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蕎麦発見!

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

「うん……おきる、よ……」

 無意識に返事をして、当然そのまま二度寝の海へダイブ。



 ぺしぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみふみ……。

 カリカリカリカリ……。

 つんつんつんつん……。

「うん……おきるよ……あれ?」

 ぼんやりと目を開いて、もふもふのニニの腹毛に埋もれながら考える。

「あれ、さっき起きたんじゃなかったっけ?」

 完全に寝ぼけて回らない頭で考えていると、最終警告来ました!



 ザリザリザリザリ!

 ジョリジョリジョリジョリ!

「うわあ、起きます起きます!」

 首の後ろ側と耳の後ろをザリザリの舌で舐められて、俺は悲鳴を上げて転がって逃げた。

「あはは、毎回スリル満点の目覚ましをありがとな」

 朝起きるのが苦手な俺でも、即座に起きられる猛獣目覚ましコンビ、恐るべし。

 笑ってソレイユとフォールを順番におにぎりの刑に処した俺は、なんとか起き上がって大きく伸びをした。隣では、ニニと猫族軍団が全員揃って伸びをしている。

 おお、さすがは猫族、皆すげえ伸びっぷりだな。



「今日はちょっと曇りかな?」

 庭へ続く大きな扉の横にある窓から、空を見上げてそう呟く。

「おはようございます。やや曇っていますが雨が降る気配はないですよ。午後からは晴れるでしょうね」

 庭に出て空を見ていたベリーが、振り返ってそう言って笑っている。

「あ、おはよう。へえ、そうなんだ。じゃあ、狩りに行っても大丈夫だな」

 後ろから寄って来たマックスの頭を撫でてやりながら、部屋に戻り、まずは顔を洗う。

「ご主人、綺麗にするね〜!」

 得意気なサクラの声と共に、いつもの包まれる感触があり、解放され瞬間にはもう、すっかりサラサラになっていた。

「いつもありがとうな。ほら」

 得意気に跳ね飛ぶサクラを抱き上げて、下の段の水槽に放り込んでやる。

 次々に跳ね飛んでくるスライム達も同じく抱きとめて放り込んでやる。

 水槽いっぱいになったスライム達の中に、レース模様のスライムがいるのが見えてちょっと笑った。

「見つからないように、外に出たらアクアの中にいるんだぞ」

 ファルコとプティラも、流れ落ちる水で、気持ち良さそうに水浴びをしている。

 楽しそうにしているので、何度か水をすくって掛けてやる。

 嬉しそうに羽ばたくのを見て、部屋に戻って手早く身支度を整える。



「サクラが綺麗にしてくれると、何故だか寝癖も綺麗に無くなってるんだよな」

 前髪をかきあげながら思わず額を撫でる。

「ええと、本当に消えてるんだろうな?」

 ベッドに座りながら思わず呟くと、ベッドの使っていない枕の上にシャムエル様が現れた。

「もう、失礼だな。ちゃんと消えてるよ」

「あはは。失礼しました」

 笑ってシャムエル様を抱き上げて右肩に座らせてやる。

「サクラ、ベリー達に果物出してやってくれるか」

 俺の言葉に返事をしたサクラが水槽から飛び出して来て、果物の入った箱を取り出してくれる。

 ラパンとコニーも一緒に果物を貰っている。

「ご主人、私達はまたお留守番しますね。果物や野菜クズで大丈夫ですから」

 ラパンの得意気な言葉に、俺は笑って手を伸ばしてもふもふの頭を撫でてやった。

「じゃあ、お前らはベリーと一緒に留守番だな」

 アヴィは寝る時の定位置である机の上にいたので、果物の箱を見て、嬉しそうに飛んでいって果物の箱にしがみ付いている。

「じゃあ、留守番チームは置いといて、狩りに行く肉食チームは俺と一緒に屋台へ行こうな」

 擦り寄ってくるマックスの大きな頭を抱きしめてやり、むくむくの毛並みを堪能する。




『おはよう、もう起きてるか?』

 丁度その時、ハスフェルから念話が届いた。

『おう、今準備が終わったところだよ。どうする、もう出るか?』

『そうだな。じゃあ出るよ』

『了解、じゃあすぐに行く』

『おう、すぐに降りるよ』

 ハスフェルの声に続いて、ギイとオンハルトの爺さんの声も届いた。

「皆、早起きだね」

 そう呟いて肩を竦めると、まだ水場で遊んでいるスライム達に声を掛けた。

「ほら、もう行くぞ」

「はあ〜い、今行きま〜す」

 アクアの声が聞こえた直後、全員集合して金色スライムになってすぐ側まで飛んでくる。

 鞄の中に潜り込むのを見てから口を閉めて肩に背負う。

「外にいる間は出てくるなよ。それじゃあ行くぞ」

 声を掛けて、留守番組を置いて廊下に出る。




 もう廊下には全員出て来ていて、俺も慌てて廊下に出る。

 全員出て来たのを確認してから扉を閉めた。

