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地下迷宮攻略前夜?

 キャンプ道具を撤収して、またしても大鷲達のお世話になり転移の扉まで移動した俺達は、そのままカルーシュ山脈の麓にある七番の転移の扉まで飛んだ。


 しかし、何度見てもやっぱりここは、そのまんまエレベーターホールで笑っちゃうよ。

 そこで、剣を差して革製の防具を身に付けて従魔達を連れている自分の違和感たるやもう……。



 ここへ来る度に笑いを堪えられない俺を、ハスフェル達が不思議そうに見ている。

「ごめんごめん。気にしないでくれ。ちょっとした思い出し笑いだからさ」

 笑いながら顔の前で手を振る俺に、シャムエル様が胸を張った。

「この転移の扉を考えた時、ケンの世界にある転移の扉を参考にしたんだよね。あそこは本当に色んなカラクリがあって、見ているだけでも面白いんだ」

「ほう、お前のいた世界にも、転移の扉があったのか」

 オンハルトの爺さんの感心したような言葉に、俺は笑い過ぎて出た涙を拭いながら首を振った。

「違う違う。転移の扉とは全く違うって。俺のいた世界では、何十階っていう背の高い建物が沢山あってね、そんな中で上の階へいちいち階段で上がるのは大変だろう? だから、大きな金属製のロープで吊り下げた箱型の乗り物をその建物の中で上下させていたんだ。それぞれの階で扉が開くから、人や荷物が乗ったり降りたりする訳。分かる?」

「つまり行けるのは、その建物の中の他の階だけか?」

「もちろんそうだよ」

 感心する一同を見て、また俺が笑う。



「ええ、そうなの? じゃあ、これとは違うんだね」

 俺の説明に驚いたシャムエル様の声に、俺はちょっと考えて逆に質問した。

「あれ? 俺が元々いた世界は、シャムエル様が作った世界じゃないのか?」

 創造主様なんだから、てっきりそうだと思ったのだが、俺の質問にシャムエル様は照れたように首を振った。

「あの世界ほど完璧な世界を作るのは、今の私には絶対に無理だね。多分、まだあと数万年は修行して、ようやく作れる……かな?」



 その言葉に、俺は思わず無言でシャムエル様を見た。



「ええと……つまり、創造主様はシャムエル様の他にもいる訳?」

 すると、誤魔化すようにシャムエル様は頬を膨らませて、いきなりくるりと回って俺に背を向けた。そして首だけ振り返る。なにそのジト目は。

「ケン、それは聞いちゃいけない質問だよ。父上の事なんて、私は絶対話さないからね。そんな事したら、父上は呼ばれたと思って、大喜びでこの世界へ乱入して来ちゃうからね。せっかく私が丹精込めて構築した世界なのに、父上が来たら乗っ取られちゃうよ」

 神様軍団も、今の言葉に揃って頷いている。



 おう、まさかの創造主様に父上がいたとは……今の話を全部まとめると、俺のいた世界を作ったのはその父上って事だよな。

 しかも、あの神様軍団の反応を見るに、なにやら問題のありそうなお方の模様……。

 しばし考えた俺は無言で首を振り、全部まとめて遥か遠くへ放り投げた。

 どう考えてもこれは、人間である俺ごときが聞いちゃいけない話だな。うん、今のは全部聞かなかった事にしよう。



「とにかく地上へ上がろう。それで今夜はそこでキャンプするんだろう?」

 エレベーターホールもどきの真ん中で揃って立ったまま話をしていたので、気分を変えるようにそう言ってやると、明らかにホッとした様子のシャムエル様が大きく頷いた。

 それを見た皆も笑って頷き合い、順番にいつもの急な階段を登っていった。


 しかし毎回思うが、本当に急な階段だな。今まで手すりが無かった事に驚きだよ。

 そろそろ足が痛くなってきた頃、先頭を歩いていたハスフェルが目の前の扉を押し開いた。

 一気に視界が広がる。


 まだ暮れるには早い明るい空の下、俺たちが出てきた場所は森の中だった。

 俺達が飛び出してきた場所は、毎度お馴染み朽ちた祠で、足元の石畳が扉になっていたよ。

 祠の周りは、半径10メートルくらいの綺麗な円形に草地が広がっている。そこだけ、見事に短い草が生えているだけのぽっかりと広い空間になっていた。

 その時、大きな羽音と共に大鷲達が舞い降りてきた。

「地下迷宮に行くのだろう? 今なら裂け目のすぐ前まで送ってやれるぞ」

 先頭の一際大きな大鷲がそう言い、いつものように俺達は巨大化したファルコに、神様軍団と従魔達はそれぞれの大鷲の背に乗せてもらって移動した。


 ちなみに、自分でしがみつく事が出来ない馬達は、何と大鷲が獲物を持つかのように、背中からあの大きな足で文字通り鷲掴みして飛んだのだ。馬達も暴れる事なく大人しく運ばれている。

