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お疲れ様でした

「疲れたー!」

 ようやく祝勝会が終わり解放された俺達は、宿泊所へ戻って一息ついたところだ。


 豪華な祝勝会が終わった後、ウッディさんとフェルトさんは、二次会には行かず、教え子達と居酒屋で改めて祝勝会を開くのだと言って、嬉しそうに迎えに来た大勢の生徒達と一緒に帰っていった。


 クーヘンは、こちらも駆けつけて来たマーサさんやお兄さんと一緒に、商人ギルドの人や街で商売をしてる商人達と一緒に二次会に行ってしまった。

 だけどこれはまあ、二次会と言う名目での集まりだが、実際のところはクーヘンのお店の宣伝と言うか、営業活動みたいなものだ。

 何しろ、あの結晶化したジェムを見た商人ギルドのギルドマスターのアルバンさんが、ぜひ紹介したい王都の商人がいると言い出し、副ギルドマスターまでが、それなら他にも紹介したい人が今ならハンプールに来ていると言い出して、そのまま二次会になだれ込む事になったのだ。

 そんな顔ぶれなら俺達はいなくても良かろうと思い、一応挨拶だけはして、早々に二次会を後にしたのだった。

 疲れているから帰りたいと言うのも、良い言い訳になったみたいだ。


 一応、まだ人は多いからと、念の為職員の人が宿泊所まで付き添ってくれた。


 街は、まだまだ賑やかに飲んで騒いでいる人達であふれていて、俺達を見かけた人達から、またしても拍手大喝采を浴びたのだった。

 またしても、なかなか進めず、近いはずの宿泊所がはるかに遠かったよ。




「本当に疲れた! ああ、マックスもお疲れ様。しかし、あの最後の追い込みは、本当に凄かったな」

 笑って太い首に抱きつくと、得意げに胸を張って嬉しそうにワンと鳴いた。

「あはは、久し振りにお前の鳴き声を聞いたな」

「まあ、ちょっと最後は皆本気になりましたね。正直言って、ゴールはほぼ同時だったと思いますよ」

「だよな、俺も一番だって聞いても、すぐには信じられなかったもんな」

「でも、勝てて良かったですね」

「ああ、ありがとうな」

 頭を擦り寄せて来るニニにも抱きついてやり、それから大きく伸びをした。


「なんか、全部まとめてクーヘンに丸投げしたみたいで、ちょっと申し訳ないよな」

 俺の言葉に、一緒に部屋に入って来て寛いでいたハスフェルとギイも笑って頷いていた。


 祝勝会で商人ギルドのギルドマスターから言われたのが、広告宣伝活動についてだ。

 要するに、次の祭りまでの間、レースの勝利者が祭りの宣伝を行ったり、街の特産物の広告宣伝なんかを担当するらしい。

 だけど、俺達は冒険者で長くこの街にいる予定は無い。

 で、相談の結果、広告担当はクーヘンとウッディさんとフェルトさんに丸投げする事になった。

 俺達が冒険者だと言う事は街の人達も知っているから、まあ問題はないだろうという事で何とか話が収まったのだ。


「まあ、こうなったらクーヘンの店の開店を見たら、早々に逃げ出した方が良さそうだな」

 勝手に酒なんか取り出して飲みだしているのを見て、俺の分も出してもらった。

「確かに長居は無用って気がするよ。だけど、クーヘンの店の開店は絶対見ないとな。それなら明日は、一度狩りに行くか。頑張って走ってくれたもんな」

 床に転がるマックス達を見ながらそう呟くと、ハスフェルが酒を注ぎながら顔を上げた。

「ああそれと、今のうちにクーヘンに預けるジェムの整理もしておきたいな」

 氷とウイスキーの入ったグラスを軽く回しながらそう呟くと、ウイスキーの蓋をしながらハスフェルが振り返った。

「じゃあ、それは従魔達が狩りに行ってる間にすればよかろう。ああそれと、ニニ達が狩ってきたあの獲物も、狩りに出ている間にギルドに頼んで捌いてもらおう。他にも色々あるんだろう?」

「みたいだな。なあアクア。ええと、俺がもらって良い獲物って何があるんだ?」

「全部言う?」

「ああ、教えてくれるか」

 ツマミに出したチーズを食べながら頷くと、足元に来たアクアはちょっと伸び上がった。


「ええとね、ハイランドチキンが7匹、グラスランドチキンが109匹と亜種が25匹、あとは、グラスランドブラウンブルが128匹と亜種が25匹、グラスランドブラウンボアが159匹と亜種が31匹だよ」

 絶句する俺の後ろで、ハスフェルとギイは大喜びしている。

「やるなあ、グラスランドチキンはもちろんだが、後の二つも、早々お目にかかれない代物だぞ。それが100匹以上。面白すぎる」

「絶対、アルバン辺りに知られたら、売ってくれと叫ばれるぞ」

 ブルって事は……牛か。で、ボアって事はイノシシ。野生の牛肉と猪肉かよ、これはちょっと楽しみだぞ。

 だけど、確かにすごい量だ。

 しかも貴重な獲物らしいから、捌くのを頼んだら確かに売ってくれって言われそうだな。

「ええと、売ってもいい?」

 思わず、これを狩ってきてくれた従魔達に尋ねる。

「ええ、せっかく獲って来たのに食べないの?ご主人」

「いや、もちろん俺も食うよ。だけど、少しくらいなら欲しい人がいたら売ってもいいか?」

「そう言う意味なら良いわよ。私達はいつでも狩れるから、またなくなったら捕まえて来てあげるからね」

 ニニの言葉にタロンが目を細めてそんな事を言う。

 まあ、タロンにはずっとハイランドチキンの肉をあげていたから、気に入ってるのかもな。


「ハイランドチキンも、もう少し欲しいよね」

「あ、それは私も食べたい!」

「私も私も!」

 ソレイユとフォールが嬉しそうにそう言い。ハスフェルの足元にいたレッドクロージャガーのスピカと、ギイの足元にいたベガも同じようにそう言って尻尾を振りまわした。


「そうね。じゃあご主人、近くへ行ってくれたら捕まえて来るからその時はお願いね」

「了解。じゃあ無くなったらお願いするよ」

 苦笑いして、氷の少し溶けた酒を飲んだ。

 しかし、従魔達の間で、俺を養おう計画でも有るのかね?まあ、どれも貴重な獲物みたいだから有難いけどさ。


「お疲れさん、じゃあまた明日な」

「ああお疲れさん、おやすみ。また明日な」

 そう言って二人が部屋に戻ったあと、サクラにいつものように綺麗にしてもらった俺は、疲れていたのでもう寝る事にした。


「では今夜もよろしく!」

 早くもベッドに転がっているニニの腹に潜り込む。

 背中にはいつものウサギコンビが巨大化して並び、胸元にはタロンが潜り込んできた。

 ソレイユとフォール、フランマは、ベリーと一緒に床に転がった。

「おやすみ。明日は狩りに行こうな……」

 タロンの背中を撫でながら、ニニ達の鳴らす喉の音を子守唄に、俺は気持ち良く眠りの国へ旅立っていった。



 こうして、勢いだけで参加した早駆け祭りのお祭り騒ぎは、ひとまず幕を下ろしたのだった。

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