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休日の楽しみ方

「さあて、今日は休憩だけど、俺は料理をするよ」

 しばらくのんびりと寛いだ後、俺は立ち上がって大きく伸びをした。

 ハスフェル達はそれぞれ好きに寛いでる。

 オンハルトの爺さんはソファーで既に横になって寝ているし、ハスフェルは床に座ったシリウスにもたれかかってこちらも昼寝中。ギイは椅子に座っているが、どう見てもこれも寝ている。

「ま、たまにはこんな日があっても良いよな」

 笑って肩を竦めた俺は、何から作ろうか腕を組んで考えた。



 マックス達は、ベリーと一緒に庭に日向ぼっこに出たみたいなので、広い庭は賑やかな事になってる。

「よし、この前メインの揚げ物とご飯は炊いたから、まずは作るならサイドメニューとスープ系だな」

 ちょっと考えて、まずはジャガイモを取り出して皮を全部剥いてもらう。

「じゃあこれはフライドポテト用な、カットよろしく」

 足元にいたアクアに渡して全部カットしてもらい、深めのフライパンにたっぷり油を入れてコンロに火をつけた。

「さあ、どんどん揚げていくぞ」

 腕まくりをして、どんどん揚げていく。

 出来上がったフライドポテトは、油切り用に置いてある籠に一旦取り、軽く油を切ったら塩を振りかけてから、サクラに預ければ完了だ。



「おお、良い匂いだな」

 ソファーでうたた寝していたオンハルトの爺さんが、匂いに誘われて起き出して立ち上がり、机の上の揚げたポテトを見る。俺は笑って山盛りに出来上がってるポテトをひとつ摘んで口に放り込んだ。

「こう言うのは、つまみ食いが美味しいんだよな」

 笑って爺さんの口にも放り込んでやる。

「熱い! だけど美味い」

 ハフハフ言いながら喜んでるのを見て、ハスフェルとギイがお皿を取り出して後ろに並んだ。

「つまみ食いどころか、食う気満々じゃねえか」

 笑ってそう言いながらも、山盛りに取り分けてやる。

 嬉しそうに山盛りのポテトを持って椅子に戻ると、なんとグラスと酒瓶を取り出しやがった。

「そりゃあそうだろう。昼間の酒は休日の楽しみだろうが」

 何故だかドヤ顔のハスフェルにそう言われて、俺は新しいポテトを油に投入しながら叫んだ。

「お前らだけずるい! 俺だって飲みたいのに!」

 三人が同時に爆笑して、ハスフェルが俺の分のグラスも出してくれた。

「お前は何を飲む? 吟醸酒か?」

「ええと、白ビールってあるか?」

「もちろん、じゃあ大きい方のグラスが良いな」

 笑ってそう言い、見た目そのまんま中ジョッキを取り出してくれた。

 この世界では、ビールは常温で飲むのが主流だ。

 当然、出してくれたそれも常温。だけど、まだまだ暑いこの温度で俺は揚げ物の真っ最中。

 一応冷風扇は動いているが、はっきり言って暑い。



 ここは出来れば冷たいビールが飲みたい。



 渡された中ジョッキを見て、しばし考える。

 それから、俺はスープに使うつもりで出してあった寸胴鍋を取り出した。

「ロックアイス、砕けろ」

 寸胴鍋に、砕いた氷を入れて、そこにビールをこぼさないように気を付けてジョッキをギリギリ迄沈める。

 これでしばらくすれば冷えるだろう。多分。



「何をしてるんだ?」

 立ち上がったハスフェルが、ポテトを齧りながら寸胴鍋を覗き込んで不思議そうにしている。

「あ、なあ、この白ビールって、瓶入りか?」

「もちろん、もう一本いるか?」

 取り出したのは、まさしくビール瓶サイズで、口の部分は針金とコルクで可動式の蓋が出来る様になっていた。

「もらって良いか?」

「ああ良いぞ、ほら」

 瓶ごと手渡されて、嬉しくなった俺はその瓶も寸胴鍋にぎっしり入った氷の中に突っ込んだ。

 驚いているハスフェルを振り返って、笑った俺は中ジョッキを少し動かして中のビールを回した。

「俺が元いた世界では、ビールはキンキンに冷やすのが主流だったんだよ。特に、今みたいに暑い日には、冷えたビールが美味かったんだよ」

「へえ、面白い事をするんだな」

 感心したようにそう言って、また覗き込む。

「冷えるまで、もう少しだな」

 冷えたビールは後の楽しみに置いておき、俺は揚げている真っ最中のポテトを箸の先でかき混ぜた。




 ポテトが揚がったみたいなので、掻き混ぜてからどんどん取り出して油を切る。上から砕いた塩を振れば完成だ。

「あ、せっかくだからポテトチップスも作っとこう。酒のつまみにもなるしな」

 足元の箱からジャガイモをいくつか取り出して、まずはサクラに皮を剥いてもらう。

「これを薄く輪切りに出来るかな。大体これくらいで良いから」

 包丁で出来るだけ薄く切って見本を見せる。

 サクラから触手がニュルンと伸びてきて、一個だけジャガイモを掴んで一瞬で取り込んだ。

「ええと、こんな感じ?」

 空のお皿に吐き出されたそれは、見事なスライスされたジャガイモだった。

「完璧だよ。じゃあこれ全部スライスしてくれるか」

 残りのジャガイモを渡して、俺は切ってもらった分をゆっくりと油に入れて箸の先で混ぜた。

 スライスしたポテトがバラバラになり曲がったり歪んだりし始める。

 レインボースライム達は、火が怖いらしく少し離れた所で固まって俺のする事を見ている。



「何それ。初めて見るね」

 シャムエル様が俺の右肩に現れて、興味津々で身を乗り出すようにして覗き込んでくる。

「こら、あんまり前に来たら危ないぞ。これも揚げたジャガイモだよ。ただし、見ての通り切り方が違う」

 薄いから簡単に揚がる。

 箸で揚がったのをまとめて摘んで籠に入れるのを繰り返し、全部取り出したらこれにも塩を振っておく。

「はい、熱いから気をつけてな」

 一枚摘んで、軽く振って冷ましてからシャムエル様に渡してやる。

「うわあ、パリパリで美味しいね。へえ、面白い」

 そう言って、嬉しそうに端からカリカリと齧り始めたのを見て、ちょっと笑ったね。

 俺も一枚口に入れてから、新しいスライスポテトを油に投入した。



「はい、出来上がりっと」

 揚がった最後の一枚を取り出して、コンロの火を止める。一旦休憩だ。

「さて、ビールはもう冷えたかな?」

 寸胴鍋の中に入れてあった中ジョッキを取り出してみる。

「おお、グラスがめっちゃ冷たいよ。ビールはどうかな?」

 立ったままぐいっと一口飲んでみる。

「おお、良い感じに冷えてるじゃん。よしよし」

 満足して椅子に座ると、揚げたてのポテトチップスを摘みながら俺も冷えたビールを楽しんだ。



「良いね、休日って感じがするよ」

 瓶ごと冷やしてあった新しいビールの栓を開けながら、やっぱり冷蔵庫を探そうと本気で考えていたのだった。

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