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またしても予定変更!

「じゃあ、マックス達はまた留守番よろしく。食って帰って来たら、そのまま出発するからな」

 出来れば連れて行ってやりたいけど、確かに昨夜の屋台の周りのゴチャゴチャ感を思い出して、マックス達にはまた留守番していてもらう事にした。

「朝の屋台は何があるのかな、ちょっと楽しみだよ」

 昨夜と同じ、ファルコとモモンガのアヴィ、それから鞄に入ってくれたアクアゴールドだけを連れて、俺達は屋台の出ている広場へ向かった。



「おお、賑やかだな」

 そう呟きながら広場を見渡した俺は、ある一軒の屋台を見つけてそこへ吸い込まれるようにして近寄って行った。

「よし、予想通りだ。朝粥屋発見!」

 小さくガッツポーズをして、店の横に置かれた木の板を見た。

 そこには綺麗な手書きの文字で、お粥の種類が書かれていた。

「ええと、全部で五種類か。鶏肉と卵、海鮮、海老団子、鶏団子、川海苔……かわのりいいいい?」

 最後の文字で、俺は思わず大声を上げた。

 屋台にいたおっさんがびびって飛びあがってる。

「あ、すみません。ええと、この川海苔ってのは、どんなのですか?」

「何だい、兄さん川海苔を知らんのか? ほれ、味見してみな。良い香りだぞ」

 小皿に、鍋からちょっとだけすくって渡してくれる。

 緑がかったそのお粥は、あおさ海苔っぽいのが入ったお粥で、もらって食べてみると、間違いなく俺の知るあおさ海苔と同じだった。

「美味しいですね。じゃあこれを一人前ください」

 小皿を返してそう言うと、おっさんはわかり易く笑顔になった。

「お口に合ったかい。そりゃあ嬉しいな」

 そう言って、木製のお椀にたっぷりとよそってくれた。添えてくれたのは、お箸やレンゲじゃなくて大きめのスプーンだったけどな。

 この広場では何処の屋台も同じで、横に細長い机と一緒に丸太や小さな丸椅子が並んでいて、座ってそこで食えるようになっている。質素だがテントのような屋根もあるので、まあ小雨ぐらいなら濡れないだろう。

