麻婆豆腐と回鍋肉
いつもの時間に投稿したはずが出来ていませんでした。何故?
って事で再投稿です。m(_ _)m
「ええと、豆腐は……量販店の木綿豆腐Bでいいな。後は豚のミンチと白ネギ、生姜とニンニク、あとは何だっけ……」
小さな声で呟きつつ、材料を確認してサクラに出してもらう。
「まずは、合わせ調味料を作っておかないとな。ええと、お酒は……よし、これを使ってみよう」
取り出したのはハスフェル達がたまに飲んでいる樹海産の火酒だ。紹興酒はさすがに無いのでこれで代用だ。もちろん、水で五倍くらいに薄めて使ったよ。
「それから甜麺醤と醤油、干し肉で取った出汁、後は砂糖と蜂蜜、これを混ぜておく」
それから別のボウルに水溶き片栗粉も作っておく。木綿豆腐は、水切りしてからサイコロ状に切っておく。
豚の挽肉は、他の準備をしている間にアクアがサクッと用意してくれた。
「じゃあ、炒めていくぞっと」
下準備が出来たところで、コンロに火をつけて油を引いたフライパンでみじん切りにしたニンニクと生姜を炒めていく。
「刻んだ白ネギも入れますよっと」
アクアが少し離れたところから刻んだ白ネギをお皿に入れて渡してくれる。相変わらず火は怖いらしく、火を使ってると机の上にスライム達は上がって来ない。
「挽肉も出してくれるか」
白ネギを入れたフライパンをゆすりながらそう言うと、触手が伸びてきて挽肉の入ったお皿を置いてすぐに下がる。
「そんなに怖いもんかね?」
苦笑いしながら挽肉をフライパンに放り込んで、火を強めて一気に炒めていく。
「だって、アクアに火がついたら蒸発しちゃうもん!」
突然聞こえたアクアの声に、俺は驚いて振り返った。
「ええ! マジ?」
「マジマジ!」
うんうんと頷くように震えながら、アクアの肉球マークが上下する。
「そんな事したらご主人と一緒にいられなくなるから、絶対駄目なの!」
アクアの言葉に同意するように、サクラもアクアの横にくっついて一緒に震え始めた。
ハスフェル達の足元では、レインボースライム達とクロッシェも、同じようにプルプルと激しく震えている。
「成る程。水属性のスライムの弱点は炎な訳か。了解だ。そりゃあ絶対近寄っちゃあ駄目だな」
大きく頷いた俺に、嬉しそうにスライム達が足元で跳ねたり転がったりし始める。
「挽肉に火が通ったら、豆板醤を入れるっと」
レシピを確認するように呟きつつ、豆板醤を適当に入れてまた混ぜる。あ、ちょっと多かったかも。
「ここにさっき作った合わせ調味料を入れて一煮立ちさせて、豆腐を投入っと」
フライパンを揺すりながら、調味料と豆腐を入れて、フライパンをあおるみたいに前後に揺すって豆腐を潰さないように混ぜ合わせる。
「で、最後に水溶き片栗粉でとろみをつけて、仕上げにごま油と青ネギの刻んだのを散らせば完成だ。よし、レシピの再現は完璧なはずだ」
店長が作っていた、記憶にあるのと変わらない出来の麻婆豆腐に満足して火を止める。
「味はどうかな?」
小皿に少しだけ取って食べてみる。
「お、ちょっと辛めだけど、なかなかうまく出来たな。豆板醤はもう少し控えめでもよかったかも」
実はあまり辛いのは得意じゃないので、俺的にはもう少し辛さ控えめでもいい。でもまあこれも悪くは無かろう。
深めの大皿に、出来上がった麻婆豆腐をまとめて入れてサクラに預けようとしたところで、見ていた三人から悲鳴が上がる。
「ええ、ちょっと待て! 香りだけで食わさないつもりか!」
「それは酷ってもんだぞ」
「苛めだ苛めだ!」
何故だか、全員の前にはカトラリーが取り出されている。
「今さっき食ったところだろうが。もうちょっと待て。もう一品作りたいから」
外はまだ明るいので、夕食には早いって。
笑いながらそう言うと、三人揃って机に突っ伏して泣くふりをしている。子供か!
