むのは危険がいっぱいだよ。



 脳内で必死に言い訳をしていたが、やっぱり体は全く言う事を聞いてくれません。

「ごしゅじ〜ん」

「起きてくださ〜い」

 語尾にハートマークが付いていそうな可愛らしい声が耳元で聞こえる。

 まずい、これは非常にまずい状況だぞ。

 モーニングコール最終兵器の最強チームが、俺をロックオンしてるよ。

「起きないわねえ」

「仕方がないわねえ」

「じゃあ、サクッと起こしてやってちょうだい!」

 耳元で笑うシャムエル様の声が聞こえたが、俺は全くの無抵抗だ。

 まずいって……起きないと……。



 ザリザリザリ!

 ジョリジョリジョリ!



 悲鳴は、上げたと思う。

 でもって、潜り込んでいたニニの腹から転がり落ちたのも覚えてます。

 だけど、その後どうしたのかの記憶が無いのは……一体どうしてなんだろうねえ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