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買取依頼と新しいジェムモンスター狩り

「さてと、それじゃあ出かける前に、ギルドでジェムの買い取りを頼んでおくか」

 マックスの背中に乗って、ゆっくり一列になってギルドまで戻った。


 途中、卵を売っている店があったので覗いてみた。聞いてみると在庫は沢山有るとの事だったので、遠慮無く大量購入。

 卵は、煮てよし焼いてよしで汎用性が高いもんな。

 そして、ある事に気が付いた。

 大量購入しても変に思われないのは、どうやら背後にいる大きな二匹のせいらしく、肉屋でも『大変ですね』とか言われたのは、こいつらの飯だと思われていたみたいだ。成る程ね。

 店員勢揃いで見送られて、妙に恥ずかしかったよ。



 ギルドの建物に戻った俺は、マックスの背中から降りて一緒に中に入った。

 ここに来るのは久しぶりだから忘れられていたのか、またしても大きなどよめきが起こる。知らん振り知らん振り……。

 買い取りのカウンターは空いていたので覗き込むと、見覚えのあるお姉さんが慌てて座ってくれた。ギルドに登録する時に、世話になった人だ。

「あ、お久し振りです。何を買い取りご希望でしょうか?」

 小さなトレーを出してくれたけど、それでは小さ過ぎます。

「ごめん、ジェムの大量買い取りだから、そのトレーにはちょっと乗らないかな」

 困ったようにそう言うと、いきなり前回世話になった爺さんが横から顔を出した。

「おお、お前さんか。もちろん喜んで買い取るぞ。こっちへ来てくれ」

 お姉さんに合図して書類を受け取ると、爺さんは以前と同じ部屋に俺達を連れて行った。


「待っておったぞ。さあ、遠慮無く出してくれ」

 大きな机を叩いて満面の笑みでそう言うので、俺は鞄の中に入ったアクアに頼んで、順番に買い取り用に分けてあったジェムを取り出していった。

 ゴールドバタフライの羽は後かな。


 次々に机の上に出てくるジェムの山を見て、またしても爺さんの手から虫眼鏡が落ちる。

「ええと、ジェムの買い取りは、まずはこれだけお願いします。ピルバグ、ゴールドバタフライの幼虫と成虫、それからブラウンハードロックで。それぞれ50個ずつ有ります」

「ブラウンハードロックだと! しかも50個!」

 爺さんの叫び声に、奥から別の作業をしていた爺さん達までが、突然全員走って出て来て机を取り囲んだ。

 ゴールドバタフライのジェムを見た一人の爺さんが、物凄い勢いで振り返った。

「おい、お前さん。ゴールドバタフライの成虫のジェムがあると言う事は、羽は! 羽はどうした! まさか置いてきたんではあるまいな!」

 叫びながら、ものすごい力で肩を掴まれて思いっきり揺さぶられる。


 やめてくれ。俺が首を痛めるって。

 ってか爺さん、細い腕なのにすごい腕力と握力だな。


 何とか腕を掴んで止めて、肩を叩く。

「あります、あります。あるから落ち着いて」

「全部買い取らせてくれ! 頼む! ゴールドバタフライの羽は、最近入荷が全く無くて職人達の仕事が止まってるんだ!」

 全員の縋るような目にため息を吐いて頷いた俺は、笑いながら歪んだ服を直して鞄に手を突っ込んだ。

「アクア、ゴールドバタフライの羽を50匹分出してくれるか。セットのパーツを間違わないようにな」

 小さな声でそう言って中を覗き込むと、額のマークが上下して頷いてる。

 見えないように鞄の口ギリギリまで出て来て、吐き出してくれる羽を一枚ずつ取り出して、待っている爺さん達に渡していく。

 嬉しいのは分かったから、受け取る度に奇声を発するのはやめてくれ。マジで怖いからさ。


「本当に、こんなに沢山売ってもらえて感謝するよ。鑑定と金の準備に少し時間がかかる。すまないが待ってもらえるか?」

 真剣な顔の爺さんに、俺は頷いた。

「構いませんよ、そこは信用してます。それなら今から俺の昼飯の後、こいつらを連れて外へ出ますから、夕方戻って来た時に買い取り代金を精算してください」

「了解した。それまでに準備しておく」

