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朝食と神様達からのお願い

 翌朝、いつものモーニングコールチームに起こされた俺は、大きな欠伸をしながらニニの腹毛の海から起き上がった。

「おはよう」

 喉を鳴らしながら顔を擦り寄せて来るニニとマックスを順番に撫でてやり、それから飛び付いてきたフランマとタロンを撫で回してやる。その後、他の従魔達もそれぞれ撫でてやる。


 よしよし、皆、今日も元気だな。



「あれ、ちょっと曇りか?」

 朝にしてはやや暗い。

 立ち上がってテントの垂れ幕を上げて空を見上げると、分厚い雲が広がる、どんよりと曇った空が広がっていた。

「これは雨が降るかもな。うーん。せめて、街へ戻るまでは降らないでほしいなあ」

 思わずそう呟き、ため息を吐いて曇った空を改めて見上げる。

「おはよう。今日は曇りだけど、雨は降らないわよ」

「おはよう。大丈夫だよ、雨は降らないわ」

「あ、おはようございます」

 俺の声にテントからグレイとシルヴァが出てきて、大きく伸びをしながらそう言ってくれた。

 俺の返事に笑顔で手を振ると、揃って腕を上にあげて、背筋を伸ばして大きく伸びをする。

 当然、胸を突き出す形になる。


 おう、砂時計体型は当然素晴らしいが、細身のささやかな胸も良いもんだな……。


「何見てるのかな?」

 ニンマリと笑いながら二人に顔を寄せられ、俺は慌てて空を見て誤魔化した。

「な、なんでもないです」

 急いでテントに戻り、面白そうに笑っている二人の声を聞きながら、机の上に大量のサンドイッチを色々取り出して並べた。

 はあ、落ち着け俺の心臓。ああ不整脈、不整脈……。



「おはよう。今日は一日曇りみたいだな」

 何度か深呼吸していると、ハスフェル達が揃ってテントに入ってきた。

 あ、コーヒー出してないや。

 慌てて飲み物を追加で出してやり、ベリーと草食チーム用には果物の箱を出してやる。タロンはニニの横で転がってるから、まだ要らないみたいだな。


 在庫を確認すると、大量に作っていたコーヒーの作り置きがもう少なくなっている。うん、やっぱり街へ戻ったら料理の仕込みをするべきだな。

 それぞれ好きにいくつも取るのを見ながら、俺はタマゴサンドとベーグルサンドを取って座った。

 シャムエル様が、すっかり自分専用にしてる小皿と盃を取り出して並べているのを見て笑った俺は、自分のタマゴサンドとベーグルサンドをナイフで切って小皿に置いてやった。

「はい、コーヒーもな」

 小さな盃に、マグカップからコーヒーを入れるのはちょっと難しい。

 机にこぼれたコーヒーは、サクラがあっと言う間に綺麗にしてくれた。



「思っていたんだが、本人ではなく従魔のスライムに能力を与えると言うのは、なかなか良い考えだな。それなら追加や修正も容易だ」

 感心したようなオンハルトの爺さんの言葉に、タマゴサンドを齧っていたシャムエル様は顔を上げた。

「そうなんだ。ケンにも視覚や聴覚、それに声に関しては能力の底上げをしてるんだけど、元々全く持たない能力を人に付与するのは色々と大変で面倒なんだよね。最初に彼を作った時に、どうしようか色々考えて出た結論が、常に側にいる従魔に持たせれば良いじゃん、って答えだったわけ。スライムは、特に修正が簡単で良いんだよね」

