ふわとろオムライスは大好評!
まずは野菜スープと味噌汁の鍋を取り出して横にお椀を置いておく。これは好きな方を自分でよそってもらう。
並べたお皿に、適当に野菜を盛り合わせて切ったトマトも並べる。これはレオがやってくれた。
「ええと、チキンライスとビーフバターライスのどっちが良い?」
そう言うと、フライパンに山盛りにしてあったケチャップチキンライスと、ビーフバターライスを並べて見せた。
「こっちが、グラスランドチキンの胸肉が入ってるケチャップ味で、こっちはステーキに使ってる牛肉が入ってるバターライスな」
「はい、ケチャップライスが良いです!」
シルヴァが目を輝かせて手を上げて、グレイとオンハルトの爺さんとレオも手を上げてる。
「俺はバターライスが良いな」
ハスフェルの声に、ギイとエリゴールが手を上げる。
「了解。じゃあケチャップライスが四人とバターライスが三人だな」
五つ並べた皿に、お椀に押し込んだケチャップライスを型抜きして盛り付ける。一つは俺用だ。
三つ並べたお皿には、同じくお椀に押し込んで型抜きしたバターライスを盛り付ける。
それから、取り出したのは卵三つを使って作った、ふわふわ半熟オムレツだ。
念の為シャムエル様に確認したところ、この世界では半熟卵は普通に食べられているらしい。何でもちょっとでも火を通していれば大丈夫なんだってさ。ここ重要だよな。サルモネラ菌怖い。
盛り付けたライスの上に、ふわとろオムレツを乗せてナイフで軽く切り目を入れてやる。
「何それー!美味しそう!」
予想通り、女子二人が食いついてきた。
そう、ふわとろオムレツに切り目を入れたことにより、一気に割れてライスの上を半熟卵が流れて広がったのだ。
これ、実はバイトしていた時にとんかつ屋の店長がノリで始めた一品で、このふわとろオムライスが一時期店の大人気メニューになってしまい、トンカツ屋なのにこればっかり注文が来たんだよな。で、手が足りなくなって俺も厨房でオムレツ作ってたので、これは上手く作れるんだ。ちょっとドヤ顔。
「ソースは、ビーフシチューとホワイトソースがあるけど、どっちが良い?」
「ええ! そんなの選べないわ!」
「んな事言ったって……」
「二色盛りでお願いします!」
全員が声を揃えて答える。何そのシンクロ率。
苦笑いをして頷いた俺は、全部のオムレツの右側に温めたビーフシチュー、左側に同じく温めたホワイトソースをたっぷりとかけてやった。
「はいどうぞ。お代わりがいる人は言ってくれよな」
「ありがとう。うわあ、美味しそう!」
歓声を上げたシルヴァが、真っ先に目を輝かせて皿を受け取る。
全員に行き渡ったのを見て、俺も自分の味噌汁をよそって席に着いた。
残った材料は、冷めないうちにいったんサクラが全部まとめて飲み込んでくれた。
「うん、久々に作ったけど中々上手く出来たな」
ふわとろ半熟オムレツに、ソースが絡まって美味しい。我ながら上出来だ。
「グラスランドチキン、やっぱり美味いなあ」
自分の仕事に満足してのんびり食べていると、俺の右手のすぐ横で、お皿を持ったシャムエル様がいつものもふもふダンスを踊り始めた。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜じっみ!」
クリっと回ってポーズを決めたシャムエル様に、俺だけでなく、隣で食べていたハスフェルとギイまでが揃って吹き出して咽せたよ。
「何だよ、その決めポーズは」
もふもふ尻尾を突っついてやり、差し出されたお皿に、ふわとろオムレツのホワイトソースの掛かったところと、ビーフシチューのかかったところをそれぞれスプーンでたっぷりとすくって入れてやる。
「スープは味噌汁で良いか?」
笑顔で盃を差し出すので、俺の味噌汁を同じくスプーンですくって入れてやる。
オムライスの横に、葉物のサラダもちょっとだけ小さくちぎって取り分けてやれば完成だ。
「はいどうぞ、二色盛りふわとろオムライスだよ。召し上がれ」
「わーい、新作メニューだ!」
嬉しそうにそう言うと、やっぱり顔面からオムライスにダイブしていった。
「美味しい!何これ美味しいよ!」