「お待たせ。それじゃあ行こうか」

 それぞれの従魔達を連れて、ハスフェルの案内で中央広場の屋台へ向かった。




 やっぱり妙に懐かしい景色を眺めながら、街中の大注目を集めつつ到着した中央広場は、これまた懐かしい屋台がいくつも出ていた。

「お出汁のいい匂いがする……なんの店だろう?」

 鼻をひくひくさせて匂いの元の店を探す。

「ああ! 蕎麦屋発見! うわあ、その隣はうどん屋さんだ」

 以前、一軒だけうどんの屋台に出会った事があるが、あの時以来だ。

 ちょっと悩んで、蕎麦屋に行ってみる。

 覗くと、どうやらメニューは二種類だけのようで、ざる蕎麦と、炊いた薄い揚げが乗った、いわゆるたぬき蕎麦。うん、シンプルイズベスト。

「すみません。たぬき蕎麦を一人前ください」

 声を掛けて、すぐに用意してくれたお椀と竹製のお箸を貰う。

 匙は、レンゲじゃなくて大きめの木を削ったものが付いていた。

 端に寄って、お座りしているマックスの足に座って食べる。

「ああ、しっかり出汁が効いてて美味い!」

 蕎麦の懐かしい食感と味に、思わずそう叫んだ。

 興味津々でお椀を抱えて覗き込むシャムエル様には、お蕎麦を数本と、揚げを少しだけ千切って、いつものお椀に入れてやった。

 今日は味見ダンスは無しだな。残念。




「これって売ってもらえるかなあ?」

 一気に食べ終え、お出汁まで綺麗に飲み干す。こんな美味しいお出汁を残すなんてとんでもない!

 空になったお椀を返すと、店主のおっさんは嬉しそうに受け取ってくれた。

「あの、ちょっとお尋ねしますが……」

「おう、どうした。魔獣使いの兄さん」

 予想通りの元気な返事が返ってくる。

「とても美味しかったです。このお蕎麦や出汁って売っていただけますか?」

 不思議そうにするので、自分が収納の能力持ちである事や、出先で食べられるように作り置きを持ち歩いている事を簡単に説明した。

「あはは、そりゃあ凄えな。ああ構わないぞ、百人前今すぐくれって言われたら、ちょっと無理だけどな」

 笑ってそう言われて、ちょっと考える。

「ええと、この鍋一杯分くらいなら、如何ですか?」

 そう言っていつも使っている空になった鍋を取り出す。

「ああ、それくらいなら二十人前ってとこだな。いるかい?」

「お願いします!」

 そう答えてから、ちょっと考えてパンを入れるのに使っている、ばんじゅう、って俺は呼んでる平たい木箱も取り出す。

「あ、それなら、蕎麦はここへ入れてください。茹でるのは自分でやりますので」

「おお、兄さん良いもの持ってるじゃねえか。じゃあそこで待っててくれよな」

 そう言って鍋と木箱を受け取ったおっさんは、手早く出汁を計って鍋に入れてくれ。奥の箱から蕎麦も持って来て木箱に入れてくれた。

「揚げは要るか?」

「あ、じゃあここにお願いします」

 慌てて大小のお椀を取り出して渡し、そこに揚げと刻んだネギも入れてもらう。

「ありがとうございます」

 鍋を受け取って鞄に一瞬で収納するのを見て、おっさんは苦笑いして首を振った。

「収納の能力持ちは初めて見たよ。便利なもんだな」

「まあ、旅をする上ではありがたい能力ですね」

 小さな声でそう言って笑うと、おっさんも笑顔になった。

「良い旅を。また来ておくれ」

「ええ、しばらくこの街にいますので、また食べに来ますよ」

 笑って手を振り、屋台を後にした。



 ハスフェル達は、相変わらず串焼きの肉やなんかをがっつり食ってたみたいだ。

「それじゃあ、こいつらの事よろしくな」

 マックスとニニをハスフェルに引き渡す。

 ニニの背中には、タロンとソレイユとフォールが乗り、マックスの背中にはプティラと俺の肩から移動したファルコが留まっている。

「じゃあ行って来ますね。ご主人」

 マックスがそう言って俺に頬擦りする。ニニも順番に撫でてやり、揃って出て行く一行を見送った。

「さて、それじゃあ俺はこのまま朝市だな」

 スライムの入った鞄を背負い直した俺は、ハスフェルから聞いた、朝市をやってる通りへまずは向かう事にした。

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― 新着の感想 ―
作者さんの地域では「たぬき蕎麦」はお揚げなんですね、自分は揚げ玉やかき揚げ(某グリーンなたぬき)みたいな感じだと思っていました。
[気になる点] おや? 何気にアヴィも留守番してたハズだから、買い物中のケンって護衛はスライムのみ?(性能的には十分だけど、示威的には何も連れてない様に見えますね)
[一言] >炊いた薄い揚げが乗った、いわゆるたぬき蕎麦 関西方面の方か。 大体、「お稲荷さんはお揚げ→お揚げ入りはキツネ」という方向に思考回路が持って行かれますね。知らんけど。
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