 得意気にそう言い、コーヒーを一口飲んでベーグルサンドを齧った。

「良いなあ、スライムちゃん可愛い」

「ねえ、可愛いよね」

 グレイとシルヴァが、二人して手を伸ばして机に上がっていたサクラを撫でている。

「俺達は、捕まえてもらったぞ」

 ドヤ顔のハスフェルとギイが、それぞれのスライムを抱いて見せている。

「ミストだよ」

 ハスフェルがそう言って抱き上げたスライムを皆に触らせている。

「俺のはリゲルだよ。可愛いぞ」

 ギイも得意気にそう言って抱き上げて撫でている。

 撫でられたスライム達も嬉しそうだ。

 それを見て顔を見合わせた神様達が、揃って俺を振り返った。

「私も欲しい!」

「私も私も!」

「俺も欲しい!」

 グレイとシルヴァだけでなく、レオの言葉に男性陣まで全員がそう言って手を上げて俺を見ている。

「ええと、別にテイムするのは構わないけど、大丈夫ですか? だって、その身体は一時的なものだって言ってませんでしたっけ?」


 どう言う原理かは分からないけど、確かあの身体は一時的なものだって言ってた。神様達の元の姿がどんなものかは分からないけど、そこはスライム達が生きていける世界なのか? 息が出来なくてお亡くなり、なんて駄目だぞ。

 かと言って、元の姿に戻る時に置いてけぼりにされるのはもっと可哀想だ。


「大丈夫よ。こっちの世界に繋がってる場所があるから、最終的にはスライムちゃん達にはそこで暮らしてもらう事になるわね」

 シルヴァの言葉に、食べ終わったシャムエル様も頷いている。

「大丈夫?」

「大丈夫だよ」

 まあそう言う事なら、喜んで捕まえてあげよう。

「じゃあ良いですよ。この辺りにスライムの生息地があれば、幾らでもテイムしてあげますよ」

 俺の答えに、神様軍団は大喜びしていた。


「それじゃあ、撤収して帰りにスライムの営巣地に寄って行こう、好きなだけテイムしてもらえ」

 ハスフェルの言葉に、皆が立ち上がった。

「ごちそうさん、美味かったよ」

 オンハルトの爺さんの言葉に、それぞれ皆も笑ってそう言い、それぞれのテントに戻って行った。手早くテントを畳み始める。



「なあ、神様って、自分でテイムは出来ないのか?」

「テイムする能力って、元々生まれ持った能力なんだよね。ケンを作った時に、君にそれがあるのに気付いたんだ。それでテイマーにしたんだよ。ケンは、向こうの世界でもマックスとニニちゃんを飼っていたんでしょう?」

 俺も立ち上がって机や椅子を片付けながら、首を傾げた。

「そうだよ。二匹は俺の大事な家族だった。だけど向こうでは、動物は誰でも飼えたぞ。まあもちろん、経済的な問題や、住んでいる家で飼えるかどうかって問題はあったけど、別に、飼う事自体には何の能力も要らなかったけどな」

「だけど、絶対に飼わない人もいたでしょう?」

 俺の肩に座ったシャムエル様に言われて、ちょっと考える。

「確かにそれはあったな。絶対生き物は苦手で飼えないって人もいたよ」

「ね、つまりそう言う事。ケンの元いた世界では、テイムの能力は表には出ないんだ。だけど、それを持っている人は身近に生き物を置きたがる。そうじゃない人は、絶対に身近には置かなかったわけ」

「へえ、その理論でいけば、俺の元いた世界はテイマーだらけになるぞ」

「そうそう。でもテイマーには誰でもはなれないって。この世界であっても、才能のある人でもテイマーになるのは稀だからね。大抵は、動物が好きって程度で終わるんだよ」

「成る程ね。動物に対して好きか嫌いかってのも一つの目安なんだ」

 テントの中を綺麗にした俺は、話をしながらアクアとサクラに手伝ってもらって、手早くテントをたたんでいった。

「ああ、そうだ。街へ戻ったら、修理してもらったテントを引き取って来ないとな」

 このテントの方が、正方形に近い形で住み心地が良い。

「こっちを普段使って、修理して貰った方は、予備で持っていても良いな」

 テントを固定する為に地面に打ち込んでいた(ペグ)を、アクアがあっと言う間に引き抜いてくれる。

 ロープを飲み込んでいたサクラが、まとめてそれを受け取ってこれも飲み込んでくれた。

 相変わらず、スライム達が有能すぎる。

 片付けが終わればもう、そこはすっかり綺麗になった草地が広がるだけだ。





「じゃあ、行くとするか」

 全員、あっと言う間にテントを片付けてそれぞれ繋いでいた馬に乗った。

 俺も定位置についた従魔達を見てから、マックスに飛び乗った。


 さてと、それじゃあ神様軍団の為にスライムをテイムしに行きますか。

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