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レア物買い取り再び

「それじゃあ、先に、ギルドへ行ってくるよ」

 すっかり酒盛り状態になっている三人を置いて、俺は残っていた米の酒を飲み干して立ち上がる。

 アクアゴールドに鞄に入ってもらい、マックスとニニと一緒に隣の冒険者ギルドの建物に向かった。

 取り急ぎ、獲って来てもらったハイランドチキンを捌いてもらうためだ。



「あれだけ有るんだから、ちょっとくらい売ってもいいよな?」

 ニニを撫でながらそう言うと、二匹揃ってうんうんと頷いた。

「もちろん構わないわよ。無くなったら、また捕まえてきてあげるからね」

「今度はグラスラン……」

「いやいや、待って。まだまだその辺は山ほど在庫があるから大丈夫だって。この前捌いてもらったグラスランドブラウンブルとブラウンボアも、まだまだ食い切れてないんだからさ」

 まあ、腐る心配ないから良いけど、それにしても多過ぎだって。

 苦笑いする俺に、マックスとニニが面白そうに笑う。

「まあ、無いよりはずっと良いよ。いつもありがとうな。それにしてもあいつら、ってかお前らも自重って言葉をちょっとは理解しろよな」

 苦笑いしながらそう言ってマックスの首に抱きつくと、大真面目に、自重? それって何ですか? と聞かれて、コントの様にずっこけたのは内緒だ。




「おお、お前さんか。こんな時間にどうした?」

 丁度ギルドの建物の中に入った所で、カウンターから出てきたギルドマスターのアーノルドさんに声をかけられた。

「ええと、ハスフェル達が珍しいのを狩って来てくれたので、ギルドで捌いていただこうと思いまして」

「モノは何だ?」

 大柄なギルドマスターが真顔で顔を寄せてくる。近い近い!

「近いですって。ええと、ハイランドチキンなんですけど、沢山あります。要りますか? ちなみに、通常種と亜種が有ります」

 寄せられた顔に向かって小さな声でそう言うと、眼を見開いたアーノルドさんが固まった。

「……ハイランドチキンの、亜種が、有る?」

 確認する様に真顔でゆっくりと言われて、若干ビビる。

「一応そう聞いてます。あの、良かったら奥でお見せしますんで、気が済むまで鑑定でも何でもしてください」

 顔の前に両手を上げて防御しながらそう言うと、満面の笑みのギルドマスターに確保された。

「そうかそうか。ぜひ見せていただこう」

 丸太みたいなぶっとい腕で簡単に確保された俺は、全くの無抵抗状態で、そのまま前回と同じ奥の別室に連行された。当然のように、前回と同じスタッフさん達が嬉々としてついてくる。



「さあ、出してくれ」

 揃って満面の笑みで待ち構えるギルドマスターとスタッフさん達の前に、とりあえずハイランドチキンの亜種を一匹取り出す。

「とりあえず、これ一匹と、こっちは十匹分お願いします。肉は全部戻してください、それ以外で買い取って頂けるのがあれば、全部買い取りでお願いします」

 そう言って、普通種も十匹取り出して並べた。

「おお、これはどれも素晴らしい状態ですね」

 スタッフさんの一人が目を輝かせてそう言い、ものすごい勢いで俺を振り返った。

「あの、肉は一部だけでもお譲り頂けないでしょうか?」

 (すが)るような目で見つめられて、ちょっと笑っちゃったよ。

「いや、山ほど有るんで、良かったら何匹でもお譲りしますよ」

 スタッフさんは、真顔でギルドマスターと顔を見合わせた。

「まず、こっちが普通種ですね」

 それでも鶏よりもはるかに大きなそれを取り出すと、またものすごい勢いでこっちを見る。

「では、十匹とか頂いても……」

「亜種ですか? それとも普通種?」

「では、普通種を50と亜種を20でもよろしいでしょうか?」

 拳を握ってそう言われて、俺は頷いて順番に言われた数を取り出していった。

「あと、グラスランドチキンと、同じくブラウンボアとブラウンブル。亜種も有りますよ」

「お前さん……一体何者だ?」

「ええと、これは俺じゃなくて、まあ、ちょっと前に別行動になった、常識外れの方々の置き土産です」

 何か言いたげなスタッフさんを一瞥で黙らせたギルドマスターは、ニンマリ笑って俺を見る。

「じゃあ、グラスランドチキンを十匹、ブラウンブルとボアは五頭ずつ、それから亜種は二頭ずつ。どうだ」

「ええ、大丈夫ですよ」

 そう言って、これまた順番に取り出して並べる。ブラウンブルとブラウンボアは机に乗らないので床に取り出して並べた。

「すっげえ……ここまで見事にそろってるのって……俺人生で初めて見たかも……」

「俺もだ。凄すぎるよ、一体何したらあんなに捕まえられるんだ?」



 だから、これは俺じゃ無いって!



