表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
384/2064

大量購入万歳!

「ええと、確かこの通りを抜けた広場だって……あ。朝市発見」

 教えてもらった道を通って出た広場は朝市の活気で賑わっていた。

 新鮮な野菜、山盛りに積み上げられた果物、合間には屋台も出ていて、肉を焼いていたり何やらパンケーキのような物を焼いている店もあった。

「ううん、なかなか良いじゃないか。よし、がっつり買うぞ!」

 一通り見回した俺は、嬉しくなって密かに拳を握った。



 この街へ来た一番の目的は豆腐なんだけど、多分それは朝市の店より普通に店舗を探した方がありそうだ。なので、ここではいつものように野菜や果物、根菜類など、近隣の農家さんが持って来てくれている新鮮な土地の恵みを、手当たり次第にガンガン買い込んでいった。

 一応、まとめ買いしても良いかどうか確認してから買ってるんだけど、何処も大喜びで協力してくれるもんだから、気が付いたら朝市中の大注目を集めるお客になっていたよ。


「お兄さん、うちも見て行っとくれ」

「こっちもよろしく!」

「うちの果物は街一番だよ!」


 次々と掛かる声に苦笑いしつつ、俺はもう開き直ってがっつりと買い物を楽しんだ。

 お陰で、俺が収納の能力持ちだって事は、ほぼ市場中の人が知る事になってしまった。

 まあ、これだけ密集した市場で目の前で収納すれば、そりゃあ確かにバレるよ。

 今までの街の朝市の人達も、多分見て見ぬ振りをしてくれていたんだろう。あはは……。



 多分、ほぼすべての店で買い物をした気がする。うん、新鮮野菜と果物その他もろもろ、どれも相当な量が手に入ったぞ。

 拍手で見送られて、俺は八百屋のおっさんに教えてもらった豆腐屋を目指して、別の通りへ向かった。

 この街は、今までの街よりも、なんと言うかごちゃ混ぜ感が半端ない。

 職人通りとか、肉屋が集まる通りとか、今までのように一箇所に同じ店が集まっていないのだ。

 逆に言えば、一つの通りで一通りの買い物が出来る。

「へえ、住んでる人にすれば、こっちの方が住みやすそうだよな」

 途中に見つけた店で、鶏肉と牛肉、豚肉各種を大量買いしながら、ふと思いついた俺は肉屋のおっさんに聞いてみる事にした。

「あの、ちょっとお聞きしても良いですか?」

「ん? どうした?」

 お釣りを返してくれながら不思議そうに言われて、俺は店に並んでいる氷で冷やしている冷蔵庫を見た。

「こんなに大きく無くて良いんですが、冷蔵庫が欲しいんです。何処で売っていますか?」

「言っておくが、こいつは、買っても氷が無かったら使えねえぞ」

「あ、それは当てがあるんで大丈夫です」

 俺の言葉に、おっさんは笑って道具屋の場所を教えてくれた。



 お礼を言ってメモを受け取り、店を後にする。

「あれ? これって焼きそば屋のおっさんに教えてもらった、業務用の店の近くの場所じゃね?」

 書いてもらった住所と地図を見比べて頷く。

「へえ、同じ通りだ。じゃあこれは明日にでも行ってみるか」

 ちょっと考えて、次に見つけた牧場直営の店で、牛乳やチーズ各種を大量に買い込み、帰る際にそこで豆腐を売っているお勧めの店を教えてもらう。



 元営業マンのコミュニケーション能力舐めるなよ。ふっ。



 だけどその店は、老夫婦がやってる小さなお店らしく、その日に作った分が売り切れたら、もう店を閉めてしまうらしい。

 それと、大量に買うならこっちが良いと、もう一軒、大きな店も教えてもらった。

 多分、最初の店の方が美味しいだろうけど、急に大量購入したら常連さんに迷惑かけそうな気がする……。

 ちょっと考えて、俺はまず、その老夫婦がやってるのだと言う店に行ってみた。

 確かに小さな店で、だけど置いてある水槽は大きい。

 少し離れて見ていると、お客の殆んどが自分で鍋やお皿を持ってきていて、そこに入れてもらっている。

 いかにも、地元に密着した常連さん中心のお店って感じだ。

「ちょっと買ってみるか」

 そう呟き、とりあえず店を見に行ってみる。



