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地下迷宮の下

ベリーが見つけた、アンモナイトのサイズを訂正しました。




 ベリーを先頭に、俺達は通路を進んでいる。

 驚いた事に、この洞窟はランタンを持っていなくても大丈夫なのだ。

 壁一面に、例のヒカリゴケが張り付くようにして広がっていて、ほんのりとした光を放っているおかげで、夜目の利く俺達だったらランタンが無くても充分な明るさなのだから、驚きだよ。



「このヒカリゴケは三階層の辺りから一気に増えて広がっていて、もうそこから先は、夜目の利く我々なら明かりは必要有りませんよ」

「まあ、確かにランタンを持たなくても良いのは楽で良いけどさ。急に広い場所へ出たら、さすがに見えなくて危険じゃないか?」

 不安気な俺の言葉に、ベリーは苦笑いしている。

「貴方は本当に……まあ、いざとなったら私が火の術で光源を確保してあげますからご心配無く」

 ベリーの頼もしい言葉に、俺は笑って頷いた。



 頼れる仲間が増えたおかげで、ようやく少しは余裕を持って周りを見回す事が出来る様になった。

「へえ、マッピングの能力のおかげで、自分の現在位置が大まかにだけど分かるぞ。これってすげえ便利な能力だな」

 ベリーがいるおかげで彼のマップを共有出来ているので、今の俺の頭の中には、この地下迷宮の完全な立体地図がある。

 現在位置周辺はかなり詳細に分かるんだけど、それ以外は割とザックリだ。まあ、だけど情報としてはそれで充分だ。

「さっきも思ったんだけど、ハスフェル達とはずいぶんと離れてるんだな」

 周辺にいるジェムモンスターの気配と共に、ハスフェル達が何処にいるのかも分かって安心出来たのだが、彼らはまだ一つ上の、四階層の遥か遠い端にいる。

 合流するまで、これではまだしばらくかかりそうだ。



「この地下迷宮は、先程のグリーンスポットの上のように、あちこちで大きな崩落が起こって、数階層に渡る広い空間が出来ている箇所が全部で四箇所も有るんです。なので、その周辺では下へ降りるのに崩落箇所を大回りして行かなければならないんですよ。彼らも下へ降りるのに苦労しているようですね」

 その説明に俺は何となく、地元にあった大型ショッピングモールの真ん中部分が吹き抜けになった建物を思い出した。

 確かに、エレベーターやエスカレーターがすぐ近くになかったりすると、下の階の見えている店へ行くのに、ものすごく大回りしなければならない事があったな。



「成る程、所々にあるこの広い空間はそう言う訳だったんだ。何で、数階層にも渡るこんなに広い場所があるのかと不思議に思ってたんだよ」

 感心したように地図を確認しながら俺が呟くと、ベリーは笑って足元を指で示した。

「人の足で行ける最下層は八階層までなんですけれど、それよりも下に、実はまだ後八階層分の空間があるんですよ」

 驚きに目を見開く俺に、ベリーは笑って首を竦めた。

「ただし、そこは完全に水没していて空気の有る場所が全く有りません。なのでそこは、水棲恐竜や水棲生物達の楽園になっていましたね」

「へえ、そりゃあ凄い。水棲恐竜って事は、さっきの首長竜とか……あ、モササウルスとかか。うわあそんなの絶対無理だよ。怖いって!」

 慌てる俺を見て、ベリーは笑っている。

「まあ、さすがに八階層より下に、人間である貴方達に行けとは言いませんよ」


 何やら含んだ言い方に顔を上げる。


 満面の笑みを浮かべたベリーを見て、俺はその笑みの意味を考えて質問した。

「まさかとは思うけど……行ったの?」

 すると、ベリーはもうこれ以上無いくらいの笑みで大きく頷いた。

「よくぞ聞いてくれました。いやあ、素晴らしい世界でしたよ。私は風の術の応用で、空気の球を作ってそれに入って進んだんですが、とにかく出てくる恐竜がどれも大きくて驚きましたよ。久々に、思いっきり術を使わせて頂きました。恐らく市場にはまだ出た事の無い世界初のジェムもかなりあると思いますので、外に出たらまとめて確認してからお渡ししますね」

 嬉々としてそんなとんでもない事を言うベリーに、俺は叫んだ。

「冗談じゃ無いって! そんなジェム、何処で売るんだよ! あ、でも水棲生物って事は、アンモナイトとかシーラカンスとか、カブトガニみたいなのもいるのか。それならちょっと見てみたいかも」

 思わず手を打ってそう呟く。

 恐竜大好き少年だった俺的には、シーラカンスとアンモナイトは、どちらも生で見てみたい古代生物なのだ。

「おや、見たかったですか?それなら、何匹か生け捕りにして来ればよかったですね」

 またしても簡単にそんな恐ろしい事を言われてしまい、俺は慌てて首を振った。

「いやいや、そんな無茶は言わないって。第一生け捕ってきた所で、どうしようも無いよ。水槽も無いし、飼育方法だって分からないじゃないか」

「アクアちゃん達がいるじゃありませんか。預けておけば良いのではありませんか?」

 平然と言われて、俺のすぐ横をパタパタと飛んでいるアクアゴールドを見る。

「いや、アクア達の収納の能力は、生き物は入れられないって聞いたぞ」

「ああ、そうなんですね。では仕方がありませんね」

 何か言いたげだったが、ベリーはちらりとシャムエル様を見ただけで、それ以上特に何も言わずに笑って肩を竦めた。



「今、貴方が言ったアンモナイトとシーラカンスはジェムモンスターでしたので、かなり倒して来ましたよ。シーラカンスは残念ながら素材はありませんでしたが、アンモナイトの大型の亜種は、見事な巻貝を残してくれましたので、相当数確保してありますよ」

 そう言って取り出してくれたのは、それこそ直径1メートル近くはありそうな、見事な平べったい巻貝の貝殻だった。

 しかも、表面はややゴツゴツした感じで白っぽい岩のような感じなのだが、貝の内側部分は、全面に渡って見事に虹色の真珠のような光沢を放っていたのだ。

「へえ、これって鮑の貝殻の内側みたいだな。これは外側部分をもう少し綺麗に磨けば、置物として売れそうだな」

 貝殻の中を覗き込みながらそう呟くと、ベリーは笑顔で頷いている。

「ああ、確かに良いかもしれませんね。王都へ持って行けば、きっと高値が付きますよ」

「まだ王都へ行くのは先だから、これはクーヘンの店で置いてもらおう」

「貝殻の大きさは、かなり個体差がありましたね。先程のは、少し大きめくらいですよ」

 その言葉に、俺は返そうとしたその貝殻をもう一度見た。

「はあ? 今何つった? 俺が使ってる小さい方の机よりも大きいぞ、これ。これが少し大きめ?」

「ええ、私が集めた中で一番大きかった貝殻は……ちょっとここでは出せないですね」

 その言葉に、俺は持っていたアンモナイトの貝殻を落っことしそうになって、慌てて掴み直した。

「ここでは出せないって、ええとつまり……」

「一番大きな貝殻は、直径20メルトにちょっと足りないくらいだったと思いますよ。さすがにあれが出たときには私もちょっと張り切ってしまいましたからね」


 それを聞いて、虚無の目になったよ。

 市場にまだ出た事の無い新しい恐竜のジェムだけでなく、直径20メートル越えのアンモナイトの貝殻……しかも相当数集めたって言ってたし。



 その場で気絶しなかった俺を誰か褒めてくれー!

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