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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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高級肉で大宴会

「すみません! 従魔登録をお願いします!」

 カウンターに駆け込んだ俺とギイは、揃って座り、大急ぎで出された申込書に記入していった。

 途中、ギイが念話で呼んだハスフェルとオンハルトの爺さんも駆け込んで来て、四人揃って無事にスライム達の従魔登録を終える事が出来た。

「まあ、うっかりは誰にでもあるさ。今後は気を付けろよな。別に罰則があるわけじゃ無いが、今回の誘拐された従魔達のように、未登録状態で、本人に非が無くとも巻き込まれて問題が起こる事だってあるからな」

 降りて来た真顔のアーノルドさんにそう言われて、俺達は改めて頭を下げたのだった。



「じゃあ、ちょっと上で準備をして来ます」

 宿にはベリーがいてくれるから、留守番組の心配はしなくて良いのでこのままハスフェル達も一緒に屋上へ上がった。

「じゃあ俺達は机と椅子を出すからな。手がいるなら言ってくれ」

 慣れた様子で階段横にあった小部屋へ行き、大きな机を何台も取り出して並べ始めた。

「そっか、ここはギルドの宴会場な訳か」

 大きな机を見て笑った俺は、まずいつもの大小の机を取り出し、ハイランドチキンの胸肉の塊を取り出した。

「なあ、ギルドに大きなお皿かお椀みたいなものって無いかな。切った肉を入れたいんだけど。俺が持ってるのだと、ちょっと小さいんだよな」

 振り返った俺の言葉に、ギイが手を上げて階段を駆け下りて行ってくれた。

 しばらくすると、ギイと一緒にアーノルドさんとギルドの職員と思しき人達が、大きなボウルのようなものや、大きなトレーを何枚も持って来てくれた。

「これを使ってくれ。後、これもいるか?」

 そう言って取り出してくれたのは、60センチ近くある大きな金串だった。それ以外にも1メートル近いものすごく太い金串もある。

「おお、良いのがあるじゃないですか。じゃあ使わせてもらいます」

 笑って受け取ると、アーノルドさんはハスフェルと何か話して、そのまま職員さん達を連れて降りて行った。

「こっちはどうする? 網以外だと鉄板もあるぞ」

 俺は大型コンロをセッティングされた焼き台を振り返る。

「なあ、これでグラスランドブラウンブルやブラウンボアの肉の塊を、そこで丸焼きに出来ないかな?」

 一番大きな金串を持って聞いてみると、三人は同時に吹き出した。

「任せろ、それなら俺達が焼いてやるよ」

 おお、大量にある野生肉(ジビエ)の消費も出来そうだ。



 って事で、それぞれ大きな塊を取り出して、金串にぶっ刺して、一番台の高い焼き台で焼き始める。どうやら、塊は遠火でじっくり焼くみたいだ。

「じゃあ、焼くのは任せるよ」

 あと二つずつブラウンブルとブラウンボアの肉の塊を出しておき、俺は鶏肉の下ごしらえを始めた。

 とは言っても見本をいくつか切って見せて、後はスライム達にやってもらうだけだけどな。

 ハイランドチキン以外にも、グラスランドチキンも取り出し、同じくぶつ切りにする。

 それを貸してもらった金串に突き刺していく。時々玉ねぎも突き刺しながら一本仕上げて残りはスライム達にやってもらった。



 それから、ちょっと考えて焼肉のタレを作っておく事にした。



「ええと、醤油と砂糖それから酒、みりん、後は生姜のすりおろしたのとニンニク……は無いから玉ねぎで良いか」

 定食屋で作っていたレシピを思い出しつつ、鍋に材料を混ぜて軽く火にかける。

「温まったら出来上がりっと」

 タレも大量に作っておき、それから照り焼きのタレも大量に作っておく。

 焼き台は、一台は塊肉を焼くのに使っているので、残り二つには鉄板を乗せてもらって一つはそのまま、もう一つは照り焼きのタレを絡めて焼いていく事にした。

「野菜は……キャベツと芋、後は玉ねぎかな」

 多分、肉があればもう良いような気もするが、一応野菜も適当に切っておく事にした。



 そろそろ第一弾の肉が良い感じに焼けてきて、たまらない香りが立ち込めてきた。

「うわあ、これは堪らん」

 オンハルトの爺さんの声に、俺達は揃って大きく頷いた。

「じゃあ、そろそろ呼んで良いか?」

「いいんじゃないか」

 そう答えて、俺は大きな照り焼き肉の焼けたのを一切れと、タレ無しのも大きいのを一切れお皿に取り、それから、塊肉も両方大きな塊を切り取ってもらって、ちょっと考えて小さい方の机を開けてそこに置いた。別の小皿を取り出して、おにぎりも取り出して一緒に置く。

