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砂糖と醤油とみりんとお酒!

「ええと、それじゃあまずは鶏ハムをたっぷり仕込んで、それから唐揚げだな。だけどその前にっと」

 サクラから、白ビールを一本出してもらって、いつものグラスに注ぐ。

「料理をしながら自堕落に、昼間っから冷えたビールを飲む。ううん、良い感じだ」

 そう呟いて、嬉しそうにショットグラスを差し出すシャムエル様にも、ちょっとだけ白ビールを入れてやる。

「かんぱ〜い」

 笑ってグラスを上げて乾杯して、まずは鶏ハムの仕込みから始める。

 今回も、ハイランドチキンとグラスランドチキンの胸肉を両方使う。

 サクラとアクアに頼んで適当な大きさに切ってもらい、まずは砂糖で軽く揉んでやる。こうすれば、柔らかく仕上がるんだよな。

 すると、俺のする事を見ていたレインボースライム達とクロッシェがやりたいと言い出したので、手分けして下ごしらえはやってもらう事にした。

 砂糖を揉み込んでから、配合調味料に塩を追加してこれもしっかり揉み込んでもらう。

 大きめのバットに、仕込んだ肉を並べてもらい、以前、ハンプールのセレブ買いの時に手に入れた、蝋引きの薄い紙を上から被せる。製菓用のパラフィン紙みたいなやつだ。直火はダメらしいけど、肉を包んでお湯に入れたり、お菓子を焼く時の金型の中に敷いたりは出来るらしいから、いわゆるクッキングシートだね。こんなものまで作れるんだから、バイゼンのドワーフ達の技術、凄え。

 これも、一晩置いておくので、このままさっきのタンドリーチキンの上に乗せて、冷蔵庫の蓋を閉める。



「それじゃあ唐揚げに突入するか。ハイランドチキンとグラスランドチキンのもも肉を出してくれるか」

 スライム達が、めっちゃお手伝いモードになっているので、このまま唐揚げも手伝ってもらう事にした。

 一口サイズに切ってもらったもも肉を、大きなボウルを複数用意して、まずはそれぞれのボウルに調味料を入れて混ぜて行く。

 醤油とすり下ろした生姜、すり下ろした玉ねぎ少々、これはニンニクが見つからないのでそれの代わりだ。後は配合調味料と黒胡椒。

 これをしっかり混ぜてから、肉をぶち込んで味が馴染むようにスライム達にしっかり混ぜてもらう。

 ボウルを複数用意したのはこういう事だよ。全員の仕事を作るのは、案外大変なんだよな。

 大喜びで混ぜているスライム達を見ながら、揚げる準備をしておく。今回は、買ったばかりの太白胡麻油を使ってみる事にした。

 大きめのフライパンに、太白胡麻油をたっぷりと入れて中火にかける。

 油が温まる間に別の新しいボウルを二つ用意して、片栗粉と小麦粉をそれぞれたっぷりと入れておく。味の付いた胸肉を、まずは片栗粉をまぶしていく。それから小麦粉をまぶす。

 下味をつけた後に二種類の粉を順番にまぶすやり方は、定食屋で作っていたレシピだ。今なら材料がほぼ揃っているので、やっぱりこれが一番美味しいレシピだからこれで作ってみる事にした。

「こんな感じな。軽く粉を叩いたら、ここに並べてください。揚げるのは俺がやるからな」

 一つだけ取って見本でやって見せると、揃って元気な返事をした後、二手に分かれて張り切って次々に粉をまぶし始めた。



 油も温まってきたみたいなので、まずはハイランドチキンの胸肉から揚げていく。

 粉担当の子達は、楽しそうに肉を次々と流れ作業で手渡して、それぞれのボウルに入った粉をまぶしていく。出来上がったそれを、バットに並べてくれる子もいる。

 しかも、用意したバットを俺に渡す時には、こっちの揚げ具合を見ながら渡してくれる万能ぶり。

 相変わらず、うちの子達は優秀だよ。

 小麦粉担当のクロッシェも、なかなか上手に粉をまぶしてくれている。皆と一緒に作業が出来て、なんだかとっても楽しそうだ。

 出来上がった唐揚げは、油を切ったらお皿に山盛りにしてサクラにどんどん飲み込んでもらう。

「やっぱり味見もしないとな」

 両方の唐揚げをいくつかお皿に取り、ナイフで切り分けて、お皿を持ってさっきからずっとタップダンスを踏んでいるシャムエル様のお皿にも入れてやる。

「熱いから気を付けてな」

 切り分けた残りを口に放り込んで、ビールをグイッと一口。

 まだ外は明るいのに、揚げたての唐揚げと冷えたビール。いやあ、最高だね。




 大量の唐揚げが揚げ終わる頃には、使っていたボウルやバットは、全部スライム達が綺麗にしてくれていたので、残りの油を片付けたらもう次の作業に入れる。スライム達最高!