「仕方ないなあ、少しだけだぞ。これは、思ったよりもちょっと辛めになったから、ご飯に乗せようと思ってさ」
笑って、普通サイズのお椀に軽くご飯をよそって、その上に作ったばかりの麻婆豆腐をたっぷりとかけてやる。
普通の一人前サイズだから、彼らには味見程度の量だろう。
「はいどうぞ。麻婆丼だよ」
渡してやると、分かりやすく復活した三人がそれぞれ受け取り、手を合わせてから嬉しそうに食べ始めた。
俺が食べる時にいつもやってたら、いつの間にか彼らも食べる前に手を合わせるようになった。良い事だな。よしよし。
手を叩かれて見ると、机の上にいたシャムエル様が空の小鉢を手にステップを踏んでいたよ。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ!じゃじゃん!」
最後は片足でくるっと回ってキメのポーズだ。
「はいはい、シャムエル様も食べたいのか。ちょっと待てくれよな」
笑って差し出された小鉢を受け取り、ここにもご飯をよそってから麻婆豆腐をかけてやる。
「はいどうぞ、麻婆丼だよ。これも熱いから気を付けてな」
そう言って前に置いてやると、目を輝かせて小鉢を両手で持って、やっぱり顔から突っ込んで行った。
「無茶するなあ」
予想通りの様子に笑って、残った麻婆豆腐をサクラに預ける。と言っても、後二人前くらいしかないので、後でもう一度、今度は倍量単位で作っておこう。
「もう一品は回鍋肉だぞ」
そう呟き、サクラにまた材料を取り出してもらう。
「ええと、今度の合わせ調味料は、甜麺醤と豆板醤、醤油と酒と砂糖と蜂蜜、後は擦り下ろしたニンニク。後は片栗粉と水。なんだ、さっきと殆ど一緒じゃんか」
微妙に量は違うが、さっきとほぼ同じ調味料なのを見てちょっと笑ったね。
「ええと、豚のバラ肉、ざく切りのキャベツとピーマン、玉ねぎは細切り、白ネギは斜めに細切り、これで全部かな」
調味料を計って全部まとめて混ぜておく。
「まずは豚肉を強火で炒めて、火が通ったら野菜をまとめて入れる!」
一気に入れて、軽く炒める。
「そこへ混ぜた調味料を投入するっと」
回し掛けて、少し火を弱めて一気に炒めて火を通していく。
「とろみが出たら出来上がりっと」
これも大きな深めの皿に入れてサクラに預ける。
「さすがに手早く作ったな。さっきのこれ、美味かったよ。ご馳走様」
ハスフェルが、すっかり空になったお椀を綺麗にして返してくれる。ギイとオンハルトの爺さんも、同じように綺麗になったお皿を返してくれた。
「こっちを夕食にする予定だよ。追加を作るから、もうちょい待っててくれよな」
レシピの確認は出来たので、ここからは冷えた白ビールをお供に、麻婆豆腐と回鍋肉を大量に作った。
ついでに、回鍋肉の味付けで、豚肉を厚揚げに変えたのと、麻婆豆腐の豚ミンチを鶏ミンチに変えたのも作っておいた。これは、俺がよく作ってた自炊メニューだ。
それぞれ数回分の量が出来たところで、夕食用の回鍋肉を手早く作り。ご飯と一緒に出してやる。
付け合わせは刻んだ大根とニンジンの浅漬けと、おからで作った卯の花も出しておく。それと、わかめと豆腐の味噌汁だ。
本当なら中華風のスープとかがいいんだろうけど、鶏がらスープを作る余裕は無かったね。
「ってか、鶏がらスープって、どうやって作るんだ? 鶏ガラとネギを入れるのは予想出来るけど、臭み消しなら生姜とかも入れるのかな?」
自分で作った記憶が無いので、それ以上の予想がつかない。困って思わず考える。
「あ、それこそマギラスさんに聞いてみればいいんだよな。よし、西アポンへ行ったらついでにその辺りも詳しく聞いてみよう」
かなり料理も手慣れてきたから、今ならちょっとくらい手の込んだ料理も出来そうだ。
ここはせっかく知り合いに料理人がいるんだから、専門家に教えを乞うべきだよな。
そんな事を考えながら、俺も自分の分を用意して、いつものように祭壇に捧げてから席に座った。