 脳内で必死に叫びながら、素知らぬ顔で鞄を背負い直した。

「感謝する。これほど沢山の貴重な野生種。いや、素晴らしい」

「ええと、あと三日はいる予定なんで、それまでに肉を頂きたいんですが、大丈夫ですか?」

「もちろんだ、明日というわけにはいかんが、明後日までには用意させる」

「了解です。じゃあよろしくお願いしますね」

 笑ってそう言うと、勢揃いして見送ってくれたスタッフさん達に、ドン引きしつつ手を振って、早々に宿泊所へ戻っていった。




「なんだ。まだ飲んでるのか?」

 戻って来ると、三人はまだ空になったボトルを転がして遊んでいる。その様子は完全なる酔っぱらいだ。

 まあ、まだ寝るには早いので、俺も米の酒を手に乱入して、かなり遅くまで飲み、最後は空瓶を三角に並べてスライムを転がして倒す、題してスライムボーリングでグラスを片手に大いに盛り上がった。

 一瞬、これって虐待じゃん! って我に返ったんだけど、転がされている当のスライム達が大喜びで、次は誰が転がされるかの順番を取り合っていたので、もう全部良い事にした。



 それから、俺が晩飯で食ってたジャガイモの煮物は、実は彼らも気になっていたらしく、食べてみたいと言うので出してやったらがっつり食われたよ。

 あいつらは和食も洋食も関係無いみたいだね。

「気に入ったのなら、和食の煮物とかも、もうちょっと作っておくよ」

「おう、よろしく頼むよ。夕食で出してくれたあのミソスープも美味かった」

 ギイがそう言ってくれて嬉しくなる。

「おう、手に入れた削り節でしっかり出汁を取ったからな」

 笑って誤魔化すようにそう言うと、オンハルトの爺さんに真顔で言われた。

「あのミソスープは、確かに美味かった。基本の出汁がしっかりしておった。あれは良い。さすがはケンだのう」

 手放しで褒められって、嬉しくなってテンション上がる上がる。

「それは豆腐が手に入ったらもっと美味くなるので、俺も楽しみだよ」

 そう言って、盃に残っていた米の酒で乾杯して一気に飲み干した。



 そのあとしばらく飲んで、ようやく解散になったよ。



「明日は、そう続けて狩りに行かなくても良いと言ってるから、俺達はゆっくりさせてもらうよ」

「おう、そうなのか。俺は朝市に行ってもう少し買い物をしてから、また一日中料理かな」

「無理はしないでくれよな。まあ、朝飯の屋台ぐらいは付き合うよ」

 ハスフェルの言葉にギイとオンハルトの爺さんも頷いている。

「了解。それじゃお休み。また明日な」

「今日の料理もどれも美味しかったよ、ご馳走様。それじゃあお休み」

 ハスフェルとギイがそう言って部屋に戻り、オンハルトの爺さんも、笑顔で食事が美味かったとお礼を言ってくれて、部屋に戻って行った。

「おう、お疲れ様。それじゃあまた明日な」

 廊下で笑って手を振った三人を見送り、俺は部屋に戻った。



「お疲れ様だったな。じゃあ明日はお前らもゆっくりだな」

 手早く机の上を片付け、顔を洗ってからサクラに綺麗にしてもらう。

「それじゃあ今夜もよろしく!」

 振り返ったベッドの上には、既にニニが横になっている。

「良いわよ。どうぞ」

 嬉しそうなニニの声に、俺は笑ってニニの腹毛の海に潜り込んだ。

 いつものようにマックスが俺の横に来て挟み、ウサギコンビは俺の背中側。ソレイユとフォールは俺の顔の左右に場所を取る。そして、今夜の俺の胸元の特等席に潜り込んだ勝者はタロンだった模様。

 フランマが悔しそうにベリーの所へ行くのを見て、ちょっと笑ったのは、内緒だぞ。

「お休み、明日も、料理三昧だぞ……手伝いよろしくな……」

 睡魔に負けつつそう呟くと元気な返事が聞こえる。

 答えようと思ったんだけど、そのまま俺は眠気に負けて気持ち良く眠りの国へと落下していったのだった。

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