「じゃあ、あのがんもどきを使ってシンプルがんもどきの煮物を作ってみるか。サクラ、がんもどきAを出してくれるか」

「はあい、これだね」

 空いた鍋に入れたあの老夫婦の店のがんもどきだ。

「まずは油抜きをしないとな」

 大きめの片手鍋にたっぷりの水を入れて、まずはお湯を沸かす。

 それから、がんもどきを適当に幾つか取り出して、業務スーパーで買った金属製のザルに、がんもどきを並べておく。

 机の上では、スライム達が、次は何をするのだとばかりに、並んで待ち構えている。

「これはお湯を使うから危ないぞ。ちょっと離れて待っててくれるか」

 笑ってそう言い、お湯が沸いたら、熱湯をがんもどきに回し掛けて余分な油を抜いておく。

 後は、スライム達にがんもどきの水気を取って貰えば準備完了だ。

 バットに受けた油が落ちたお湯も、スライム達が全部綺麗に片付けてくれた。



「ええと、一番出汁に、砂糖と醤油とみりんとお酒、っと」

 だし汁はたっぷり作って火に掛ける。

 沸いてきたら、さっきの油切りしたがんもどきを入れて、落とし蓋をして約十分程煮たら完成だ。

 簡単、簡単。



「あ、そろそろ日が暮れるかな?」

 窓の外が赤くなってきたのに気づき、ランタンをつけようと思ったら、ベリーが用意してくれているところだった。

「おお、暗くなる前にランタンつけてくれたんだな。ありがとうな」

「いえ、構いませんよそれにしても、あまりの見事な手際の良さに、さっきから見惚れていましたよ」

 振り返ったベリーにからかうように言われて、俺は思わず吹き出した。

「あはは、それほどでも無いって。だけどまあ、これだけ作れば慣れもするか」

「スライム達も、どんどんいろんな作業を覚えて賢くなっていますね。スライムに、こんな事が出来るなんて驚きですよ」

 おお、賢者の精霊に驚かれたぞ。

「今までって、スライムに料理を手伝わせるテイマーはいなかったのかな?」

 もう一度片手鍋にお湯を沸かしながらそう言うと、ベリーは笑って首を振った。

「そもそもテイマーに限らず、冒険者でそこまで料理をされる方は少ないと思いますね。それこそ将来は店を持つつもりで、資金集めの為に冒険者をしている人ぐらいでしょうかね?」

 そうか、ジェムを頑張って大量に集めれば、確かに資金は早く溜まりそうだ。

「まあ、まだまだテイマーは少ないみたいだから、それは将来に期待だな」

 笑って手を伸ばして、スライム達を順番に撫でてやりながら、厚揚げAも油抜きをしておく。

「サクラ、にんじんとゴボウもどき、レンコンもどき、さやえんどうもどきも出してくれるか」

 サクラに材料を出してもらい、両手鍋に一番出汁と砂糖と醤油とみりんと酒を測って入れる。うん、本当に煮物ってこれで全部出来るよな。

 ハイランドチキンのもも肉を一塊り切り出し、一口サイズに切って、醤油と酒で下味をつけておく。

「ええと、これの皮を剥いて欲しいんだけど、こんな感じで良いんだよ」

 包丁の背中で擦るようにして削って見せる。

「あ、それなら出来そう! やってみたい!」

 アルファがそう言って、触手を出してゴボウもどきを飲み込んだ。

「ええと、こうやって……出来た〜!」

 しばらくモゴモゴ動いていたが、吐き出したゴボウもどきは綺麗に皮を剥いてある。

「おお、完璧!」

 俺がそう言うと、アルファは他の子達に順番にくっ付いて今の技を教え始めた。

 あっという間に、全員が皮剥きを覚えました。うん、今レベルが上がった効果音が聞こえた気がしたぞ。

「凄いな、うちの子達は皆優秀だなあ」

 得意気に伸び上がるスライム達を、俺は順番に撫でて揉みくちゃにしてやったよ。

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― 新着の感想 ―
スライム達、経験を共有できるとか優秀すぎる(*´▽`*)
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