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もふもふ総攻撃再び!

 買い込んだ大量の酒瓶を全部収納したハスフェル達と一緒に、俺は店の裏にある駐車場へ向かう。

 当然のように目を輝かせたガーナさんと、何故だかハスフェル達の担当をしたベイカーさんも一緒について来たよ。

「おお、これはまた見事な従魔が増えていますね!」

「うわあ、これは凄い……」

 ガーナさんの叫びに、ベイカーさんも一緒になって目を見開いたきり揃って固まっている。

 そっか、ハスフェルとギイ、それからオンハルトの爺さんの従魔達を見るのは初めてだな。

「この子はシリウス。彼に譲った従魔で、グレイハウンドの亜種だよ」

 目を輝かせる二人に、俺は順番に従魔達を紹介していった。

 二人とも紹介を聞いている間中、ずっと両手を胸元で握りしめて必死になって我慢しているのが丸分かりだ。



「あの、触らせて頂いても、よろっ……よろしいでしょうか!」



 ガーナさん、見たよ。今、よだれを拭いましたね。

 小さく吹き出した俺は、二人の目の前にいたニニの首輪を軽く押さえてやる。

「良いですよ、どうぞ。目の周りや耳を引っ張ったりしないでくださいね。毛を引っ張るのも無しですよ」

 笑ってそう言ってやると、揃って壊れたおもちゃみたいに何度も頷いていた。

「では、失礼します!」

 ガーナさんが、ニニの首元にゆっくりと手を差し出し、どんどん埋れていく自分の手を目を輝かせて見ていた。

「な、な、な! 凄いだろう!」

 目玉が本当にこぼれ落ちるんじゃないかと心配になるくらいに、見開かれてまん丸な目になったベイカーさんを振り返る。

「うわあ、これは凄い、凄い」

 ベイカーさん、さっきからそれしか言ってないよ。

 見ていたハスフェルとギイも小さく吹き出し、それぞれの従魔の横へ行った。

「ほらどうぞ。触っても良いぞ」

 笑った三人の声が揃う。

 どうやら、彼らにも二人のマナーの良さは理解してもらえたみたいだ。



 ガーナさんとベイカーさんは、何度も奇声を上げながら、マックスを撫で、シリウスを撫で、そしてエラフィにも触って大感激していた。

 何でも、この辺りでは雄のエルクの亜種は創造主様の御使いと呼ばれているらしく、姿を見ただけでも良い事があると言われているらしい。

 全員揃って街を歩いていると、嬉々とした目で見られていたのは、そういう意味だったみたいだ。

 オンハルトの爺さんは、さっきからずっと笑っている。どうやら彼はこの話を知っていたみたいだ。

「まあ、創造主様じゃないけど、彼も神様には違いないもんな」

 小さな声で右肩に座っているシャムエル様にそう言ってやると、嬉しそうに目を細めてうんうんと何度も頷いていた。

 最後に、二人してニニに抱きつき、巨大化したラパンとコニー、そしてハスフェルとギイのレッドクロージャガーが二匹加わって、さらにパワーアップした猫族軍団の襲撃を受けて、二人揃って歓喜の悲鳴を上げてもふもふの海に沈んで行ったのだった。



「最高の時間をありがとうございました〜!」

 もふもふ達に揉みくちゃにされて、何処で誰に何されたんだよ! って言われて、速攻通報されそうなレベルの姿だったが、もうこれ以上ないくらいに満面の笑みで起き上がった二人に揃ってそう叫ばれ、俺達はもう笑いを堪えられずに、三人揃って地面に座り込んで笑い崩れていた。

 そして何故だか、こちらも揃ってドヤ顔のマックスを始めとする従魔達を見て、俺達はまた笑い崩れたのだった。



「ありがとうございました。またこの街にお越しの際には、どうぞお立ち寄りください!」

 満面の笑みの二人に見送られて、俺達は揃って宿泊所へ戻る事にした。

「ああ、なかなかに笑わせてもらったな」

「全くだ。あれだけ楽しそうに喜ばれたら、従魔達も得意になるのも分かる気がするな」

 ハスフェルとギイの言葉に、オンハルトの爺さんはずっと笑っている。

「それにしても、彼らは商品を触る時もとても丁寧だったし、従魔達に触る時には、必ず俺達に許可を求めていた。若いのに、なかなか礼儀正しい人達だったな」

 オンハルトの爺さんがそう言って振り返り、店に戻ろうとしていた二人の後ろ姿に何か小さな声で呟いて指を鳴らした。

 それを見たハスフェルとギイも、同じように何か小さな声で呟いて揃って指を鳴らした。

 シャムエル様がそれを見て嬉しそうに頷いていたので、俺は何となく察した。

 多分彼らに何らかの祝福を授けてくれたんだろう。

 俺には何にも出来ないから、彼らが販売ノルマで苦労しませんように、と、こっそりシャムエル様にお祈りしておいた。

 営業や販売員の苦労は身に染みて知ってるからね。あはは。



 その後は、のんびり歩いて広場へ戻り。昼飯をそれぞれ好きに買って食べた。

 俺はまたあのキャベツサンドを買い、シャムエル様に真ん中部分を齧らせてやりつつ、マイカップに入れてもらったコーヒーと一緒に、のんびりとキャベツサンドを楽しんだのだった。

 それから、追加でまた幾つか色んな物を屋台で買い込んでから宿泊所へ戻った。



 何故だか全員が俺の部屋に集まってくる。



 防具を外して身軽になった俺は、とりあえず全員に茶を入れてやった。

「さて、それじゃ後少し料理をするか」

 お茶を飲み干した俺の言葉に、三人が顔をあげる。

「何を作るんだ?」

「ええと、せっかく豆板醤と甜麺醤があるんだから、麻婆豆腐を作ってみようかと思って」

 三人が揃って目を瞬く。

「初めて聞くな。それはどんな料理だ?」

 興味津々のハスフェルの言葉に、手を洗ってきた俺は、サクラに綺麗にしてもらってから順番に調理道具や材料を取り出していった。

「三人共、カレーで辛いのも大丈夫だって分かったからさ。これもちょっと辛い豆腐料理だよ。まあ、一度作ってみるから駄目なら言ってくれよな」

 豆腐を取り出して見せると、三人揃って嬉しそうに頷き合っていたよ。



「ええと、作り方は覚えてると思うんだけど……何からするんだっけ?」

 期待に満ち満ちた目にプレッシャーを感じつつ、俺は頭の中で、定食屋の店長が作っていたレシピを必死で思い出していたのだった。

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