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次は何がいるかな?

 食事を終えた俺達は、手早くテントを畳みその場を撤収した。

 巨大なトリケラトプスの姿が遠くに見えるが、幸いこっちへ向かってくる奴はいなさそうで安心したよ。

 好きな恐竜だったけど、今回のアレは……正直、ちょっとトラウマになりそうなレベルだよ。うん、しばらくトリケラトプスは要らないです。



「そう言えば、ここでのジェムは集まったのか?」

 また俺と女性二人を真ん中にして通路に入っていったのだが、不意に思い出して前を歩くレオとエリゴールに話しかけた。

「ああ、かなり集まったよ。ここの恐竜はどれも個体が大きくてね。普通種でも、それこそ東アポンにある洞窟の恐竜の亜種より大きいんだよね」

「沢山集まってるから、外へ出てから改めて渡すよ」

 満面の笑みの二人が振り返ってそんな恐ろしい事を言うもんだから、俺はまた虚無の目になったよ。

 もう、ジェムは一生使っても使い切れないくらい有るって……。

 うん、外へ出たらクーヘンの所へ行く予定だから、絶対押し付けてやる。こっそり倉庫に置いてこよう。

 テントの横に積み上がっていた、あの巨大過ぎるジェムを思い出してちょっと笑ったよ。

 はっきり言って、一個でも嫌がらせレベルだろ。あれは。

「あ、でもアレは売らないって言ってたもんな。どう思う? あの巨大なブロントサウルスだっけ、あれってクーヘンに少しでも引き取ってもらうべき?」

 定位置の俺の右肩に座ってるシャムエル様に聞いてみると、顔を上げて首を振った。

「ええとね。あれは、出来たら手元に置いておいてくれるかな。大きなジェムは、別にあれじゃ無くても他にも有るでしょう?」

「あ、そうなんだ。了解。じゃあ、クーヘンには他のジェムを押し付ける事にするよ」

「うん。それでお願い」

 俺を見て真剣な声でそう言われてしまい、何となく頷いたものの、妙に気になったよ。

 何故、あの巨大なジェムを置いておけと言うのだろう?

 正直言ってかなり気になったけど、まあ、神様の言う事だもんな。

 第一、いつも一緒にいるけど、こんな風に俺に直接何かをしろって言われたのって、考えてみたら一番最初の頃以来だよな。ここは大人しく聞いておくべきだろう。

 まあ、そんな感じで無理やり自分を納得させていると、一番先頭を歩いていたハスフェル達が不意に立ち止まった。



 全員、即座に黙る。



 少し先に、通路が切れていて広い空間が見える。どうやら、広場に到着したみたいだ。

「ふむ、どうやら肉食恐竜がいるようだな。これはさすがにケンは無理だろう。さて、どうするかな」

 ハスフェルとギイが顔を寄せて思いっきり物騒な事を相談してる。

 ってか、肉食恐竜と聞いた瞬間、俺はもう必死になって首を振ったよ。

 この洞窟のレベルで、肉食恐竜って……聞いただけで、俺には絶対無理クエっす。

「ちょっと見てくる。ここで待っててくれ」

 ギイがそう言って、平然と広場へ入っていったよ。ランタンも持たずに行ったけど、大丈夫なのか?

 目の前に座ったニニに無意識でしがみつきながら、無言でビビっていると、すぐに戻ってきた。

 待て。何故に、満面の笑み?



「良かったな。デカい肉食恐竜は一頭だけだ。後はケンでも大丈夫そうだぞ」



「待て。一頭だけって、それこそ何がいるんだよ。逆にそっちが怖いんですけど!」

 それって、もしかして……絶対王者じゃないのかよ。

 本気でビビる俺に、ハスフェルが嬉しそうに笑いながらとんでもない事を言ってくれた。

「大丈夫だ。あれはアロサウルス。一匹だけだからこのメンバーならすぐに片付く。後はディメトロドンだから、お前でも大丈夫だろう?」

「ディ……ディメトロドン?」

 どんな恐竜か思い出せなくて、恐る恐る通路から首だけ出して覗いてみると、どう見ても肉食恐竜の巨大なシルエットは確かに一匹だけで、後は百枚皿のあちこちに、大きな扇状の背板を持った四つ足の恐竜が散らばっているのが見えた。

