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おやすみ

「はあ、笑った笑った。それじゃあ、明日の朝はどうする?」

 ようやく笑いが収まりそれぞれの椅子を起こして座り直した俺達は、ギイとオンハルトの爺さんを振り返った。

「全くお前達は何をしとるか。でもまあ、楽しそうで何よりだよ」

 大真面目に腕を組んで言ったオンハルトの爺さんの言葉に、また皆揃ってひとしきり笑い合う。

「ここの中央広場も屋台がかなり出てるから朝はそこへ行こう。それで、従魔達はそのまま俺達と一緒に狩りに行けば良いだろうからな」

 オンハルトの爺さんの提案に、俺も頷く。

「いつもやってるパターンだな。じゃあそれで行こう」

 って事でもう解散すると思ったら、ハスフェルが机の上のシャムエル様を見て、それから俺を振り返った。

「何? どうしたんだ?」

 何か言いたげに見えたのでそう尋ねると、苦笑いしたハスフェルはもう一度シャムエル様の尻尾を突っついた。

「なあ、忘れてるみたいだから言ってやるけどさ。あれ、もうそろそろ外してやれよな」

 そう言って、自分の額を指差す。

「へ? 何の、事……ああ! これ! なあ、どうなったんだよ。もう一日過ぎたんじゃねえの?」

 確かにそうだ。すっかり忘れてたけど、この額のばつ印の絆創膏。

「うわあ。俺、初めて来る街に、この顔で来たのかよ」

 額を押さえたまま笑い転げる俺を、三人は呆れたように見て、それから顔を見合わせてまた吹き出した。

「お願いします! もうそろそろ剥がしてください!」

 また土下座する俺の目の前にシャムエル様が現れる。

「もうしない?」

「しません! お許しを〜!」

「まあ、懲りたみたいだね。それじゃあもう、外しても良いよ」

「ありがとうございます〜!」

 もう一度土下座した俺は、起き上がって椅子に座り、額の絆創膏をゆっくりと剥がした。

 触ってみたが、特に違いはないみたいだ。

「なあ、消えてる?」

 振り返ってそう尋ねると、笑ったオンハルトの爺さんが、朝も見せてくれたメタルミラーを取り出してくれた。

 前髪を上げて、ミラーを覗き込む。

「あれ、赤い粒が……」

 ちょうど額の真ん中やや右寄りの辺りに、ポツンと小さな赤い、できものみたいな赤い粒がある。こんなの俺の額には無かった。

 思わずシャムエル様を見ると、鼻で笑われた。

「それはあの赤い印の元。まあ明日の朝までには消えるから、気にしないで良いよ」

「あ、了解っす」

 オンハルトの爺さんにメタルミラーを返しながら、これも一個あっても良いかなんて考えていた。

 よし、これもここにいる間に探してみよう。



「大丈夫なようだな。それじゃあ俺達はもう戻るよ。お疲れさん」

 ハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも揃って部屋に戻って行ったのだった。





「はあ、ちょっと疲れたよ。ええとベリー、果物は?」

 扉が閉まるのを見てから、大きなため息を吐いた俺はそう言って庭に通じる窓を振り返った。

「まだ大丈夫ですよ。明日の朝にお願いします」

 姿を現したベリーとフランマがそう言うので、タロン用のグラスランドチキンの胸肉を切りながら、ソレイユとフォールを見る。

「お前らは?」

 胸肉を見せながらそう聞いてやると、二匹揃って声の無いニャーの後、タロンの横に来て良い子で並んでお座りしたよ。

「あはは、了解。はいどうぞ」

 全員に大きく胸肉を切ってやり、サクラが出してくれたいつも使っているお皿に入れてやる。

 ファルコも欲しそうにしていたので、胸肉を切って咥えさせてやる。

「お前らもちょっと食っとくか?」

 足元を走り回ってるウサギコンビに聞いてやると、二匹は揃って首を振った。

「大丈夫です。転移の扉から出入していた時に、周りに美味しい草が生えていたのでしっかり食べて来ました!」

 二匹揃ってドヤ顔でそう答えるので、代わりに思いっきりもふもふしておいたよ。ああ、やっぱりウサギコンビの手触りも良いよ。



 もふもふのラパンに笑って抱きついた瞬間、一瞬、意識が飛びかけて、慌てて顔を上げて首を振る。

「いかんいかん、もふもふの誘惑に負けるところだった。まだ顔も洗ってねえのに、駄目だってな」

 苦笑いしてそう呟き、ラパンを下ろして周りを見渡す。

「ええと、他に腹が減ってるやついるか?」

「ご主人。果物を少しだけ頂けますか」

 俺の左腕にしがみついているアヴィにそう言われて、サクラから、ぶどうとリンゴを盛り付けたお皿を取り出してやる。余ったら、誰か食ってくれるかベリーが保管してくれるだろう。

 だけど、アヴィをお皿の横に置いてやる前に、アヴィもおにぎりおにぎりっと。

「ううん、気持ち良い。これも他の子達とはまた違う手触りだよな」

 抱き上げて頬擦りしてから、机の上に置いたお皿の横に下ろしてやる。

 それから、いつも大人しくて余り自分の欲求を言わないお(しと)やかコンビのプティラとセルパンには、希望を聞いて生卵を出してやった。

 しかし、改めてよく見るとそれぞれ個性豊かだよな。




 水場で顔を洗って、サクラにいつものようにきれいにしてもらう。

「さあ、もう寝るか」

 胸当てを外しながらそう言うと、ニニがいそいそとベッドに上がってパタンと横になった。

 尻尾がゆっくりと左右に揺れている。

 笑って近寄り、大きな顔を撫で回してやる。

 装備を全部外し、靴と靴下も脱ぐ。

 すぐにサクラとアクアが飛んできて、全部綺麗にしてくれたよ。


 ちなみに、スライム達は、街の中では金色合成禁止だと言ってある。大丈夫だとは思うけど、何処で誰が見ているか分からないからな。

 当然、レース模様の超レアキャラのクロッシェも、何があっても街の中では絶対に出て来ないように言い聞かせてある。



 身軽になったところで、同じく隣で横になったマックスもしっかりと撫でてから、二匹の間に潜り込んだ。

 一瞬早く、フランマが俺の腕の間に潜り込んできた。出遅れたタロンは俺の顔の横だ。

 背中側には巨大化したウサギコンビが来てくれ、いつものもふもふパラダイス空間の完成だ。

 ソレイユとフォールは、ベリーにくっついている。

「それじゃあ、ランプは消すね」

 サクラの声が聞こえて、机の上に置かれていた明るいランプが一瞬にして消える。

 部屋が一気に暗くなった。

「ありがとうな。それじゃあ皆……おやすみ……」

 小さく呟いた俺は、そのまま気持ちよく眠りの国へ旅立って行ったよ。

 どんだけ墜落睡眠なんだってな。

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