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マギラスさんの店へ行く!

 ギルドを出た俺達は、相変わらずの大注目の中をマギラスさんの店へ向かった。

 見覚えのある道を通り、巨大な五つ星ホテルのような建物に到着する。

 おお、やっぱり衛兵みたいな人が入り口に並んでるよ。

「ご苦労さん。予約していないが四人と従魔達の世話を頼むよ」

 ハスフェルが平然と話しかけると、顔を上げた衛兵さん達は彼の顔を見てにっこりと笑った。

「ようこそお越しくださいました。もちろんすぐにご用意致します。さあどうぞ。ご案内致します」

 前回と同じく、俺とオンハルトの爺さんは少し下がって完全に観客気分で見ていたら、門を開いて執事みたいな人達が何人も出てきた。

「これはハスフェル様。ギイ様。ようこそ」

 先頭にいた執事さんがそう言って深々と頭を下げる。

 そして前回同様、彼らは持っていた手綱をその後ろにいた別の執事さんに預けたのだ。

「ようこそお越しくださいました。ケン様。恐れ入りますが従魔達をお預かりさせて頂きます」



 ああ、確か前回もこんなんだったなあ。



 若干遠い目になりつつ苦笑いした俺は、マックスの手綱をその人に託した。それを見て、オンハルトの爺さんもエラフィの手綱をその隣にいた執事さんに渡した。

「それじゃあ、食事してくるから、この人たちと一緒に行って待っててくれるか」

 マックスを撫でながらそう言うと、マックスは少しだけ尻尾を振って頷いてくれた。

「前回と同じ店ですね。ええ、覚えていますよ。それじゃあ待っていますね。しっかり食べてきてください。ご主人」

 持って来てくれた留まり木にファルコとプティラを留まらせてやり、後をお願いして俺達は中に入った。



「おお、広い廊下。そうそう、これこれ」

 小さく呟き、今から食べる料理の数々を思って更に嬉しくなる。

 案内された部屋は、やっぱり個室でしかも前回よりも広い部屋だった。大きな円形の机の周りに、椅子が並んでいて、そこに順番に座っていく。

 特に注文もしなかったのに、すぐに綺麗なグラスに入った透明のお酒が運ばれてくる。

「あ、これ前回と同じ梅酒っぽいやつだ」

 嬉しくなって手に取る。

「さて、何に乾杯するかね」

 笑ったハスフェルの声に、俺は思わず手を挙げて主張した。

「そりゃあこれだろう。旅の安全を願って。乾杯!」

 三人が同時に吹き出し、その後何度も頷いて同意してくれた。

「確かに、それは大事だよな。まだまだ行かなきゃならない所が沢山あるんだからな、乾杯だ」

「ふむ、それは確かに大事な事だな。乾杯」

「特に、ケンには必要そうだからな。では、我ら全員で祈ってやろうか。乾杯」

 ハスフェルとギイの言葉に、オンハルトの爺さんまで同じように真顔で頷いている。

 ちょっと一言言いたい気もしたが、まあ、旅の安全は必要だと思うから、しっかり祈っといてくれ。

 一気に飲み干したそのお酒は、確かに、懐かしくも爽やかな梅酒の香りがした。




 すぐに前菜と思しき料理が運ばれて来て、その後も、次から次へとどんどん料理が運ばれてくる。

 料理はどれも和洋折衷みたいな感じだが、あの絶品ローストビーフも登場して、それを見た俺はあまりの喜びに、思わず拍手してハスフェル達に笑われたよ。

 おお、俺が作るのと全く違う。さすがはプロの料理人!

 俺の所だけ用意されているお箸にも密かに感動しつつ、俺では絶対に作れない絶品料理の数々を心ゆくまで堪能させていただきました。

 ここの有難いところは、専任の給仕をしてくれる人が、大皿で運ばれて来る料理を、それぞれのお皿に取り分けてくれるので、俺とは食う早さも量も違う彼らと一緒でも食いっぱぐれる心配は無い。

 ちゃんと俺の食べられる程度の量を、それぞれしっかり確保してくれているのだ。うう、ありがとうございます。



 途中に出された大吟醸もこれまた絶品で、思わずお願いしてもう一杯もらいました。ってか、これも後で教えてもらって絶対確保しよう。めちゃめちゃ美味しいよ。

 その後は、地元の工房が造っているのだと言う地ビールを出してもらって、俺のテンションはもうこれ以上無いくらいにまで上がったね。文字通りテンションマックスだよ。このしっかりとした香りとコクと苦味。

 しかも、何故だか俺の分だけがキンキンに冷やされていたのだ。

 ハスフェル、お前らか。お前らが言ってくれたのか。俺がビールを冷やして飲むのが好きだって。ありがと〜! もう気分は最高だぞ!



