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夕食と明日からの予定

 温めたワカメとジャガイモの入ったお味噌汁の鍋に、俺は先の店で買った美味しい木綿豆腐を一丁細かく手の上で切って入れた。

 大きなスプーンでゆっくりとかき混ぜる。

「んん、良い香り」

 味噌汁のお出汁の香りを楽しんでいると、ご飯屋さんが木箱を運び出す為に廊下の端に寄っていたハスフェル達が、マックス達と一緒に部屋に入ってきた。



「ただいま帰りました。ご主人!」

 マックスが、一番に俺の側に来て背中に大きな頭を擦り付けて来る。見ると、尻尾が千切れそうなくらいにブンブンと振り回されて床に当たって音を立てている。

「おかえり、お腹いっぱいになったか?」

 振り返って手を伸ばして、むくむくの首を指を立ててガシガシと掻いてやる。

「ただいま〜」

 マックスと戯れていると、ニニが当然のように俺の脇の下に頭を突っ込んで間に入って来る。

「おう、おかえり」

 そう言って、ニニのフカフカな首元にも抱き付いてもふもふの毛を楽しんだ。それから、同じく足元にまとわりついて来ていた、タロンとソレイユとフォールも順番に撫でてやる。

「今日はどこまでいって来たんだ?」

「いや、遠出はしていないよ。ギルドから聞いて、郊外の畑に大量発生寸前だったパープルバルーンラットの群れの巣を見つけて駆逐して来た。これは猫族軍団が大活躍してくれたぞ」

 バルーンラットって事は、風船みたいなネズミ……これは絶対ニニ達が好きなやつだ。

 そう思って思わずニニを振り返る。

「まあまあ楽しめたわね。だけど、やっつけてもやっつけてもいくらでも出て来るから、もう途中で飽きちゃって大変だったのよ」

「そ、そりゃあご苦労さん」

 ドン引きしながらそう言い、ファルコ達も順番に撫でてやった。



「それじゃあ、もう食うか?」

 ハスフェル達は、椅子に座って酒なんか取り出している。

 笑った俺は、さっき作った豆腐ハンバーグ各種を取り出す。

「サラダは今日作った分が沢山ある。フライドポテトはまだあったな」

 豆腐ハンバーグ各種は、それぞれのお皿を机の真ん中に置き、大きなフォークとスプーンを一緒に並べておいた。こうしておけば、好きなのを取れるだろう。

 サラダとフライドポテト、それからトマトを並べたお皿を二人に渡し、大きめの丸パンを取り出す。

「ええと、ご飯とパンどっちが良い?スープは味噌汁だぞ」

 三人共パンで良いらしいので、丸パンと食パンを渡しておく。

 それから自分の分のご飯をよそって、全員分の味噌汁もよそってから席についた。

 俺は、自分の分のお皿に和風ソースの豆腐ハンバーグを取り、サクラに取り出してもらった綺麗な布を、小さい方の机に被せて、そこに並べた。ご飯と味噌汁も並べ、スプーンとフォークと一緒にお箸も並べる。

 緑茶の入ったマグカップと、黙ってハスフェルが渡してくれた赤ワインの入ったグラスも並べる。

 別のお皿に、今日作った豆腐ハンバーグを一通り並べてそれも一緒に置いた。

 それから、目を閉じて手を合わせてた。



 これは、シルヴァ達の分だ。

 豆腐ハンバーグは初めてだからきっと喜んでもらえるだろう。

 普通のハンバーグよりヘルシーなんだぞ。



 いつもの半透明な手が俺の額の辺りを撫で、それぞれのお皿を撫でるのを黙って見つめて、手が完全に消えてからお皿を自分の前に戻した。各種ハンバーグは、順番に俺が食べる分なので、これはサクラに預けておく。

 改めて手を合わせてから、俺も豆腐ハンバーグを食べ始めた。



「んん、我ながら上出来だな。ふわふわに焼き上がってる」

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 お皿の横では、シャムエル様がいつもの味見ダンスを踊っている。

 ちなみに今日の味見ダンスは、全体に何度も飛び跳ねていて、なんとなくヒップホップ風だ。

 最後に大きく足を開いてお皿を突き出したポーズで止まる。ふかふか尻尾は足の横でクルッと丸まってバランスを取っています。

「はい、今日もお見事でした。これで良いか?」

 笑って俺のお皿の豆腐ハンバーグを見せると、目を輝かせて頷くので、大きく切って取り分けてやる。野菜とフライドポテトも少しずつ取り、味噌汁も盃にスプーンで豆腐とワカメをすくって入れてやる。ご飯は、豆腐ハンバーグの横に並べた。

「はいどうぞ。今日のメニューは、豆腐ハンバーグ和風おろしソースだよ」

「わあい。作ってるのを見てる時から、食べたくて仕方がなかったんだ。いっただっきま〜す!」

 相変わらず顔面からダイブだ。

「うん、いつものハンバーグとまた違うね。これも美味しい!」

 ソースだらけの顔で嬉しそうに目を細めてそう言い、またしても顔面ダイブ。

「もうちょっと上手に食えよ」

 笑ってこぼれそうになった味噌汁の入った盃を戻してやった

「美味しかったです!」

 あっと言う間に完食したシャムエル様は、綺麗になった盃を差し出した。

「その赤ワインも欲しいです!」

「はいはい、どうぞ」

 笑って盃に赤ワインを入れてやる。

 嬉しそうに赤ワインを飲むシャムエル様を眺めながら、俺はゆっくりと久し振りの豆腐ハンバーグを楽しんだ。



「ご馳走様。ちょっと変わってると思ったら、豆腐が入っていたのか」

 感心したようなハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも揃って頷いている。

「豆腐は色々作れるから良いんだよ。沢山買ったから、しばらく楽しめるな」

「楽しみにしてるよ」

 オンハルトの爺さんの言葉に、俺も笑顔で頷いた。

「麻婆豆腐って豆板醤がいるんだよな確か。さすがに……有るかなあ」

 考えたら食べたくて仕方がなくなって来た。

 よし、これも街にいる間に探してみよう。



「明日はどうするんだ? 俺は、また午前中は買い出しの予定だけど」

「さっき話してたんだが、大発生ってほどではないんだが、あちこちでちょっと小型のジェムモンスターが一気に湧いているらしい。ギルドに討伐依頼が殺到してる。一通り見ておくべきだって意見で一致したんでな。明日以降も俺達は毎日出掛けるよ」

「おお、ご苦労さん。それじゃあ弁当くらいは作ってやるよ」

 何気ない一言だったんだけど、随分と喜んでくれたので、食事の後、リクエストでBLTサンドを大量に作って渡しておいた。

「じゃあ、毎日弁当持ってハスフェル達は狩りに行く。で、俺は買い出しと料理の仕込みだな」

「一日くらいは付き合えよ。腕が鈍るぞ」

 からかうようにギイにそう言われて、苦笑いした俺は頷いた。

「一通りの買い出しと仕込みが終わったら、俺も参加させてもらうよ。確かにたまには戦っておかないと腕が鈍るよな」



 腕と言うか、実戦の勘みたいな部分は確かに鈍るような気がするので、素直に俺も参加を表明しておく。

 でも優先順位は買い出しと料理だからな。

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