 そんな話をしている間に、奥の机で他の爺さん達が、数量の確認をしてくれていた。

「これが預かりの明細だ。念の為確認してくれ」

 俺も一緒に、渡したジェムと羽の数を確認する。

「はい、間違いなくありますね。それじゃあ、また夕方来ますので、鑑定よろしくお願いします」

 一礼して出て行く俺を、爺さん達は満面の笑みで見送ってくれた。


「昼飯にするにはちょっと早いな。もうこのまま出掛けるか」

 マックスの背中に乗ってそう呟くと、肩の上にシャムエル様が現れた。

「もう出掛けるの?」

 目を輝かせながらそう聞かれて、俺は笑って頷いた。

「ああ、少し早いけどもう出掛けるよ。今日はどこへ行くんだ?」

「ブラウンハードロックがまた増えてるから、またあそこへいくか、後は行くならブラウンロックトードかな?」


 ブラウンハードロックは、また俺の手が死ぬのでちょっと勘弁してほしい。

 しかし、もう一つにもロックって付いてるし……。

「ええと、その初めて聞くブラウンロックトードってのはどんなの?」

 恐る恐る尋ねると、シャムエル様は、これ見よがしな大きなため息を吐いた。

「もう、相変わらず怖がりだなあ。ブラウンロックトードは、簡単に言えば大きなカエルだよ。皮膚がゴツゴツしてるからそんな名前が付いてるけど、ブラウンハードロックと違って、本当に岩みたいに硬い訳じゃないって」

「じゃあそれにします!」

 即座に答えた俺を、また冷たい目で見てるし……。

「あんまり自覚ないみたいだから言っておくけど、一応君ってかなり強いんだよ。それに、紹介してるジェムモンスターは危険度で言えばどれも中程度までで、特に危険なのは無いんだよ。まあ強いて言えば、危なかったのはヘラクレスオオカブトぐらいかな」

 あれを見て、マックスを始め全員が大張り切りしたのを思い出してしまい、俺は遠い目になったよ。

 うん、うちの子達は皆、強くて頼もしいなあ……あはは。



 城門を抜けて街道へ出る。人が多いうちは道の端をゆっくりと一列になって歩き、すぐに街道を離れて走り出した。街道の方から、そんな俺達を見て騒ぐ声が聞こえたが、聞こえない聞こえない。


 草原を全力疾走するマックスの背の上で、俺はちょっと感動していた。

 おお、鞍って素晴らしい。乗り心地最高! それに腕が楽だ。

 強いて言えば、もう少しサドルが柔らかいと嬉しかったんだが、まあ、そこまで求めるのは贅沢だろう。


 かなりの時間走り続け、ようやく自転車ぐらいの速さになった。

「なあ、どこかでちょっと止まってくれよ。朝はメロンパンだけだったからさ、ちょっと腹が減って来たよ」

 俺がそう言うと、マックスが林の近くで止まってくれた。ここなら木陰があって座れそうだ。

 サクラに頼んで小さい方の机と椅子を出してもらい、コーヒーセットを出してもらう。先にパーコレーターにコーヒーを淹れてから、バーガーとサラダを取り出してもらう。

「昼は、簡単に食べるのが早くて良いよね」

 ちょっと濃いめになったコーヒーには、牛乳をたっぷり入れてオーレにしてみた。

「うん、これも良いな。普段はブラック派だけど、気分を変えてたまにはオーレでも良いかも」

 しっかり食べて満足した俺は、少し休憩してから綺麗に片付けてまた出発した。


「もうそろそろ、目的地に到着か?」

 大きな林を抜けた先に見えてきたのは、真ん中に盛り上がった大きな岩があるドーナツ状の大きな池だった。

 その池の方から、何やら牛のような呻き声が聞こえる。しかも大合唱だ。

「もしかして。あの声ってのが、そのブラウンロックトード?」

「そうだよ。あいつらは特に攻撃はしてこないけど、動きは早いから気をつけてね」

 肩に座ったシャムエル様に言われて、まあ、カエルなんだから跳ねるんだろうな。ぐらいに考えていた。


 うん、俺って馬鹿だよな。

 今までの経験から言えば、どんな奴かぐらい、ちょっと考えれば予想はついた筈なのになあ……。

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