 デザートに出されたのは、杏仁豆腐っぽい。そして当然だがこれまた絶品。

 よし、ぶどうジュースだけじゃなく、俺でも作れそうなスイーツもあったら教えて貰おう。もちろんシルヴァ達に作ってやる為だ。





「ああ、美味しかった。ご馳走様でした。お腹いっぱいだよ」

 大満足でデザートの杏仁豆腐もどきを食べ終えた俺は、深呼吸をしてそう言ってスプーンを置き、手を合わせた。

「確かに絶品だったな」

 同じく手を合わせたオンハルトの爺さんの言葉に、俺も頷いてこっそり拍手を送った。

「どう、お腹一杯になった?」

 突然机の上に現れたシャムエル様が、ご機嫌そうに目を細めながらそんな事を聞いてくる。

「おう、もう最高だったね。でもって、姿が見えないと思ったら、やっぱり厨房でつまみ食いしてたのか?」

 笑ってふかふかの尻尾を突っついてやると、慌てて尻尾を取り返してその場に座り込んで身繕いを始めた。

「もちろん、全部頂いてきたよ。いやあ、やっぱりマギラスの作る料理は最高だよね。もうどれから食べようかって、楽しみで仕方がなかったよ」

 嬉しそうに頬をぷっくらさせながらそんな事を言われて、もう笑うしかなかったね。まあ神様のする事だから、つまみ食いくらい良いんだろうけどさ。



 その時、ノックの音がしてマギラスさんが入って来た。

「如何でしたか。お口に合いましたか?」

 大柄なマギラスさんに、ハスフェル達が笑顔で答える。

「おお、ご馳走さん。いや、やっぱりお前の料理は最高だな」

「あはは、そりゃあありがとうな」

 ハスフェルと手を打ちあった後、マギラスさんは俺を振り返った。

「お久しぶりです。ケンさん。お噂は色々と届いていますよ。ハンプールでは大活躍だったんだとか」

 笑顔で握手をしながら、俺は思わず笑っちゃったね。でもまあ、こう言う店なら外の街の噂が入ってくるのも早いんだろう。

「あはは、まあ勢いだけでやらかしましたよ。それにしても、本当にどれも美味しかったです、ご馳走様でした!」

 力一杯そう伝えると、わかり易く笑顔になる。

「最高の褒め言葉だね。嬉しいですよ」

「でな、実はお前に頼みがあって来たんだが、少し時間をもらっても良いか?」

 ハスフェルが立ち上がって、後ろから肩を組むみたいにして寄り掛かって話しかける。小学男子か。

「おう、どうした?何か困り事か?」

 当たり前のように、そう答えてくれる。

「ケンがな、お前にレシピを教えて欲しいらしいんだが、どうだ?」

「ああ、構わないぞ。今度は何のレシピを知りたいんだ?」

 これも当然のようにそう言ってくれ、俺は密かに感動していた。

「その前に、これ、ちょっと食ってみてくれるか」

 そう言いながら後ろからギイが差し出したのは、あの飛び地で確保した、例の激うまのリンゴとぶどうだ。

「へえ、大きなリンゴだな。初めて見る。これは、ぶどうだな……こっちも、見た事が無い」

 手渡されたそれを見るなりいきなり真顔になって、真剣な様子で検品し始める。おお、いきなりスイッチ切り替わったっぽい。

「まさか……新種か?」

「実を言うとそのまさかだよ」

「……食べてみても良いか?」

 ハスフェルがにんまり笑って頷くのを見て、後ろに控えていた給仕の人が小さなナイフと小皿を渡してくれた。

 まず、リンゴにナイフを入れて、一切れ切る。

 だけど、そのやり方が変わっていた。

「へえ、横に薄く削ぐんじゃなくて真ん中に向かって垂直にナイフを差し入れて、穴を開けるみたいに一切れ取り出したよ。あ、そうか。そうやれば外側と内側と一度で味見が出来るんだ」

 見ていて思わず声に出して呟くと、ハスフェル達に笑われた。

「お前は相変わらずだな、今気になるのがそこか」

「ええ、だって変わった切り方したからさあ」

 一応文句を言いつつ、それを口にしたマギラスさんを俺達は揃って見つめた。



 さて、マギラスさんの反応や如何に?

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