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超レアキャラの宿命?

「おめでとう。無事に希少種のスライムをテイム出来たね」

 嬉しそうなシャムエル様の言葉に、俺は握ったままのアクアゴールドを見る。

「やっぱりこいつって、以前言ってた、他にもいる超レアな隠しキャラな訳?」

「まあそんなところ。さっきのレース模様の子は、私の自信作なんだよね。すごく綺麗だったでしょう?」

「うん、確かに綺麗だったな」

 すると、俺の視線を感じたのか、アクアゴールドが一瞬でバラバラのスライム達に戻った。

 レース模様のクロッシェが、ポンと飛び跳ねて俺の手の中に飛び込んで来る。

「面白い柄だな。残念だけど、金色合成したら、このレース模様は消えちゃうんだよな」

「残そうと思ったら残せるよ」

 クロッシェの言葉に、足元に並ぶスライム達を見下ろした。

「ええと、どんな風なのか見せてもらえるか?」

「はあい、じゃあレース模様を残しま〜す!」

 アクアの声にオレンジのアルファが飛び込んで来てアクアと一体化する。一瞬後には、見事なレース模様の金色スライムが現れた。

「おお、すげえな。あ、だけど金色の羽が生えたスライムでも普通はいないんだから、この上にレース模様が付いたら……」

 万一、うっかり誰かに見られた時の騒ぎが容易に想像出来る。

「うん、駄目だ。これは封印だな」

 そう呟き、アクアゴールドを見る。

「じゃあ、いつもの金色合成に戻ってください」

「はあい、これで良い?」

 クルッと空中で一回転して戻った時には、いつもの羽付き金色スライムになっていたのだった。

 笑った俺は、もう一度アクアゴールドをおにぎりの刑にしてやった。

 スライム達の笑う声が聞こえて、俺も一緒になって笑った。




「なあ、こいつの他にもまだ隠しキャラはいるんだよな?」

 確認するようにそう尋ねると、俺の右肩に座っていたシャムエル様が目を細めて頷いた。

「もちろん。スライムには三段階のレアがあってね。アクアちゃんやサクラちゃん、それからアルファ達レインボースライムはレア度が一番低い第一段階。色の種類はまだまだあるよ。クロッシェちゃんやアクアゴールドちゃんは第二段階だよ。さあ、第三段階の子を見つけられるかな?」

 驚きに目を見張る俺に、シャムエル様がドヤ顔になる。

「あ、それじゃあクロッシェちゃんを自力発見したケンには、お祝いに特別大ヒントね。第三段階の最高級超レアスライムは一匹だけだよ。第二段階の子は、他にもいます」

「ええ、マジ?」

「マジマジ」

 ドヤ顔のシャムエル様にそう言われて、俺は堪えきれずに吹きだした。

「ええ、アクアゴールドが最高峰だと思ってたよ。これよりレアがあるんだ?」

「もうこれ以上はヒント無し! 頑張って自力で見つけてください」

「おお、了解。じゃあそれは今後の旅のサブクエストにするよ」

 笑ってもふもふの尻尾を突っつき、振り返った。



 ハスフェル達は、何故だか呆然と俺を見つめている。



「お、お前……今、自分が何をしたのか分かってるのか?」

 ギイの言葉に、俺は首を傾げる。

「へ、何が?」

「いや、何がって……」

 ハスフェルとギイは困ったように顔を見合わせ、それからほぼ同時に吹き出した。

「まあ、ケンだものな」

「そうだな。ケンだもんな」

 ハスフェルの言葉に、ギイが頷き、隣では、オンハルトの爺さんまでが腕組みをしてうんうんと頷いている。

「何だか、またものすご〜く馬鹿にされてる気がするんだけど。何が変なんだ?」

 不満げな俺の言葉に、三人がほぼ同時にこれ見よがしの大きなため息を吐いた。

「あのな。今、お前がテイムしたそのレース模様のスライムは、この国の先王が以前、どうしても欲しくて辛抱堪らず、物凄い額の賞金をかけてテイマーや魔獣使い達に国中を探させた超レアスライムに間違い無いぞ。今でもそのお触れは有効の筈だ。だからそいつを王都へ持って行けば、とんでも無い金額の賞金と貴族の称号、それから王都に屋敷と郊外の領地が貰えるぞ」

