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黄金虫退治

 前回と同じ様に何度も大量に収穫した後、これも前回と同じ様に、少し休んで数時間くらい昼寝してから揃って起きる。

 収穫したリンゴとぶどうは、前回の時と違ってさっきよりもちょっとだけ大きくなっていた。

「あれほどの差では無いが、一応、前回と同じで最初よりは大きくなってるな」

「だな。この後どうなるか……」

 リンゴを一つもぎ取り、ナイフでちょっと削ぎ落として食べてみる。

「うん、美味しいリンゴだよ」

 全員が無言でひとかけらずつ口に入れて咀嚼する。



 しばらく誰も口をきかなかった。



「うん、大丈夫みたいだな」

「その様だな。よし、これでここは安心だな」

 ハスフェルとギイの言葉に、オンハルトの爺さんも頷いている。

「よしよし、じゃあこのままもう一箇所の出現場所へ行くか。何が出るかは、行ってみてのお楽しみらしいからな」

 妙に嬉しそうなハスフェルの言葉に俺達も笑っていたが、ギイが手を挙げた。

「それならここで、何か食ってから行かないと、行ったらそのまま戦闘に突入だろ。下手すりゃ夜まで食いっぱぐれるぞ」

「ああ、確かにそうだな。ケン。簡単に食えるものでいいから何か出してくれるか」

「うん、確かにそうだな。それじゃあ何にするかな」

 ちょっと考えて、机と椅子を取りだし、サクラを机の上に乗せる。

「サンドイッチを色々出してくれるか。作り置きのアイスコーヒーもな」

「了解、じゃあこの辺りかな」

 カツサンドやタマゴサンド、クラブハウスサンドなどを取り出してくれる。

「それじゃあ、さっさと食っちまおう」

 椅子に座って、マイカップに氷とアイスコーヒーを入れ、タマゴサンドの横で自己主張しているシャムエル様の尻尾を突っついてから、タマゴサンドとクラブハウスサンドをお皿に乗せた。

 三人はカツサンドとクラブハウスサンド、それからタマゴサンドをそれぞれ幾つも取って席に着いた。

 うん、実は腹減ってたんだな。ごめんよ。



「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! じゃじゃん!」

 今日は、片足立ちで腰を捻ったポーズだ。

 もふもふ尻尾がいい仕事してます。

「はいはい、今日も格好良いぞ」

 笑ってお皿を差し出すシャムエル様には、いつものようにタマゴサンドの真ん中辺りを切ってやり、アイスコーヒーも入れてやる。

「わあい、タマゴサンドだ」

 嬉しそうに齧る姿を見ながら、俺も残りのタマゴサンドを口に入れた。

「この後って何が出るんだ?」

「まあお楽しみに。大丈夫だよ。危険なジェムモンスターはヘラクレスオオカブトくらいだって」

「まあそれなら良いけどさ」

 クラブハウスサンドを齧りながら、地下迷宮からこっち本当に碌な事がなくて、どうにもテンションが上がらない俺だった。



 食事の後、少し休憩して机と椅子を片付ける。

「さてと、今度こそ出発だな」

 ハスフェルの言葉に頷き、それぞれの従魔に飛び乗ったのだった。

「さあ、今度は何が出るのかね?」

 俺の言葉に、シャムエル様も笑っている。

「何が出るかな?何が出るかな?」

 これまた妙な音程を付けて手を叩いて歌っている。

「何が出るかな?何が出るかな?」

 からかう様に真似して歌ってやると、何故だか大喜びされたよ。




 丈の高い草原を走り抜け、いばらの茂みを飛び越え、到着したのはそれほど木の数が多く無い、いわば雑木林の様な場所だった。ここの木もどれも大きい。

「ここなのか?」

「ああ、かなり強い地脈の吹き出し口だが、さて何がいるのかな?」

 ギイの言葉に、ハスフェルとオンハルトの爺さんも嬉しそうにしている。


 見たところ辺りは特に危険そうな物も無く、静かなもんだよ。

「なあ、さっきからあの木の辺りからゴソゴソ音がするのは……何だ?」

 ハスフェルも頷いて不思議そうに木を見ている。

 俺も目を凝らしていて違和感に気付いた。

「あ、なんかいる。あれは……ああ、黄金虫か?」

 50センチ近くある、丸みを帯びたやや縦長のコロンとした形の、メタルっぽい緑色の個体と、金色ぽい個体がいるのが見えた。

 低木の木の幹に、ウジャウジャと巨大黄金虫が溢れていたのだ。

「あれはカメレオンスキャラブ、素材はあの前翅だよ。あれは装飾品の加工用の素材としては最高級品だからね。バイゼンヘ持っていけば大喜びされるよ。あ、クーヘンも使うんじゃ無いかな」

