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料理の仕込みは楽しいな

詳しく書いたら飯テロ回になりました。

……お腹空いてる方、いらっしゃったらごめんね。

「良かったな。よく似合ってるぞ」

 革工房を後にした俺は、のんびりと歩きながらニニの首輪を見てそう言ってやる。元のニニは、長毛種程ではないが雑種の不思議で、普通の三毛猫よりもかなりふわふわの長めの毛だった。大きくなった今も、その特徴はそのまま引き継がれているので、首輪は深めの毛に殆ど埋もれている。だけど、ちょっと動いた時なんかにチラリと見える赤い首輪は、思いの外可愛かった。


「これ、下側の部分は丸くなるように加工してくれてあるんです。巻きつくのもすごく楽ですよ」

 嬉しそうなセルパンの声に、驚いて首輪を改めて見てみる。確かに、下側になる金具部分の周りは革が丸くなるように加工してある。上側になる部分は平らになっているから、これは明らかにセルパンが巻きつきやすいようにしてくれてあるのだろう。

「何だよ、あのおっさん。蛇は苦手とか言ってたけど、ちゃんとセルパンの事も考えてくれてるんだ。良かったな」

 俺が笑ってそう言うと、セルパンは嬉しそうに首を上げた。うん、もうこの大きさなら怖くないよ。慣れって凄えな。


 宿泊所への帰り道に、小麦粉を売ってるのを見つけた。

「小麦粉か、ちょっとぐらい買っておくか」

 何に使うかすぐに思いつかなかったが、一キロぐらいの大きさの袋を一つ買ってみる事にした。


 一旦宿泊所に戻った俺は、さっきあの親子から買った籠とお皿を取り出して、サクラに全部きれいにしてもらった。

 それから、葉物の野菜を全部取り出して洗い、適当な大きさにちぎって籠に入れておく。芋も順に取り出して洗って皮を剥いておく。10個ほど取り出し、適当に切って塩茹でしておく。うん、芋は付け合わせになるもんね。

 果物も取り出して、順番にきれいに洗って木のお皿に盛っていく。途中洗ったイチゴをつまみつつ、一時間ぐらいかけて野菜の仕込みを終えた。

 おお、あの親子の所で買った木のお皿がもう無くなったよ。

 サクラに説明しながら順番に飲み込んでもらい、他に玉子を10個取り出してゆで卵にしておく事にした。


「案外、野菜もたくさん買っていたんだな。ええと、あとは肉類か」

 まず最初に買った鶏肉を取り出して、塩胡椒をして焼こうとして思い付いた。

 小麦粉があってパンがあってバターがあるなら、チキンカツレツが出来るんじゃね? 粉チーズは無いけど、モッツァレラチーズがあるから、食べる時に上から溶かしてかければ良いよな。

 よし、是非作ろう。

 って事で、胸肉を全部叩いて平たくしてスパイスを振って置いておく。その間に食パンを切って適当に刻み、フライパンで炒って空焼きしてから細かく砕く、これで即席パン粉の出来上がりだ。

 買ってきた小麦粉をまぶして、溶き卵につけてパン粉をまぶす。大きめのフライパンにバターをたっぷり放り込む。うん、カロリーは気にしない事にしよう。

 弱火でバターを溶かしたら、鶏肉を放り込みじっくりと時間をかけて焼いていく。コンロ二つを同時に使って、焼いてお皿に乗せてはサクラに渡すのを繰り返した。よしよし、これで焼き立てがいつでも食べられるぞ。

 ハイランドチキンの胸肉も、全部で十枚切り分けて同じくカツレツにしておいた。

 だけどこの巨大な胸肉の塊、これくらい使っても全然減った気がしねえよ……。

 モモ肉は、普通の鶏肉は塩バター焼きにしておく。ハイランドチキンのモモ肉も、十枚切り取って塩焼きにしておく。

 うん、料理って楽しいよな。



 ちょうど良い時間になったので、昼飯は、ハイランドチキンのカツレツで簡単サンドイッチを作ってみる事にした。

「その前にコーヒーを沸かそう。あ、そうか! コーヒーも淹れておけばいつでも飲めるな。じゃあ置いておくなら陶器のピッチャーとかかな? ガラスの器って見ないもんな」

 思い出せば、肉屋に置いてあった冷蔵庫の扉にあった窓はガラスだったし、建物の窓も、分厚いが一応多分ガラスが入っている。だけど、ちょっと違う気もする。

「まあ良いや。次回の買い物で探してみよう」

 そんなことを考えながら、パーコレーターにコーヒーをセットして火にかけておく。


 食パンを二枚切り、バターを塗る。

「マヨネーズが欲しいと思うのは贅沢かなあ。あれってどうやって作るんだっけ?」

 そんな事を呟きながら、作ったばかりのハイランドチキンのカツレツを豪快に乗せて、モッツァレラチーズを切ってそのまま上に乗せて一緒に挟む。チキンが熱々だから、柔らかくなって良い感じになる。野菜も挟めよ。と言う脳内のツッコミを無視して、二つに切れば出来上がりだ!

 カップに淹れたてのコーヒーを注ぎ、手を合わせてから食べる。

「なにこれ、めっちゃ美味い!」

 自分の仕事に大満足して昼食を終えた。



 綺麗に後片付けをして、使った食器や道具も全部サクラに飲み込んでもらう。しかしスライム達、最高だね。もう、俺には君のいない生活は考えられないよ。

 笑ってプルプルの二匹のおデコを叩いてやり、外を見る。今日も良いお天気だ。

「じゃあお待たせ。お前らの食事に行くか」

 外していた剣を手にして振り返ると、部屋の奥で転がっていたマックスとニニが嬉しそうに起き上がった。

 ファルコは、椅子の背に留まって俺が食事するのをずっと見ていたので、羽ばたいて定位置に留まる。

「良いのを作ってもらえて良かったな」

 ふわふわのファルコを撫でてやり、大きく深呼吸した俺は、部屋を後にした。


 マックスの背中に乗って、まずは街を出る。

「で、今日はどこへ行くんだ?」

 マックスに話しかけると、突然シャムエル様が現れた。

「じゃあ、今日はどこに行く? ええとね。 誰かさんの嫌いな、ゴールドバタフライの成虫の所へ行ってみる? 蝶々は怖く無いでしょう?」

 目を瞬いた俺は、ちょっと考えて頷いた。

「うん、蛾とか蝶々なら怖く無いよ」

「それならそこへいこう! 芋虫のジェムと、成虫のジェムは同じ種類なんだけど少し違ってて、買い取りの際は、芋虫とは別の扱いになるんだ。ちなみに成虫の方が高く売れるよ。解りやすく言えば、芋虫、蛹、蝶で、レベルアップしてクラスチェンジしたってところかな」

 シャムエル様の説明に、納得してふと思った。

「セルパンも、グリーンコブラって1メートルぐらいの蛇だったのに、テイムしたらあの大きさになっただろう。じゃああれもそうなのか?」

「そうそう、テイムされると、レベルが上がるのと同じだからね。グリーンコブラの最上位種がグリーンビッグパイソンだったって訳。まあ、あの時は私がちょっと手助けしたから、一気に最上位までレベルアップさせたんだけどね」

 平然とそんな事を言うシャムエル様に、俺は取り敢えず頭を下げておいた。


 さて、あのデカい芋虫から成長したのなら……どれくらい大きな蝶々が現れるのやら。怖いような楽しみなような複雑な心境で、俺は目の前に迫った大きな森を見ていたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 野菜、わざわざ洗わなくてもスライムに潜らせればいいのに
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