「ああ、あれか。図鑑で見た事があるな。確か、あれって正確には恐竜じゃ無いって聞いたけど、まあ気にしないのかな?」

 そこまで思い出して、俺は思いっきり首を振った。

「待った! 確かに、アロサウルスを見た後で見たら大した事ないと思いそうになるけど、あれだって立派な肉食だよ! 全然大丈夫じゃねえよ。簡単に大丈夫なんて言うなって!」

「無理か?」

「絶対無理ー!」

 もうこの台詞、この洞窟に来てから何回叫んでるんだろう……。

 そう考えてちょっと遠い目になる俺を置いて、ハスフェル達は顔を寄せて相談をしている。



「確か、ベリーに聞いた話では、この先にパラサウロロフスの巣があるらしいから、ケンにはそこで頑張ってもらおう。それならここでは、飯の支度か」

「だな、まあこの洞窟では、本当に冗談抜きで嫌われてるんじゃないかと本気で思うレベルに酷い目に遭ってるからな。ここは無理は禁物だろう」



 パラサウロロフス? 聞いた事があるな。何だっけ……。

 あ、あれか。頭に角みたいな突起が出てる恐竜だ、あれなら確かに草食だ。

 まだ、確かにそっちの方がマシです!



 相談を終えて振り返ったハスフェルが、小さくため息を吐いて入り口横にある小さな泉を指差した。

「それなら、ここに真水が湧いてる泉があるから、お前はここでまた料理をしててくれ。俺達はちょっとジェム集めをして来るよ」

 肉食恐竜を相手に、そう簡単に行ってくると言える君達を尊敬するよ。

 遠い目になった俺は……間違ってないよな?




 泉の周りに、レオとエリゴールが前回よりも二回り近く太い大きな槍を取り出して、またしても地面に突き刺し始めた。

 いつの間にか、レオの右肩にはシャムエル様が乗っていて、彼が槍を地面に突き刺す度にシャムエル様がレオの腕に手を添えているのが見えた。エリゴールは取り出した槍を横でレオに一本ずつ渡している。

 多分、一緒に結界を張ってくれているんだろう。

 感謝して一礼して、俺はアクアゴールドを見た、そして、慌ててマックスを振り返った。

「お前らは、今回は行くなよ。相手は肉食だからな」

 まず、モモンガのアヴィを俺の左腕にしがみつかせて、マックスの背にいたラパンとコニーも抱き上げてやる。

「ええ、大丈夫だよ」

 二匹揃って予想通りの事を言うけど、ここは絶対駄目!

「お願いだからやめてください。まじで駄目だって!」

 もふもふを抱きしめてそう言ってやると、二匹はこれみよがしのため息を吐いて、二匹揃って頬擦りしてくれた。

「じゃあ、ご主人が怖くないように、私達が一緒にいてあげるね」

「おお、是非お願いします」

 笑ってそう言い、改めて一匹ずつ両手で揉むようにしてにぎにぎしてやる。

「ああ堪らないこの柔らかさ……本当にお前ら最高かよ」

 そのまま頬擦りして、小さなもふもふを満喫したよ。




 結局、俺の所にはアクアゴールドとモモンガのアヴィ、それからラパンとコニーのウサギコンビが留守番で居残ってくれる事になり、それ以外は当然のようにハスフェル達と一緒に百枚皿に向かって行ったよ。

「皆、気をつけてな!」

 大きな声でそう言ってやると、マックスとニニが揃って振り返った。マックスは尻尾大回転状態だし、ニニは声の無いニャーをしてくれたよ。

 巨大化したソレイユとフォールも得意気に尻尾を立てて大丈夫アピールしてるし、セルパンとプティラ、それからファルコも、尻尾を振ったり羽ばたいたりして大丈夫アピールしてくれている。

 俺は笑って手を振り皆を見送ってから、今いる安全地帯を見回した。

「さてと、ここも足元は濡れてるから、椅子はいるな。じゃあサクラ、まずは机大小と椅子も出してくれるか。さて、じゃあ次のリクエストのグラスランドチキンのレモンバター焼きか。だけど、もっとボリュームの有るのが良いかな?」

 頭の中で段取りを考えながら、俺はメニューを必死で考えた。


 さあ、ジェム集めはハスフェル達に任せて、俺は頑張って料理をするぞ!

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