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地上目指して頑張るぞ!

「お待たせーご主人。朝ご飯は何を出すの?」

 心なしかプルンプルン度が増した気がするアクアゴールドが、水場から戻って来て、俺の目の前で羽ばたきながらそう聞いてくれる。

「とりあえず、作り置きのコーヒーと、手早く食べられるように、サンドイッチをいろいろかな」

「了解。じゃあ少なくなってるのを中心に出すね」

 サクラの声でそう言って、順番に色々取り出していく。


 最近、半端な数になった残り物を先に出すようにしていたら、サクラがそれを覚えたみたいで、出す時に数が少ないものから取り出してくれる。

 何この気配り上手な子は。


「じゃあ後は、俺が食いたいから野菜サラダと鶏ハムも出しておいてくれるか」

「はあい、これだね」

 そう言って、作り置きの鶏ハムの塊を出してくれたので、適当に切って、自分用にサラダの上にタップリと乗せて残りはそのまま並べておく。



「あ、ベリーとフランマ達に、果物を色々出してやってくれるか。タロンは……」

 机に自分の分のお皿を並べながら、ふと思い出して振り返った。

 俺の足元には、タロンを先頭に猫族軍団が行儀良く整列してお座りしている。その背後では、ファルコとプティラも大人しく待っている。

「あはは、タロンだけじゃなくてお前らも食べたいんだな。了解。グラスランドチキンで良いか?」

「はあい、それでお願いします」

 代表してそう答えるタロンの横で、猫族達もそろって声の無いにゃーをしてくれた。なんだよこの可愛い奴らは。

 サクラが取り出してくれた従魔達用の小皿に、切り分けたグラスランドチキンの胸肉を入れてやる。

 ファルコにも、大きくきった胸肉を咥えさせてやり、いつの間にか隣に並んだセルパンとプティラには、また生卵を出してやった。

「ええと、お前らは、まだ大丈夫か?」

 背後で転がって身繕いしているマックスとニニを振り返って聞いてやると、魔獣チームとブラックラプトルのデネブは、まだ食べなくても大丈夫だと言われた。

「そっか、じゃあ腹が減ったら早めに言ってくれよな。お前ら用の弁当を出してもらうからさ」

 笑ってそう言うと、マックスとシリウスが嬉しそうにワンと鳴いたよ。




「おお、朝からなんだか豪華じゃないか」

 俺のテントに集まって来たハスフェルの声に、皆も嬉しそうにしている。

 簡易オーブンの前には、すっかり存在を忘れていた屋台で買ったピザと、クーヘンが新店オープンの準備中に俺とレオに差し入れてくれたピザも、色々と並べられている。

「あ、クラブハウスサンドがもうこれだけなんだ。また作っておかないとな」

 マイカップにコーヒーを入れながらそう呟き、いつものタマゴサンドを取る。

 鶏ハムサラダとこれがあれば、俺は充分だよ。

 オンハルトの爺さんとエリゴール、それからシルヴァとグレイの四人は、何故だかピザに大喜びしている。

 どうやら、自分で焼くのが面白かったみたいで、見ていると、鶏ハムやチーズ、それから茹で野菜を勝手に追加でトッピングして、マイオリジナルピザを作ってたよ。

 朝から楽しそうで、俺も嬉しいよ。



 生地からあふれそうになったすごいボリュームのピザを焼いては取り出し、その度に大喜びして食べている。

 子供か、お前らは。

 ってか、毎回思うが朝からよく食うな。

 鶏ハムサラダを食べながら感心して見ていると、いつものお皿を取り出したシャムエル様が、俺の右手に尻尾を叩きつけながら、机の上で最近のお気に入りの新味見ダンスを踊り始めた。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみっ!」

 片足で見事に回転して、キメのポーズも見事に決まる。

 なんだか、このダンスもどんどん進化してるぞ、おい。

「あはは、良い良い。格好良いよ」

 笑って拍手してやると、ドヤ顔になった。はいはい。

「シャムエル様は、いつものタマゴサンドだな」

 いつものように、タマゴサンドの真ん中部分を切ってやり、鶏ハムサラダも少し取り分けて一緒に盛り付けてやる。

「飲み物は、ホットコーヒーな」

 これもいつもの盃にスプーンですくって入れてやる。うん、この入れ方が一番こぼさない入れ方だって、もう学習したよ。

 賑やかに大喜びしながら食べるシルヴァ達を笑って眺めながら、俺達もそれぞれの朝飯を楽しんだ。



「じゃあ少し休んだら出発だな。出来ればそろそろ地上へ出たいです!」

「って言ってるけど、どうする?」

 最後のコーヒーを飲み終えて、尻尾の身繕いに余念が無いシャムエル様が、俺のヘタレ発言に、鼻で笑ってハスフェル達を振り返った。

「まあ、ここまで災難続きだと、冗談抜きで、本気で気の毒になって来たからな。もう、マッピングだけやって出るとするか。出てくる恐竜の傾向も分かったし。もしまた来たければ、その時は各自で好きにする事にしよう」