ソースまみれの顔を上げて、満面の笑みでそう言ってくれる。
気に入ってくれて何よりだね。俺もふわとろオムライスって好きなんだよ。
まあ、遠慮無く好きに食ってくれ。
笑いながら、シャムエル様の食べる様子を眺めて、サラダを食べる。
半分くらいのオムライスを食べ終えた頃、早くももう食べ終えたシルヴァとグレイ、レオの三人が空になったお皿を持って俺の前に並んだ。
「お代わりお願いします!」
揃って神妙に頭を下げるのを見て、俺は笑ってスプーンを置いた。
「今度は何ライス?」
サクラにケチャップライスとバターライスを出してもらい、型取り用のお椀も取り出す。
それぞれ、さっきと逆のライスを入れてやり、二個目のオムレツを乗せる、一食で卵六個は食い過ぎだと思うけどなあ……。
まあ、燃費悪いって言ってたもんな。
って事で、気にせず豪快にオムレツに切り目を入れる。またソースは二色盛りだ。準備している間に、ハスフェル達も並んだので、結局俺以外の全員が二皿ずつ食べたよ。
どうやら、オムライスも気に入ってもらえたみたいなので、山盛り作ったケチャップライスとバターライスもかなり減った。うん、これもまた作っておこう。
しかし相変わらず食う量がおかしい。一皿でも余裕で大盛りサイズにしたんだけどなあ……。
二杯目を喜んで食べる彼らを見ながら、俺は残りのオムライスを平らげたよ。
うん、俺はこれで充分です。
「あれ、そういえばベリー達は?」
食後のお茶を入れながら周りを見たが、ベリーとフランマの姿が見当たらない。
「ああ、もうケンは大丈夫だろうからって先に行ったよ。どうやら、もう一回最下層の下に入りたいらしい」
「俺は絶対行かないからな!」
力一杯叫んだら、何故だか全員が笑って頷いてくれた。
「まあ、今回はとりあえず普通に行ける最下層を目指す事にするよ」
苦笑いしたハスフェルにそう言われて、俺は必死になって頷いたのだった。
「お、またそろそろ出てきたな」
後片付けをしていると、立てた槍の向こうにまた巨大な恐竜達の姿がちらほらと見え始めた。
「この後はどうするんだ? 移動するなら机も片付けないと」
見える巨大な姿に若干ビビりながら聞くと、レオが突き立てていた槍を軽々と抜いた。
「じゃあ、もう少し広げるか。全員分のテントを設置出来るだけの場所がいるもんね」
そう言ってまた槍を取り出す彼らを見た俺は、無言で一番壁に近い場所を即行でキープしたよ。
結局、一番奥に張った俺のテントを囲むように全員がテントを張り、その日はここで休む事になった。
「じゃあ、よろしくお願いします!」
平べったく伸びたスライム達が、全員揃ってくっ付いて、巨大なウォーターベッドを作ってくれたので、ニニ達も全員その上で休む事にした。
「ありがとうな、お前らはこのままで休めてるのか?」
転がったニニの横に座って丁度足の下にいたアクアとベータを撫でてやる。
「大丈夫だよ。くっ付いたままでも普通に寝られるからね」
アクアの元気な声に、ベッド全体がプルプル震えて答える。
「何これ、面白い」
ニニが、大喜びで足の下のスライムを叩くのを見て、俺は慌てて止めたよ。仲間で遊んじゃ駄目です!
「じゃあおやすみ。ううん、やっぱりここが良いよ」
ファルコとプティラを気が済むまで撫でくりまわしてから、俺はニニの腹毛に潜り込んだ。すぐにマックスがすぐ隣に転がって俺を挟んでくれた。
背中側に大きくなったウサギコンビがくっ付く。そして、胸元には猫サイズのタロンが当然のように潜り込んできた。
「タロンずるい!、私達もご主人と一緒に寝たいのに!」
ソレイユとフォールが小さくなって俺の顔の横に飛び上がって、顔の横と胸元でそれぞれくっ付いて丸くなる。
「じゃあ皆で一緒に寝ような」
順番に全員を撫でてやり、最後に首輪から離れて俺の側まで来たセルパンを撫でてやる。
「ありがとうな。おかげで皆と会えたよ」
「あんまりお役に立てませんでしたけどね。ご主人が無事で良かったです」
目を細めてそう言うと、スルスルとニニの首輪に戻って行った。
「おやすみ……」
小さく呟いた俺は、いつものもふもふパラダイス空間に包まれて、気持ち良く眠りの国へ垂直落下して行ったのだった。