 得意気なシャムエル様の言葉に、俺は剣を抜いた。

「あれは攻撃して来るのか?」

 一応用心して声を潜める。

「直接の攻撃は無いね。あの鉤爪みたいになった足でしがみつかれたら、相当痛いから気をつけるくらいかな。甲虫系の中では割と飛ぶ方だから、ファルコやプティラに上空の制圧をお願いすれば良いよ」

 シャムエル様の言葉が聞こえたようで、巨大化したファルコとプティラが羽ばたいて上空に舞い上がる。

「ここも槍の方がいいな」

 前回使った時、例のミミズのウェルミスに突き刺さったミスリルの槍だ。俺が収納したままになっていたので、それを出してみる。

「よし、ちゃんと出せたぞ」

 掴んで取り出す動作で、上手く出す事が出来た。



 ギイが、またしても組み立て式のあの長い棒を取り出してくれた。

「じゃあ叩き落とすからな。手早く仕留めろよ」

 俺とハスフェルは槍を構え、オンハルトの爺さんは少し離れた場所で何と鞭を取り出して構えた。

「爺さん、カッケー。あれ、俺も使えるかな」

「まあ出来ると思うけど、鞭はちょっと訓練が必要だよ。良いんじゃない? それならここにいる間に、オンハルトに教えて貰えば良いよ」

 思わずそう呟くと、右肩に座ったシャムエル様が笑いながら嬉しい事を言ってくれる。

「そうなんだ。じゃあ後で聞いてみるよ」

 槍を握り直し、ギイが棒を振るのを見ていた。



 ボトボトと、棒に払い落とされて地面に落ちる黄金虫達。

 しかし聞いていたように、途中で羽を広げて逃げようとする奴が多くいる。しかしそうはさせじと、その上空に巨大化して飛び回るファルコとプティラ。

 その姿に慌てて方向転換しようとしてやっぱり地面に落っこちる。そこを槍で軽く突いてやれば、あっという間にジェムと素材になって転がった。

 飛んで来る時にしがみつかれないように避けさえすれば、拍子抜けする程危険は無かった。

 しかし、俺は気を緩める事なく槍を振るい続けた。

 舐めてかかったら、絶対痛いしっぺ返しを食う事は学習済っすから。



 少し離れた場所では、爺さんが逃げようとする黄金虫を鞭で叩き落としていた。

 目にも止まらぬ早さで伸びる鞭は、確実に黄金虫をジェムに変えている。

 うん、あれも有効な武器みたいだから、ちょっとマジでやってみても良いかも。

 密かに感心しつつ、俺も目の前の黄金虫をひたすら突き続けた。




「はあ、樹海や地下迷宮みたいに、もっと強いジェムモンスターが沢山いるのかと思ったけど、案外普通のジェムモンスターなんだな」

 ようやく一面クリアーして、休憩で体力回復用の水を飲みながらそう言うと、シャムエル様は目を細めて首を振った。

「地下迷宮や樹海との最大の違いは、本来のここは与える場所だって事。ここに到達出来る者へ、この地が言ってみれば歓迎の贈り物を与える場所なんだよ。分かる? 此処は訪れたものに特別な素材やジェム、或いは実りを与えてくれる場所」

 シャムエル様の言葉に、納得して頷いた。

 確かに来るのは大変だから、そうそう来られる場所ではない。出来るだけの収穫を持って帰る事は重要だよな。

 振り返って、地面に転がる大量のジェムと素材を見て、俺は笑って頷くのだった。

 うん、あの素材をクーヘンが細工物に使えるのなら、もうちょい頑張ろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 鞭もいいけど、ずっと気になってたのは、前衛タイプの従魔が多いんだから後方から遠距離支援できる弓とかの方が、特にビビりなケンには向いてるような気がするのに、戦闘狂神様方は誰も教えてくれな…
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