出発
昨日、間違えて投稿したページに、今日の更新をはめ込みます。
一度投稿した小説の削除って、出来ない仕様なんですね(^^;;
二年以上投稿していて初めて知りました。
大変失礼いたしました。ケアレスミスには気を付けますm(_ _)m
「ううん、やっぱり美味しい」
出来立ての回鍋肉は、ご飯との相性もピッタリだ。
自分で作って言うのもなんだが、美味しく出来たと思う。
ハスフェル達も大満足だったようで、あっと言う間に完食してくれたよ。
「ふむ、なかなか美味かったよ。ご馳走さん。この味は、ハンウイック辺りで食べられている料理に近いな」
満足そうなギイの言葉に、ハスフェルとオンハルトの爺さんも頷いている。
「ええ、何処だって?」
鞄から地図を取り出して広げながらそう尋ねる。
「ここだ」
地図を覗き込んだギイが指差したのは、今いるカデリーの街から左下に斜めに伸びる街道の先にある海沿いの場所で、そのハンウイックは、大河とよばれるダリア川の大きな河口の端にある街だ。
「へえ、このカデリー平原から海沿いの地域が、多分俺の故郷に近い環境なんだな。懐かしい味が恋しくなったらこの辺りに来ればいいって分かったよ」
「いいんじゃないか。故郷の味があるのは嬉しかろう」
オンハルトの爺さんにまでそんな事を言われて、ちょっとほろっと来たのは内緒だ。
誤魔化すように平然と後片付けをしていたら、最後のご飯の配達が来てくれ、慌てて今夜は俺が金を払った。
「沢山のご注文、ありがとうございました。あの、これも少しですが、よかったら召し上がってください」
そう言って差し出してくれたのは、なんと木箱に入ったおはぎだった。
しかも、あんこがまぶしてあるのと、きな粉がまぶしてあるのがあって、二段になった木箱にぎっしりと入っていたのだ。これはもう、おまけなんて量じゃない。
「駄目ですって、ちゃんと払いますよ!」
思わず受け取った後、予想外の重さに慌てた俺の叫びに、ハスフェル達まで何事かと見に来て、結果、払います。いえこれはサービスです。との押し問答が続き、何とか押し切り二割増で代金を支払ったよ。
恐縮して帰っていくご飯屋さんを手を振って見送りながら、俺は一つ忘れていた事を不意に思い出した。
「ああ、忘れてた!」
部屋に戻るなりそう叫んだ俺に、三人が揃って振り返る。
「どうした?」
ハスフェルの言葉に、俺は苦笑いしてため息を吐いた。
「屋台の蕎麦屋さんで、追加の麺と出汁を買おうと思って頼んだんだよ。そうしたら、ここには無いけど、それくらいの量だったらいつでも大丈夫だから、店舗の方に買いに来てくれって言われてたんだ」
「ああ、そうなんだ。それなら明日、出かける前にその店に寄れば良いんじゃないか?」
「そうだな。じゃあ悪いけど蕎麦屋に寄ってから出発だな」
って事で、明日の予定を確認する。
明日は、屋台で朝食を食べたら蕎麦屋に寄ってそのまま出発。街道を離れて郊外へ出た後、ファルコと大鷲達に頼んで西アポンへ。マギラスさんのお店で食事をして、俺がマギラスさんにレシピを教えてもらう。それでその日は、西アポンのギルドの宿泊所に泊まって、翌日同じくファルコと大鷲でハンプールへ。
クーヘンの店へ行き、ペンダントを無くしたお詫びと、新しいジェムの追加を置いてくる。その後オレンジヒカリゴケを収穫に行き、それが終わればバイゼンヘ。
よしよし、今度こそ予定通りに行くように祈っておこう。
こっそりシャムエル様に手を合わせておき、その夜は解散になった。
「それじゃあ今夜もお願いします」
既にベッドに横になって待ち構えているニニとマックスの間に、靴と靴下を脱いで潜り込む。
「あんなに暑かったのに、最近は朝晩は肌寒くなってきたな」
薄毛布を取り出して上から羽織る。背中側にはいつもの巨大化したラパンとコニーがくっつき、胸元には瞬時の差でタロンが潜り込んできた。
フランマは、ちょっと悔しそうにしてベリーの横に座るのが見えた。ソレイユとフォールは、いつもの俺の顔の横だ。
「それじゃあ消しますね」
ベリーがランプを消してくれた。
「おやすみ。明日はいっぱい走れるな……」
マックスのもふもふの毛を撫でてそう言い、目を閉じた俺は気持ち良く眠りの国へ旅立って行った。
相変わらず、もふもふパラダイスの癒し効果半端ねえっす。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
「うん、起きるよ……」
いつもの如く、半分無意識で答えた俺は、毛布を顔の上まで引き上げてニニの腹毛に顔を埋めた。
「ご〜しゅじ〜ん。お〜き〜て〜」
耳元で面白がるようなソレイユの声が聞こえる。
「お〜き〜な〜い〜とお〜どうな〜るの〜かなあ〜?」
フォールの声が聞こえて、ゆっくりと毛布が剥がされる。
ザリザリザリ!