 始めは驚いたけど、全く傷一つつけずに無事に目的地へ到着したのを見て、心底感心したよ。

「私だってあれくらい出来ますよ」

 毎回俺が大鷲達の見事な馬運びを見て感心していると、背後からファルコが拗ねたみたいにそう呟いている。

 それを聞き、笑ってファルコの首に抱きついて心ゆくまでもふもふを堪能した。

「そうだよな。ファルコにだって当然出来るよな。じゃあ、いざという時はよろしくな」

「ええ、任せてください。誰一人取りこぼしたりしませんからね」

 得意気なファルコの声に、俺は声を上げて笑った。

 ううん、しかしファルコの首の辺りのもふもふっぷりも大したもんだよ。

 この、羽毛の柔らかさって独特だよな。

 実は、子供の頃に友達が飼っていた超甘えん坊のセキセイインコを思い出して、密かに笑ったのは内緒な。



 大鷲達が運んで来てくれた場所は、確かに地下洞窟入口のすぐ側だった。

 ハスフェル達に言われて見に行って、完全に腰が引けた俺は間違ってないと思う。

 本当に、岩の隙間に出来た亀裂がそのまま地下洞窟の入り口になっていた。

 ハスフェル曰く、調べた限り、入り口はここだけで、入ってしばらくは一本道なのだが、例の暗黒竜と出くわした広い場所から、いくつかの枝道が出来ているらしい。

「まずは一番大きな道を進んでみよう。以前入った時に、かなりの部分はマッピングできているからな。今回は、出来ていない部分を通りながら深層部を目指すぞ」

「し、深層部まで行くんだ……」

「そりゃあそうだろう、これだけの顔触れで新規の地下迷宮に挑めるなんて、早々ある事ではないぞ。最深部まで行かずに何とする」

「俺的には、タッチアンドゴーで一回入って出てくれば、もうそれで充分なんですけど……」

 控えめな俺の提案は、ハスフェルに鼻で笑われて瞬時に却下されたよ。




「それじゃあ、まだ明るいし、もう入るのか?」

 もう少ししたら日が暮れ始めるだろう空を見上げて聞くと、ハスフェルは首を振った。

「夜は、地下にいるジェムモンスター達の活動が活発になるからな。少しでも安全を図るために夜明けと同時に入ろうと思う。なので、今夜はここで泊まるよ」

「確かに、そんな事を言ってたな。じゃあ、ここでテントを張れば良いのか?」

 周りを見渡しながらそう言うと、右肩にいたシャムエル様が俺の頬を叩いた。

「この先にある森の横には水場があるから、キャンプするならそこが良い場所だよ」

 シャムエル様が指差した場所は、丁度今いる草地と森の境界を流れる小川だった。言われてみるとそのすぐ横には、綺麗な水の湧く小さな泉が有る。

「へえ、確かに綺麗な水だな。じゃああそこで今夜は野営だな」

 頷いたハスフェルを見て、全員が水場の近くへ移動した。

 大鷲達はそれを見て飛び去っていったよ。手を振って大鷲達を見送り、日が暮れる前に各自がテントを取り出して手早く組み立てた。




「じゃあ、今夜は景気付けに肉を焼くぞ! レオ、手伝ってくれるか」

 各自が鍋セットを取り出して並べるので、野菜や付け合わせの入ったお皿を出しておく。

 ハスフェルが赤ワインを取り出すのを見て、俺は自分用に緑茶の入ったピッチャーを出しておいた。うん、今夜は飲むのはやめておこう。



 肉焼き用の強火力コンロを並べて、フライパンも取り出しながらそう言うと、レオだけでなく何故だか全員が手分けして食事の準備を始めてくれた。

 まあ、お陰で俺は肉をサクラに切ってもらって塩胡椒しただけで、あとはほとんど何もしなくて済んだよ。

 一体全体、これは何事だ?

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― 新着の感想 ―
こ、これは、シャムエル・パパ乱入のフラグですよね!?(;^ω^)面白そう。
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