「これはシルヴァ達の分な」

 そう言って、黙って手を合わせて目を閉じる。

 頭を軽く撫でられる感触に目を開くと、あの手がお皿を撫でて消えるところだった。

「で、これは俺が食べる。っと」

 お皿を下げてシャムエル様を振り返ると、大きい方の机の上で、嬉しそうにステップを踏みながらいつもの小皿を振り回していた。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜っじみ! じゃじゃん!」

 最後は足を前後に広げてお皿を突き出す。尻尾は、今日は机と並行にピンっと突き出されている。


「あはは、また新しいポーズだな」

 笑って尻尾の先を突っついてから、今下げたばかりのお皿を見る。

「ええと、お下がりだけどこれで良いか? それとも新しいのを取ろうか?」

「それで良いよ。言ったでしょう? その中のマナは減って無いからね」

「そっか、じゃあこれで良いな」

 お下がりでも構わないみたいなので、一切れずつ切って取り分けたのをそこに並べてやる。おにぎりもちょっとだけちぎって並べてやった。

「うわあ、どれも美味しそうだね」

 ハイランドチキンの照り焼きに齧り付いたのを見て、笑ったハスフェルが階段に向かって大きな声で呼びかけた。

「おおい、もう上がって来ても良いぞ」

 すると、下から大歓声が聞こえて来て賑やかな声と一緒に、ドタドタと冒険者達が上がって来た。

 肉の塊を見て、拍手が湧きこる。

「ええと、その塊肉は、こっちがグラスランドブラウンブル。その奥がグラスランドブラウンボア。それでこっちがハイランドチキン、奥側がグラスランドチキンだよ。こっちの鉄板は、同じく、両方の肉の照り焼きです。まだまだあるから、お好きにどうぞ!」

 大歓声が上がり、それぞれ手にしたトレーに肉を取り分けていく。

 アーノルドさんと一緒に何人かが、大量の酒の入った木箱を抱えて上がってきて、また大歓声が上がる。

「酒も肉もケンの奢りだ。皆感謝して食えよ」

 アーノルドさんの大声に、また物凄い大歓声が上がる。

「ありがとうございます! いただきまーす!」

 全員が声を揃えてそう叫び、焼き台に突進して行った。



 物凄い勢いで肉が駆逐されていく。

「これがハイランドチキンで、そっちがグラスランドチキンだよ。追加はこれ。好きに焼いてくれ。照り焼きのタレはこれ。肉には塩か、このタレをどうぞ」

 切った肉の入ったトレーを机に並べておく。タレの横に岩塩を砕いたのも置いておき、自分も食べる事にした。



「ハイランドチキンの照り焼き、美味え」

 今日はナイフとフォークなんて使わない。箸で掴んで豪快に丸噛りだ。

 おにぎりを食べつつ、まずは照り焼きを堪能する。

「ご苦労さん。ほら、これで良いか?」

 ハスフェルが差し出してくれたのは赤ワインだ。お礼を言って受け取り、ワインを飲んでからまた肉を口に入れた。



 焼き台の周りでは肉の争奪戦が繰り広げられている。そして皆笑顔だし、美味い美味いと大喜びだ。

 それから、あちこちで何度も何度も乾杯の声が上がっている。

「しかし、野郎ばっかだな、女性の冒険者っていないのかね?」

 見る限り、女性はギルドの職員さんだけみたいだ。

 苦笑いした俺は、赤ワインを飲み干して、新しいワインをもらいに立ち上がったのだった。




 結局、大宴会は日が暮れた後も遅くまで続き、巨大なハイランドチキンの胸肉が三枚と、もも肉が二枚。ブラウンボアとブラウンブルの大きな塊肉が三つずつ消費された。

 よしよし、順調に消費してるな。とは言え、肉の在庫はまだまだあるよ。

 そして、鉄板の肉が全部無くなる頃になると、床のあちこちに、たらふく食って大満足して爆睡する冒険者達がゴロゴロと転がっていたのだった。



 俺も今日はよく食ったよ。

 ご馳走様でしたー!

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