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今日もガッツリ仕込むぞ!

「はあ、美味しかった」

 冷えた麦茶を一息に飲み干した俺は、汚れた食器をスライム達に綺麗にしてもらいながら、この後に何を作ろうか考える。

「仕込んである鶏ハムを茹でて、それからタンドリーチキンを仕上げてサクラに預ける。後はおからでもう少しサラダを作っとくか。あれがあると、ちょっとした付け合わせに良いもんな」

 揚げ物系にフライドポテトを付けると、俺的にはちょっとカロリーオーバーなんだよな。副菜は軽めのメニューが良い。

「わかめもあるんだから、酢の物とかも作っとくか。あ、ポークピカタとか生姜焼きとかも良いな」

 幾つか思い付いたので、時間の許す限り作っておく事にした。



「じゃ、まずは仕込んでいた鶏ハムを茹でて、タンドリーチキンを焼くか」

 冷蔵庫を開けてタンドリーチキンと鶏ハムの入ったバットをそれぞれ取り出し蓋を開ける。

 仕込んでいた鶏ハムを軽く流水で洗う。これも、待ち構えていたレインボースライム達とクロッシェがやってくれた。

「で、この紙でしっかり包んで茹でれば出来上がりっと」

 パリパリの料理用の紙で、洗った鶏肉をしっかりと丸めて包んでいく。

 大鍋にお湯を沸かし、完全に沸騰させてから鶏肉を放り込んで火を消して蓋をしておく。このまま置いておき冷めれば完成だ。仕込みさえしっかりやっておけば、後は茹でるだけだから楽なんだよな。

「それじゃあ、タンドリーチキンも焼いておくか」

 鍋を下ろしたコンロに大きなフライパンを取り出して、オリーブオイルをたっぷりめに入れて火にかける。

 室温に戻ったタンドリーチキンを皮のある側からゆっくりとフライパンに入れて、中火で焼いていく。

 皮が焼けてきたらひっくり返して弱火にする。

 今回はコンロを二つ並べてフライパンごと移動させて焼く流れ作業だ。

 最初のコンロにセットしたフライパンに、新しい肉をどんどん入れて焼いていく。

 仕込んだタンドリーチキンが全部焼き終わる頃、足音がしてハスフェル達が戻って来たみたいだ。廊下で誰かと話す声がしている。

「クロッシェ、戻って!」

 慌ててそう言い、アクアと一体化したのを確認してから扉の近くにいたアルファに、鍵を開けてもらった。




「おかえり。早かったんだな」

 タンドリーチキンをひっくり返しながら顔を上げてそう言うと、どうやら彼らが喋っていただけだったようで、今回は、廊下には誰もいなかったみたいだ。

 扉が閉まって、入って来た三人が揃ってソファーに座る。

 一緒に入って来たベリーとフランマは部屋の端に座ってのんびり寛いでる。

 サクラに頼んで、彼ら用の果物の入った箱を出してもらった。

 草食チームが嬉しそうに走って行き、一緒に食べ始めた。

「キャベツの端っこと芯を山ほど食ってたのは、何処の誰だったっけ?」

 笑った俺の言葉にラパンとコニー、それからモモンガのアヴィが揃って振り返った。

「大丈夫です、ご主人。これはデザートなんです」

 俺がよく、果物をデザートだって言ってたのを聞いていたらしい。

 大真面目なその返事に俺だけじゃなく、従魔達の声が聞こえるシャムエル様まで一緒になって吹き出したね。




「おお、何だか良い香りがしてるな。これは何を作ってるんだ?」

 ギイが嬉しそうに俺の手元を覗き込んでくる。

「タンドリーチキンって言って、これもカレー粉を使った料理だよ」

「へえ、昨日食ったのとは全然違うぞ。香りは確かにスパイシーだけど、何処にカレーが入ってるんだ?」

 ハスフェルまで興味津々で覗き込んでくる。

「これは保存用のつもりだったけど、それなら夕食にするか? カレー味ばっかりで飽きない?」

「問題無い。仮に全く同じ料理を続けて出されても、ケンの作る料理はどれも美味いから大丈夫だ」

 何故だか揃ってサムズアップされてしまい、笑った俺も返しておいたよ。

「弁当も美味かったよ。ご馳走さん。あのキャベツが入った変わったサンドイッチ、正直始めはどうかと思ったんだけど、食べてみて驚いたよ。美味かったよ」

「確かに美味かった。野菜ばっかりなのに美味しいって、実を言うと食ってみて驚いたぞ」

 三人揃って大真面目な顔で頷いているのを見て、俺はため息を吐いた。

「だからお前らは、もうちょい野菜も食えって」

 俺の叫びに、三人は揃って誤魔化すように笑っていた。




 最後のタンドリーチキンが焼けたので、もう夕食にする事にした。

「ええと、ご飯とパン。どっちが良い?」

 ハスフェルとギイはパンで、オンハルトの爺さんはご飯希望。じゃあ俺もご飯だな。

 取り出したお皿に、レタスとおからサラダを盛り付け、フライドポテトも添えておく。トマトの赤は彩りだな。

 焼き立てタンドリーチキンを、ちょっと考えて三人には二枚ずつ、俺は一枚。それぞれのお皿に盛り付ければ完成だ。

 パンは、ナンみたいなのがあったので、それと定番の丸パンを出してやる。

 パン焼き用のオーブンをセットしていると、ノックの音がして廊下で声がしているのが聞こえた。ちょっと早いがいつものご飯屋さんが、配達に来てくれたみたいだ。

「ああ、俺が出るよ」

 立ち上がったハスフェルが扉を開けて受け取ってくれた。でもって、またお金を払ってくれている。

「あれ? これは何を買ったんだ?」

 声に振り返ると、大きな味噌樽が台車に乗せられているのが見えて、俺は慌てた。

「ああ、それは味噌なんだよ。ごめん、それも半金がまだなんだ」

「ああ、了解だ」

 台帳を確認して、これのお金も払ってくれた。

「駄目だよ。払うって」

 急いでお金の入った巾着を取り出したが、笑ったハスフェルは結局受け取ってくれなかった。

「良いって、どうせ俺も食うんだから」

 大きな味噌樽を軽々と台車から下ろして、帰っていくスタッフさんを見送ってから扉を閉めた。

「届いた分は、サクラに預けておいてくれるか」

 二人分のご飯をよそりながらそう言うと、サクラが跳ね飛んで行って順番にまるっと飲み込んでくれた。



「お待たせ。それじゃあどうぞ」

 わかめと豆腐の味噌汁も温めてお椀に入れれば完成だ。

 自分の分は、いつものように祭壇にお供えして、収めの手が一通り撫でて消えるのを見送った。

 お皿を出して目を輝かせているシャムエル様には、大きく一切れ切ってやり、他も一通り盛り合わせてやってから自分の分を食べ始めた。

「へえ、またちょっと変わった味だね。でも美味しい!」

「うん、確かに美味いな。これ、パンに挟んで食っても良いぞ」

 ギイの言葉に、ハスフェルも嬉しそうに手にしていたナンでタンドリーチキンを包んで食べている。

「どれも気に入ったみたいだな。よしよし、じゃあ明日はちょっと変わったのを色々作って仕込みは終了かな」

 炊きたてご飯の上に、大きく切ったタンドリーチキンを乗せて、俺も大きな口を開けてガッツリ食べたよ。



 うん、何であれ、食べ物が美味しいのはやっぱり大事だよな。

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