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ギルドにて

「美味しい食事をご馳走様でした。急に押しかけたのに、本当にありがとうございました」

 笑顔の俺の言葉に、ネルケさんも嬉しそうに笑う。

「いやあ、あんなに喜んで食べてくれたら作り甲斐があるってものですね」

 俺達は、顔を見合わせて同時に吹き出した。



 クライン族の定番の朝食なのだと言う絶品ソーセージのポトフは、本当に美味しかった。

 その俺達の為に用意してくれた朝食は、あっという間にマッチョ二人と爺さんの腹に収まってしまった。

 先に俺の分を確保しておいて良かったよ。そうじゃなかったら、本気で食いっぱぐれてたんじゃないかと思うくらいに、三人とも豪快な食べっぷりだったよ。

「もっと、ゆっくりして行ってくだされば良いのに」

 残念そうなクーヘンの言葉に、俺は笑って肩を竦める。

「あちこち行く予定があるんでね。だけど、秋の早駆け祭りには、絶対帰って来るからさ」

「そうですね。お待ちしてます。今度こそ負けませんよ」

 笑って胸を張るクーヘンと拳を突き合わせ、それから苦笑いしてオンハルトの爺さんの横に大人しくしているエルクのエラフィを見た。

 今は普通の馬くらいの大きさになっているので、角の分が大きいくらいでそれ程の威圧感は無いが、あの脚力は驚きだった。

「次回は、オンハルトの爺さんも参加する気満々だからさ。絶対、前回以上の大混戦になるぞ」

 驚くクーヘンに、俺は先日の森での駆けっこの話をした。

「ええ、全力疾走のマックスに勝ったんですか?」

 横で聞いていたハスフェルとギイも揃って大きく頷く。

「そ、それは強敵現る。ですね……」

 呆気に取られたように、エラフィを見上げている。

 爺さん、そこ、ドヤ顔ってんじゃねえよ。



「いつでも遠慮無く来てください。貴方達の為の部屋は、いつだって用意されていますからね」

 ちょっと目を潤ませたクーヘンはそう言って拳を突き出した。

「それじゃあ、またな。絆の共にあらん事を」

「ああ、また会いましょう。絆の共にあらん事を」

 思いのこもった拳を突き合わせて、笑ってしっかりと頷き合った。



 マーサさんまで見送りに駆け付けてくれ、改めて挨拶をした俺達はクーヘンの家を後にした。




 うっかりそのまま街を出て行きそうになったんだが、ギルドの前を通ったらエルさんが仁王立ちで待ち構えてて、俺達全員そのまま連行されました。

 って事で、今俺達は、ギルドの二階にあるいつもお世話になってた買い取り部屋にいます。



「何があるんだい? 何でも喜んで買うよ」

 大きな机の前で、エルさんは目を輝かせてバンバンと机を叩いている。何故だかその後ろには、満面の笑みの商人ギルドマスターのアルバンさんまでいるよ。

 その隣では副ギルドマスターの爺さん達が、同じく満面の笑みでトレーを積み上げて待ち構えているし。

「ええと……どうする?」

 片手を上げて、一旦エルさんに背を向けた俺は、後ろにいたハスフェル達に小さな声で相談する。

『アポンの洞窟と、地下迷宮の恐竜のジェムは出しても良かろう』

『何処まで出す?』

 ハスフェルの念話に、念話で返す。

『そうだな……トライロバイトはブラック、シルバー、ゴールド。各色全て出しても良いだろうな。アンモナイトとシーラカンスのジェム、アンモナイトの貝殻は、そのまま装飾品にもなるから王都に近いここなら喜ばれると思うぞ。後はそうだな、トリケラトプスとアンキロサウルスも各色出して良いだろうな。後は、ステゴザウルス各色。ラプトル各色辺りかな。飛び地なら……』

『いやいや、もう充分過ぎるくらいだと思うぞ』

 慌てたように念話で返すと、三人同時に吹き出してるし。

 どれも、クーヘンの店に委託でも出しているけど、またギルド経由だと一般の店とは販売ルートが違うらしいから、同じのを出しても良いらしい。



 俺の口座の金額がまたとんでもない事になってる。

 これはもう、バイゼンで何か大きな買い物をする気満々になってるので、予算はとりあえず置いておく事にしている。




 深呼吸を一つして振り返ると、机一杯にトレーを並べたエルさん達が、満面の笑みで俺を見ている。

「ええと、じゃあ出しますね」

 全員からの笑顔の圧にドン引きしつつ、そう言ってアクアゴールドの入った鞄を抱え直す。

「まず、トライロバイトはブラック、シルバー、ゴールド各色有ります。素材は角です。アンモナイトは貝殻が素材ですね。シーラカンスは素材は無しです。それから、ええと……トリケラトプス各色。素材は三本の大角。アンキロサウルス各色。素材は棘ですね。ステゴザウルス各色。素材は大小の背板。それからラプトル各色、素材は鉤爪。どうしますか? どれも大量にありますよ」

 出来るだけ何でもない事のように言って、見本のジェムと素材を順番に並べて行く。

 アンモナイトの見本は、ちょっと考えて直径2メートル弱位の小さめのを出しておいた。



 並んだジェムと素材を見たエルさん達が、揃って見事に固まった。



「他は、定番の小動物系や爬虫類、昆虫系なんかのジェムは相当ありますので、どれでも欲しいのがあれば言ってください」

「一体どうやって……」

 呆気に取られるエルさんの言葉に、俺は苦笑いして肩を竦めた。

「まあ、ハスフェル達の知り合いの人達が大張り切りしてくれましてね。俺はこの中ではちょっとだけしか戦闘に参加してませんよ。だって、ゴールドトライロバイトに突かれて死にかけたし、ゴールドステゴザウルスにも、本気で殺されかけましたからねえ」

「お、おお……それはまた……」

 顔色を無くしたエルさんとアルベルトさんだったが、ハスフェル達三人は、俺の言葉に後ろで大爆笑してるし。

「うう、そこ。笑うな〜!」

 振り返ってそう叫び、三人の頭を捕まえてデコピンしてやる。

 オンハルトの爺さんは額を抑えて呻いただけだったが、ハスフェルとギイは俺の渾身のデコピンに無言で膝から崩れ落ちた。こいつら、こう言うちょっとした攻撃に弱いんだって。

「よし、勝った!」

 拳を握って叫ぶ俺に、エルさん達が揃って吹き出す。

「やったな、この野郎!」

 笑ったハスフェルとギイが即座に起き上がり、二人がかりで捕まって背中や首を擽られる。

「待って! それは無理〜!」

 悲鳴を上げて、今度は俺が膝から崩れ落ちる。

 オンハルトの爺さんとエルさん達がまた吹き出す音が聞こえて、部屋は大爆笑になったのだった。

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