 ハスフェルの呆れたようなその説明に、今度は俺が絶句する。



「……マジ?」

「マジマジ」



 さっきのシャムエル様みたいな返事で、三人同時に大きく頷く。

「ええ、もう今の俺は、皆のおかげで使い道に困るくらいに金は持ってるし、ジェムもあるし、今のとこ定住する予定は無いから家なんか貰っても困るし、そもそも貴族なんてめんどくさいのは御免だよ。絶対嫌だ。俺は異世界を好きに見て回るって決めたんだもん。自由人万歳〜!」

 そう言って、両手を挙げて万歳のポーズを取る。



「……まあ、ケンだものな」

「そうだな。ケンだもんな」

 さっきと同じ事をハスフェルとギイがそう言いながら笑っている。

「全くだ、欲が無いにも程がある」

 オンハルトの爺さんまでが、腕を組んで同じように笑いながらそんな事を言ってる。

「ええ、だってせっかく自由に楽しくやってるんだから、今更、身分や地位を気にしたり、義理やしがらみに束縛されたりするのは嫌だよ」

 顔の前で大きく手を振り、そう言ってから俺の顔の横で飛んでるアクアゴールドを振り返る。

 だけど冷静に考えたら、ちょっと色々とまずい気がする。




「うう、これはちょっと気を付けないと駄目だな。万一にも、誰かにクロッシェの存在を知られたら、この間の誘拐騒ぎどころじゃねえぞ」

 金や身分が欲しくて堪らない人は、恐らくこの世界でも大勢いるだろう。

 万一にも、そんな奴にクロッシェの存在を知られたら……それこそ、俺を殺してでも手に入れようとする奴が現れないとも限らない。

「うわあ、揉め事は御免だぞ。どうするべきかなあ、これ……」

 頭を抱えてしゃがみ込む。

 一度テイムして名前を与えたクロッシェを放逐するってのは、この前マックス達から聞いた通りあり得ない選択だからこれは無し。となると、一緒にいて守るしか無い。

「御免な、せっかく滅多に誰も来ない飛び地に隠れてたのに、勝手に思い付きだけでテイムしてさ」

 アクアゴールドを見ながら、思わず謝ってしまった。



 別に、見逃すって選択だってあった筈なのに、俺は何も考えずにテイムしちまったんだよ。

 ここでも、考え無しな行動が裏目に出たよ。



 しかし、アクアゴールドからするりと抜けて出てきたクロッシェは、一度地面に落ちた後、ポンと跳ね飛んで俺の腕の中に飛び込んで来た。

 それから細い触手を伸ばして、俺の頬を慰めるみたいに何度もなでなでって感じに撫でてくれた。

「そんな事言わないでよ、ご主人。ずっと一人だったから、名前を貰えてすごく嬉しいよ。だけど、クロッシェがここにいる事で、ご主人の迷惑になるのなら……」

「ああ、待った待った!」

 次の台詞が容易に想像出来て、俺は慌てて逃げようとしたクロッシェを掴んだ。

「出て行くのは無しだぞ。そんな事したら、従魔達総動員で、捜索隊を、つ、く、る、ぞ」

 両手で握って、言い聞かせるようにそう言ってやる。

 すると、クロッシェだけでなくアクア達スライム全員がポンポンと飛び跳ねて次々に俺の腕の中に飛び込んで来た。

「ありがとうご主人!」

「大丈夫だよ!」

「そうだよ、大丈夫だよ〜!」

「皆で守るからね〜!」

 口々にそう言うスライム達を、俺は呆気に取られて見ていたのだった。



「ええ、ちょっと待てお前ら。一体何をする気だ?」

 叫んだ俺は、間違ってないと思う

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