ジョリジョリジョリ!
耳の後ろと首筋を舐められて、声無き悲鳴をあげた俺は慌てて起き上がった。
「ご主人起きた〜!」
「やっぱり私達が最強よね〜!」
「ね〜!」
「誰が最強だって〜?」
起き上がった俺は、ソレイユとフォールを捕まえて両手でそれぞれの頭を捕まえてグリグリと撫で回してやった。
嬉しそうに喉を鳴らす二匹の所に、タロンとフランマが割り込んで来て、さらにはラパンとコニーのウサギコンビまで乱入して、もふもふの海に、またしても俺は沈んで行ったのだった。
『おおい、そろそろ起きろよ』
もふもふを満喫していると、念話でハスフェルの笑った声が届き、何とか頑張ってもふもふの海から起き上がった。
『おう、おはよう。もう起きてるよ。今から顔を洗うところ』
『それじゃあ準備が出来たら言ってくれ』
笑ったギイの声も届き、返事をした俺は洗面所へ向かった。
いつものように顔を洗ってサクラに綺麗にしてもらった後、スライム達を順番に水槽に放り込んでやる。
水浴びしているファルコとプティラにも水を掛けてやってから、ベッドへ戻って自分の身支度を整えた。
「さてと、それじゃあ行くとするか」
最後に剣帯を身に付け、外していた剣を装着する。
姿を消したベリーとフランマが庭から戻って来て戸締りをした俺達は、ハスフェル達の待つ廊下へ出て行った。
ギルドに鍵を返して挨拶をしてから、いつもの広場へ向かう。
「今日はタマゴサンドが食べたいです!」
片手を上げたシャムエル様のリクエストで、タマゴサンドと野菜と鶏肉をたっぷり挟んだサンドイッチを買う。マイカップにコーヒーを入れてもらい、広場の端に寄って座ったマックスに寄りかかって食べた。
タマゴサンドの真ん中部分をシャムエル様に先に齧らせてやり、残りを黙って食べた。
「良い街だったよな。また来よう」
最後のコーヒーを飲み干して、最後にもう少し屋台で色々と買い込んでから蕎麦屋へ向かった。
思ったよりも大きなお店で、残念ながらまだ店は開いてなかったんだけど、半分扉は開いていて、中では仕込みをしている人達が大勢見えた。外から声を掛けて聞いてみた所、茹でていない状態の蕎麦の持ち帰りは出来ると言われたので、ガッツリ買わせて頂きました。ざる蕎麦用のつゆもあると言うので、これも当然購入。他にも、揚げや天かすなども一緒に分けてもらった。よしよし、これで俺の好きなメニューがまた増えたぞ。
大満足でお金を払って、店を後にした。
そのままゆっくりと街を出て、しばらく街道沿いに進み、途中で街道から外れて森の中に入った。
大喜びで一気に駆け出すマックスとシリウスを先頭に、ギイの乗るブラックラプトルのデネブと、オンハルトの爺さんの乗るグレイエルクのエラフィがぴったりとすぐ横をついて来る。ニニも遅れずに軽々とついて来る。
森を抜けた先に広がる草原で止まった俺達は、そのまま大鷲を呼び、俺達は巨大化したファルコに乗せてもらって、俺の希望を優先してもらい、まずはクーヘンのいるハンプールへ向かったのだった。