「いらっしゃい。おや、初めてみる顔だね。よかったら見て行っとくれ」

 優しそうな笑顔のおばあさんが、少し曲がった腰を伸ばして俺を見てそう言ってくれた。

 その言葉だけで、常連さんに支えられている良いお店なのが分かるね。

「冒険者なんで、この街にいるのは、期間限定です」

 笑ってそう言うと、おばあさんは感心したように俺の腰の剣を見た。

「おや、そうなのかい。あんた達が身体を張ってジェムモンスターを倒してくれるおかげで、私らが暮らしていけるんだからね。無理はいけないけど、頑張っとくれ」

 そんな事言われたのは初めてだったので、本気で驚いたよ。

 何となく、冒険者って街に住む人とは違うって思われてるんだと思ってた。

「沢山、ジェムをギルドに渡しましたので、多分近いうちに流通しますよ。楽しみにしててください」

 笑ってそう言うと、おばあさんは満面の笑みになった。

「ありがたい事だね。ジェムの道具が無いと、私らは水の浄化だってろくに出来やしないんだからね」

 水槽を叩いてそう言う。

「ああ、ごめんよ。何にするね?」

 誤魔化すようにそう言うと、壁に貼られたお品書きを示してくれる、

 そこには、木綿豆腐、絹ごし豆腐、厚揚げ、薄揚げ、がんもどき、おから。とあった。

「ぜ、全部ください……」

 思わずそう言い、おばあさんを見る。

「全部? 幾つずつだい?」

「ええと、いくつ売っていただけますか?」

 俺がそう言うと、おばあさんは困ったように俺を見て、それから揃って豆腐の入った水槽を覗き込んだ。多分困ってる。

 そりゃあそうだよな、幾つ欲しいかなんて、客が言わなくてどうするんだって。

「あ、じゃあ全種類十個ずつ……でどうですか?」

「ああ、構わないよ。ええと何か入れるものは持ってるかい?無ければ……」

「ああ、有ります有ります! ここにお願いします!」

 今なら空の鍋は大量にある。まずは木綿と絹ごし豆腐をそれぞれ分けて鍋に入れてもらう。厚揚げと薄揚げ、がんもどきはお椀に、おからもまとめて鍋に山盛り入れてもらった。

 よし、おからがあれば、これで卯の花がつくれる。おからサラダも、おからハンバーグも作れるぞ。

 久々のヘルシーメニューを考えて嬉しくなった。



 お礼を言って、店を後にして、もう一軒の大型店へ向かう。

「おお、ここは確かに大きい」

 聞いた通り店構えも大きいし、店先にはいくつもの大きな水槽が並んでいて、中には大量の豆腐が並んでいる。

 ここでは大量購入しても良いかを確認して、全種類五十個ずつお願いした。

 実費で器を用意してくれると言われたのでお願いしたら、陶器の平べったい器に、豆腐が十個ずつ並べたのを出してきてくれた。

 主に、店舗用に用意している入れ物らしい。

 何これ、めちゃ良いじゃん。

 って事で、予算は潤沢にあるので、全部この器に入れて貰う。

 満面の笑みの店員さん達に見送られて、店を後にした。



「よし、取り敢えず欲しいものは手に入ったから一旦戻るか。昼は買った豆腐の食べ比べだ。ああ、こうなると某◯ーチキンとか欲しいよな。あれがあれば、おからでサラダが作れるのに」

 レシピを考えながらふと思った。絶対この街なら有りそうだ。

 思わずさっきの店に戻った俺は、店員さんに質問して予想通りの答えをもらった。

 マグロやカツオの油漬けや水煮。有るよ。有ったよ。

 って事で、これまた売ってるお店を教えて貰い、帰る前に行ってみる事にした。



 で、結果。

 瓶詰めのマグロとカツオの油漬けと水煮、どちらも大量に購入しました!

 やったぜ、これでまたメニューが増える。

 予想以上の大量購入の成果に、俺はご機嫌で宿泊所へ戻ったのだった。



 よし、昼を食って、商人ギルドにジェムを売ったら、残りの時間は料理の仕込みをするぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おぉ~~〇ーチキンもあるのね(*´▽`*)イイ世界や~~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