「はい、これもな」

 そう言って、おっさんは小皿も渡してくれる。何だろうと不思議に思いつつ右手で小皿を受け取った俺は、思わず二度見したよ。

 小皿に乗せられていたのは、どう見ても大根の漬物と塩昆布だったのだ。

「おお、これまた発見かも……ってか、出来ればもうちょっとここで買い物したい。屋台も見たい」

 そう呟きつつ、まずは食べる為に年季の入った丸椅子に座った。

「いただきます!」

 手を合わせてそう言ってから、まずは粥を一口。

「ああ、海苔の香りが……美味しい……」

 一口食べて感動に打ち震えている俺を、少し離れた焼き肉の屋台に座った三人が呆れたように眺めていた。

「で、これは……うん、間違いなくタクアンだ」

 コリコリとした食感を楽しみ、また粥を食べる。

「今度はこっち」

 塩昆布っぽいのを口に入れた俺は、またしても感動に打ち震えた。

「よし、塩昆布発見!絶対に、これでおにぎりを握るぞ!」

 顔を上げてガッツポーズを作った俺は、そこからはもう夢中でお粥を食べたよ。かけらも残さず、綺麗に完食したよ。



「ご馳走様。美味しかったよ」

 空になったお椀を返してからおっさんにお願いして、まずは川海苔のお粥を大きな鍋にいっぱいまで入れてもらう。

 他の種類も聞いてみたら味見させてくれたので、食べてみたところ美味しかったので、結局全種類入れてもらいました。

 これもどうぞと言って、タクアンと塩昆布も大量にお皿に取り分けてくれた。

 聞いてみたらこのタクアンと塩昆布は、どちらもおっさんのお母さんが作っているらしいが、どちらも別の通りにある店で普通に売っているらしい。

 この際なので色々と教えてもらい、漬け物屋と昆布屋、それから板状の焼き海苔を売ってる店も教えてもらう事が出来た。ここに俺の故郷の味があったよ。



 よし、ハスフェル達に頼んで延泊しよう。

 これは、ちょっとマジでここで買い出しをして料理の仕込みもしたい。うん、そうしよう。



 そう決意して、周りを見回してハスフェル達が座っている店に向かう。

「なあ、一泊の予定だったけど、ちょっと延泊しても良いか?」

 俺がそう言った途端に、三人揃って吹き出して大笑いになった。

「ほら、言っただろう。絶対延泊するって言い出すとさ」

 何故だか、得意気なハスフェルがそう言って手を叩いている。

「いやあ、慧眼(けいがん)恐れ入るよ」

「全くだな。恐れ入った」

 オンハルトの爺さんとギイが、揃ってそんな事を言ってまた笑う。

「なあ、一体何の話だ?」

 一人ドヤ顔のハスフェルを見ると、彼も笑いながら俺の背中を叩いた。

「いやあ、随分と楽しそうだったからさ。きっと、延泊して買い出しと料理をするって言い出すぞって話していたんだよ」

 空になったお皿を持って立ち上がったハスフェルの言葉に、俺も吹き出す。

「あはは、そんなに分かり易かったかな。でもまあ、探してた食材がほぼ見つかりそうだからさ。ちょっと本気で延泊して買い出ししても良いか?」

「了解だ。じゃあ俺達は、一旦ギルドに戻って延泊を頼んで来るよ。あと何泊する?」

「料理もするなら、最低でもあと三日は欲しいな」

「それなら、あと四泊頼んでおいてやるよ。まあ、何なら俺達はまた従魔達を連れて狩りに行って来てやるから、ケンはその間に頑張って買い出しと料理を頼むよ」

「了解だ。じゃあ今日はどうする?」

「シリウスは、そろそろ狩りに行きたいと言っていたな」

 ハスフェルの言葉に、俺は頷いた。シリウスが行きたがってるのなら、当然マックスも行きたいだろう。

「あ、じゃあ一旦一緒に宿に戻るから、マックス達も連れて行ってやってくれよ」

「了解だ。それならひとまず戻ろう」

 空になったハスフェルたちの分の皿をまとめて返して、ひとまず揃ってギルドへ向かった。



 まずは窓口で延泊をお願いして金を払う。ついでに、買取り金額の明細ももらった。うん、金額は……また資金が大幅に増えたよ。マジで何か還元する方法を考えよう。



 そのまま宿泊所へ戻り、従魔達を連れて出てもらう。

 アヴィは果物で良いと言うし、ウサギコンビも野菜屑で良いと言ってくれたので、アヴィとラパンとコニー、それからアクアゴールドが一緒に留守番だ。

 マックスが、甘えるように頭を擦り付けて来るのでしっかり抱きしめて首筋を掻いてやる。順番に、ニニや猫族軍団も撫でまくってもふもふを堪能した。



 それからマックスやニニ達と一緒に宿泊所を出て、広場で解散した。俺だけ別行動だ。

「じゃあ行って来ますね。ご主人」

 甘えるように鼻で鳴いて側から離れないマックスと、ずっと俺に身体に頭を擦り付けるニニ。

 うん、愛情の示し方にもそれぞれの個性が出るよな。

「ああ、行っておいで」

 笑って大きな鼻先をもう一度撫でてやってから、ハスフェル達に託した。

「それじゃあ行って来るよ。何かあったら念話で呼んでくれ」

「おう、そうだな。じゃあよろしくな」

 拳をぶつけ合い、頷いてそう言った。

「じゃあ行って来ますね。ご主人」

 従魔達が全員揃ってそう言ってくれた。何だよその可愛さは!



 笑って一行を見送り、アクアゴールドの入った鞄を背負い直して、広場を見渡した。

 まずは屋台での買い物から始める事にした。

 よし、こうなったらもう気が済むまで色々と買いまくってやる!

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