「そうだな。ベリーのおかげで、ここに出る恐竜の事はもうかなり詳しく聞けたからな」

 隣でギイも笑ってそんな事言ってる。

「じゃあ、これ以上ケンが酷い目に合わないように、早く地上へ出る事にしましょうか」

 笑ったシルヴァの言葉に、ピザチームとレオも笑いながら頷いている。

 おお、残っていた相当あったはずのピザが、完全に駆逐されたぞ。

 頭の中で、後の作り置きに何があったか必死で思い出しながら、俺は残りのコーヒーを飲み干した。



「じゃあ、片付けるとしますか」

 立ち上がって思いっきり伸びをして、汚れた食器を手早く片付けていく。

 こう言うちょっとした片付けも、皆が手伝ってくれるようになってからは、あっという間に片付けられるようになったよ。ありがたやありがたや。

 その後は、言った通りに少し回り道をした程度で、いくつかに広場には恐竜達がいたんだが、特に無理してジェム集めをする事もなく、そのままスルーしてサクサクと進んで行った。



 一度だけ、はぐれと呼ばれる、地下洞窟で一番怖い通路まで入り込んだ恐竜のシルバーラプトルと鉢合わせしたんだが、先頭は何しろこのパーティー最強を誇る金銀コンビである。

 シルバーラプトルが瞬殺された事は、言うまでも無い。

 二階層まで上がって来たところで、シルヴァ達がお腹が空いたと騒ぎ出したので、近くにあったグリーンスポットで昼食を食べようと言う事になった。

 時間の間隔はよく分からないけど、彼女達の腹時計はかなり正確らしい。

 うん、さすがだね。

 ここでも、手早く食べられる作り置きを出してやる。

 俺が食べたかったから、おにぎりの残りを出したら、これも駆逐されました。それから、思いつきで作ってあったすき焼き風丼、ご飯の横に並べておいたら、これも見事に駆逐されました。

「おお、あれだけ炊いたご飯も、残りが少なくなって来たな。地上に戻ったら、もう一度料理の仕込みをやらないと駄目みたいだぞ」

 苦笑いしながら手早く後片付けを済ませて机と椅子も片付ける。

「じゃあ行くか。あれ、なんだこれ?」

 足元に落ちている、硬いものを踏んでしまい、俺は慌てて足を避けて覗き込んだ。

「あれ? これってどこかで見た事があるぞ?」

 拾ったそれは、尖った筒状になっていて、刺っぽい。

「あ、これって……ステゴザウルスの尻尾のとげの抜けた鞘じゃん。おお、聞いてたけど、地下洞窟で初めて拾ったぞ」

 手にした60センチはありそうな、余裕剣サイズのそれを見ながら呟くと、オンハルトの爺さんが、それを見て側に来た。

「おお、これは良い物を拾ったな。拾った辺りを見てみろ、一本って事は無いだろうから、まだ幾つかあると思うぞ」


 言われた俺は、慌ててその周りを探した。

「あ、もう一本発見! ああ、ここにもある!」

 結局、あと三本発見したので、合計四本もの刺の鞘が見つかった。

「こっちには背板の剥がれたのも有るわよ。恐らくこの辺りで転がって地面に尻尾や背板を擦り付けたのね」

 確かに、俺が拾った辺りはちょっと地面が歪に抉れている。

「ああ、この地下迷宮で良い物を拾ったよ。確かこれは高く売れるって聞いたもんな。よし、これもバイゼンへ行ったら売ってみよう」

 アクアに預かってもらいながら、俺はちょっと気分が上昇するのを感じていた。



 さあ、地上まであと一息だぞ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 無自覚パワハラ上司と無能な部下一行だと思えば、微妙にしっくりくる。洞窟に無理やり連れてきて、死にかけてるのに笑うし、飯催促するし、従魔は主人が何度も死にかけてるのに平気で狩りに行くし・・・。…
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