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フランマの背中は危険だよね

 ぺしぺし……。

「う、うん……」

 ぺしぺしぺしぺし……。

「待ってってば……」



 ちっこい手が頬を叩く感触に、ふいに目を覚ました俺は内心で必死になって考えていた

 あれ? 何処だ? ここ? いつ街へ戻ったっけ? と。



「ええと……?」

 眠い目を擦ってなんとかして目を開いた時、飛び込んできたのはモフモフのピンクの海だった。

「……何だこれ? いつの間にこんな毛布買ったんだ?」

 ぼんやりとそう呟いた時、また頬を叩かれた。

「ええ! ちょっと待ってくれよ。ここ何処だよ?」

 起き上がった俺は、ようやく自分が何処にいるのかを理解した。


「あはは……いつの間に寝ちゃってたんだよ、俺……」


 目の前には呆れ顔のシャムエル様。そして、すっかり日が暮れて真っ暗になった森の端で、俺は、巨大化したフランマの背中に突っ伏して、抱きつくようにして熟睡していたのだ。

「そろそろ人目のある場所に出るから、良い加減に起きてくれないと困るんだけどね」

 ため息を吐いたシャムエル様にそう言われて周りを見渡すと、ニニと並んでこっちを見ているマックスと目が合った。

 マックスの困ったようなその視線に、俺はもう一度乾いた笑いを零した。

「あはは、ごめんごめん。フランマの背中があまりにも気持ちが良くて、つい寝ちゃったよ」

 誤魔化すようにそう言いながら、急いでフランマの背中から降りる。

 おお、手をついただけで、このもふもふよ……。

「ごめん、ちょっと危険すぎるから、いつもの大きさに戻ってくれるか」

 苦笑いする俺がそう言うと、フランマは一瞬でいつもの大きさに戻ってくれた。



「いきなり静かになるから、一体どうしたのかと思ったわよ。そんなに私の背中は気持ち良かった?」

 からかうようにそう言われて、俺は笑って小さくなったフランマを抱きしめた。

「最高級のホテルのベッドなんかより、はるかに寝心地が良いって」

 おう、このモフモフ……堪らんよ……。

 また意識をもっていかれそうになり、慌てて顔を上げる。

「いかんいかん。こんなことしてたら、このままここで夜明かししちゃうよ」

 笑ってそっとフランマを地面に下ろしてやり、鞍を乗せたままだったマックスに駆け寄る。



「ようやくのお目覚めか? 面白いからこのまま放って帰ろうかって話してたんだぞ」

 背後から掛けられた声に振り返ると、神様軍団が勢ぞろいして俺を見ていた。皆、笑っている。

「それは勘弁してくれよ。ってか、起こしてくれよ。薄情者」

 笑って言い返すと、またしても全員が声を上げて笑っている。

「いやあ、いきなり静かになったから本気で死んだかと思って心配したのに、慌てて駆け寄ったら熟睡してるんだからな。しかも、走るフランマの背中から落ちる様子も無い。それはそれで才能だよなって話していたんだぞ」

 笑いながら言うギイの言葉に、俺も笑うしかなかった。

 うん、座り心地は最高だったけど、巨大化したフランマの背中は、もの凄く危険だって覚えておこう。




 その後はマックスに乗せてもらい、出発して間も無く、街道が見えてきた。

「そういや腹減ったな。朝が遅かったから、よく考えたらそのまま何も食べてないんだ。帰ったら、すぐに飯だな」

 ふと思いついた呟きに全員から同意の声が上がり、俺は慌てて頷いたのだった。

「分かった、今夜は肉を焼こう」

 手を叩いて喜ぶ神様達に笑い返し、俺達は街道目指して一気にスピードを上げたのだった。




「さてと、それじゃあ今夜はステーキだな」

 宿泊所に戻り、全員がいつものように俺の部屋に集まる。

 台所の大きな机に、取り出した合計8台のコンロを並べる。その上にはフライパンも乗せていく。

 そう、ちょっと悩んだんだがどうせ使うものだし、コンロとフライパンも追加で大量購入したよ。当然ここには、砕いたブラウングラスホッパーのジェムが入れてある。肉焼き用の強火力のコンロだ。

 取り出したステーキ用の分厚い肉を軽く叩いて筋を切り、塩胡椒をしておく。

 レオがそれを見て、焼くのを手伝ってくれた。

 レオが肉を焼いてくれている間に、各自のお皿に付け合わせのフライドポテトと温野菜を並べておく。

 もう一つ取り出したコンロには、野菜スープを鍋に取り分けて温めておく。

 全員パンが良いらしいので、丸パンと食パンを取り出しておき、横には携帯オーブンも取り出して並べておく。それを見たハスフェル達がパンを焼き始めた。

 最近パンだけは、各自で焼いてもらうようにしている。それだけでも一手間減って楽になるからね。



 肉の焼ける香ばしい匂いが立ち込め、焼けた肉が取り分けられる。

 フライパンの油を集めて、摩り下ろした玉ねぎと生姜、それからみりんとバターと醤油でステーキソースをまとめて作る。

 これなら俺も一緒に食べられるからな。

 うん、しかし一人ちょっと手伝ってくれるだけでめっちゃ助かるんだよな。レオがいてくれて良かったよ。貴重な料理が出来る人材だね。有難や有難や。



「はいお待たせ。どうぞ」

 フライパンを置いて、そう言って俺も席に着く。

「ご苦労さん。まあ飲んでくれ」

 ハスフェルが出してくれた赤ワインで乾杯した。

 ちなみに、俺はいつものご飯だよ。

 ううん、やっぱりがっつり焼いた肉は良いね。こうなると、早く、グラスランドブラウンブルの熟成肉が食べたいよ。

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