追加の買い出しと冷蔵庫のスイッチオン!
「よしよし。これで冷えたビールをいつでも飲めるようになったぞ」
嬉しくてそう呟きながら、俺は冷蔵庫を買ったユーロン商会を後にした。
そのあと、業務スーパーの店のガーナさんに教えてもらった、お勧めのパン屋にも立ち寄った。
何でもここは業者用のパンも作っているらしく、パンの種類はそれほど多くは無いが、食べやすく美味しいんだって。
って事で、ここでもお願いして大量購入したよ。パンはハスフェル達三人の主食だもんな。もちろん俺も食うし。
ここでは、今ある分をすぐに貰って、食パンやロールパン、それから堅パンと呼ばれるフランスパンなんかは、数をお願いして、明日と明後日の二日に分けて午後から宿泊所に焼き立てを配達してもらう事になった。
おお、焼きたてのフランスパンとか最高じゃんか!
ここでも前金で半額分を払って、残りは配達時に渡すって事で話がついた。別に全額先払いでも構わないんだけどね。
大量の注文書の控えをもらって、満面の笑みの店員さんに見送られてパン屋を後にした。
「ええと、これで取り敢えず買いたい物は全部かな?」
何を買ったか指を折って数えながら歩き、宿泊所へ戻るまでの間に見かけた酒屋に入って、瓶に入った白ビールと黒ビールをまとめ買いした。
これは帰ったら、早速冷蔵庫で冷やしてみよう。そうしよう。
他にも、肉屋の前を通ったらロースハムやベーコンの塊が売っていたので、これも大量購入。その店で教えてもらい、この店一番の人気なのだと言う腸詰、つまりソーセージ各種も当然大量購入したよ。
お願いしたハムやベーコン、ソーセージの入った箱をガンガン鞄に収納していく。
ここでもやっぱり、店員さん達がそれを見て大喜びしていた。
どうやら普通の収納の能力者は、一瞬でどんな大きさの物でも出したり入れたりするらしく、俺のようにいちいち鞄に入れるって言う動きをする方が珍しいんだってさ。
確かに、ハスフェル達は何でも一瞬で出し入れしていたな。
「ちょっとぐらいなら一瞬で収納できるんですけどねえ。こんな風に沢山出し入れする時は、何故だかこうしないと、俺は上手く出来ないんですよ」
誤魔化すように笑ってそう言い、また残りをせっせと鞄に詰め込んでいった。
それから、商人ギルドのギルドマスターのエルケントさんから聞いたお米屋さんにも寄った。
炊いたご飯は、あの美味しいご飯屋さんから大量に届けてもらう予定だけど、やっぱり本場の米は買っておかないとな。
ここでも店員さんに話を聞いて、一番美味しいのだと言うシロヒカリって銘柄と、アキアカネって銘柄の二種類を小分けしてもらって大量購入。もちろん全部、すぐに炊けるように精米をお願いした。
アキアカネってトンボの名前じゃん、って脳内で突っ込んだのは内緒にしておく。ここは異世界だ。
大量にお願いしたので、精米に少し時間がかかると言われたので、これも前金を払って宿泊所に配達をお願いした。
で、相談の結果、小分けして袋詰めしたものを配達してもらう事になった。
だって、そのまま知らずに頼んだら、30キロの袋で来るって言われたんだからさ。
さすがに、毎回それを出し入れするのは大変だろう。
ちなみに小分けって言っても5ブルク、つまり5キロ入りの袋だけどね。
そろそろ昼になる時間なので、近くにあった別の広場に出ていた屋台で、串焼きとホットドッグを買って食べた。
帰りに、珈琲屋の前を通りかかったので、お願いしてアイスコーヒー用の深炒りの豆と、ホット用のお勧めのブレンドの豆をこれも大量に購入した。
しかも、その隣の店がお茶の専門店で、ここで俺は念願の麦茶を発見した。
「よし、これで普段飲めるお茶の種類が増えた!」
思わず、小さくガッツポーズをしてそう呟く。
当然、お願いしてこれも大量購入。
店員さんに話を聞くと、麦茶はこの辺りでは普通に流通しているんだが、何故か他の地域では緑茶や紅茶ばかりで、麦茶はあまり飲まれていないらしい。
「そうか、じゃあ麦茶が欲しければ、カデリーヘ来ればいいんだな」
納得して、大量に買い込んだ麦茶が入った袋をせっせと鞄に押し込んだ。
それから、麦茶を炊く時に使えと言って、麻の小袋を分けてくれた。
当然だが麦茶って麦を丸ごと炒ったもので、そのまま炊くと細かなカスが結構出るんだって。なので、麦をこの袋にたっぷり入れて、ヤカンで炊くと良いらしい。
成る程ね。即席の麦茶パックな訳だ。
有り難く頂戴して、店を後に宿泊所へ戻った。
宿泊所へ戻る前にギルドに立ち寄って、アンディさんからジェムの買い取り金の振り込み明細を貰う。それから、こちらも大量購入してくれた、商人ギルドの買い取り金の振り込み明細もまとめて一緒に貰った。
うん、本気で何か大きな買い物をして減らす手段を考えないと、口座の金額がとんでもない事になって来たよ。
まあ、ギルドの口座に入れておけば、少なくともギルドが運用してくれるん……だよな?
若干不安になりつつも、バイゼンでハスフェル達が言ってたように、何か買っても良いかと考えながら宿泊所に戻った。
「さて、何からするかな……やっぱりまずはこれだよな」
にんまりと笑って、買ったばかりの冷蔵庫を出してもらう。
「おお、持って帰って来たら良いじゃないか!」
そう呟いて満足して頷き、教えてもらった通りに、まずはブラウングラスホッパーのジェムを指定の場所に入れる。まるでこのジェム専用みたいに、大きさはぴったりだよ。
それから蓋を開けて、金属製の水入れを取り出し、それを水場へ持って行き、上の水槽からたっぷりと水を入れる。
「ええと、ロックアイス凍れ!」
水入れを右手に持ってそう言うと、一瞬でカチンカチンの氷になった。
それを蓋の内側部分にセットする。
「で、これがスイッチっと」
教えてもらった箇所にある小さなボタンを押すと、何か、小さいが機械っぽい駆動音がして驚いた。
「これ、どう言う仕組みになってるんだろうな。工場なんて無いこの世界で、そもそも氷で冷やす以外の冷蔵庫なんて、どうやって作るんだ?」
改めて考えてみたら、どうにも不思議だ。
ジェムの駆動機械ってどう言う仕組みなんだ?
ドワーフってのは、俺が知ってるような現代の工場で作っているみたいな、精密な機械を作れるんだろうか?
「ううん、よく分からないなあ」
まあ、これはどれだけ考えても答えが出るわけじゃないので、諦めて、疑問はまとめて明後日の方向にぶん投げておく事にした。
冷えるまでしばらくかかると聞いていたので、いったん蓋を閉めて置いておく。
ちょっと考えて、買って来た瓶ビールを適当に並べて入れておいた。
だって、やっぱりちゃんと冷えるかどうか確認しておかないといけないだろう? って事で、冷えるまでの間に料理をする事にして、まずは手を洗いに水場へ向かった。