表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
220/2067

お祭り騒ぎ一日目の終了!

 犬仲間達による勝手に表彰式を見て笑って和んでいると、また司会者の声が聞こえて来た。

「さあ、本日最後のレースになります。いよいよ本格的な早駆け戦になりますよ。皆様。賭け券のご購入は終わりましたか? もう間も無く一周戦の賭け券の発売が終了しますよ。贔屓の選手に賭けるもよし、贔屓の馬に賭けるもよし。皆で盛り上がって参りましょう!」


 ウオーーーー!


 もう、こうとしか表現出来ないような大歓声が起こって、ぼんやり聞いていた俺はまた飛び上がったよ。

 見ていると、贔屓の選手の名前を叫んでる人、馬の名前を叫んでる人もいる。

 ああ、確か、一周戦と二周戦のオッズも出ていたな。

 ちなみに、賭け券が発売されるのは、この三種類だけなんだそうだ。

 そう言えば、俺、自分の分の賭け券を買ってないぞ。自分で自分の賭け券を買うなんて、初めての経験だもんな。

 折角だから単勝で……俺だけじゃなく、四人分買うか! よし、後で聞いてみよう。


 観覧席の目の前に、改めて引かれた真っ白なスタートラインの前に、一周戦の参加選手達がそれぞれの馬に乗って出て来た。

 一人ずつ、もう一度司会者から名前を呼ばれているのを見ると、人気の程がよく分かるよ。大歓声と拍手が沸き起こる人。あんまり反応が無い人。ブーイングをされてる人も二人いたよ。

「あの二人が、例の九連勝の弟分なんだ。一昨年から参加してて、今のところ五連勝中だ」

「成る程、それでブーイングな訳か」

 ウッディさんの説明に、納得した俺も苦笑いしながら頷いた。



 レースの開始時間になった様で、一列に並んでいた馬に乗った参加者達全員が身構える。


 一瞬で静まり返る会場。


 物凄い大きな銅鑼の音が響き渡り、弾かれた様に一斉に走り出した。あの音にビビる馬とか、絶対にいるだろう! って、心配になる様な音だぞ、おい。

 一周六キロ弱。走れる馬なら途中で駆け引きはあるんだろうが、それなりの速さで全力疾走出来る距離だろう。

 大歓声の中を団体のまま馬達が走り去っていく。

 次々に歓声がその後を追いかけて行った。

「さあ始まりましたね。先頭集団の一番前はマイキー選手。愛馬はストームブリンガー! それに続くの二番手はアーレン選手と相棒のシュバルツバルド!どちらも速い! 速いぞ! 一気に抜けて来た!」

 まるで見えているかの様な実況中継に驚いていると、また、隣のウッディさんが教えてくれた。

 なんでも全部で十二人ほどの念話の能力者達が協力しているらしく、外環沿いに作られた即席の監視塔が一定間隔で並んでいて、そこに登ってレースを見ているらしい。それで、司会者に、その場所の通過順位を逐一教えているんだって。成る程。確かに念話でなら協力出来るな。


 感心して聞いていると、もう先頭集団は半分の距離を超えてこっちへ戻って来ているらしい、右側から大歓声が聞こえてきて、皆が身を乗り出す様にして一斉に右を見た。

 土埃が上がって、先頭集団が雪崩れ込んでくる。

「うわあ、速いなあ」

 感心して見ていると、もつれる様にしてそのまま一気にゴールした。

「先頭集団がゴール!今年の一周の第1位は……やはりマイキー選手の乗るストームブリンガーだ! やりました! 一周戦六連勝!」

 大歓声と、それに負けないくらいのブーイングの嵐が起こる。

 結局、あの馬鹿どもの弟分が一位と二位を独占。

 表彰式での、勝って当然と言わんばかりのその態度に、ちょっとイラっときたのは内緒だよ。





「お疲れ様。今日の予定はこれで全部終了だよ。屋台は遅くまで出てるけど、夜は少し治安も悪くなるし、安全面を考えると行くのはお勧めしないね。宿泊所まで送るから、大人しく帰ってもらった方が良いと思うよ」

 背後からエルさんが来てそんな事を言う。

「クーヘンも戻って来ているから、そろそろ宿に戻ってくれるかい」


 一応、明日のメイン競技の参加者だもんな。

 そりゃあ主催者にしてみれば、安全面を考慮して、大人しくしててくれって言うか。


「了解、じゃあ大人しく戻るとするか」

 大きく伸びをしながらそう言うと、エルさんは明らかにホッとした表情になった。

「宿泊所での安全はギルドが責任を持って保証するから、安心して休んでくれたまえ」

 立ち上がった俺達は、ひとまずテントに戻った。


「ええと……うん、大丈夫だな」

 思わず、テントに入るのを躊躇って変な顔をされた。

 垂れ幕をめくって中を覗くと、皆真ん中に集まってくっついて熟睡中だった。うわあ、巨大な猫団子状態じゃん。あの中に埋もれたい!


「お待たせ。一旦宿に戻るぞ」

 脳内で叫びつつ近くへ行って話し掛けると、顔を上げたニニが、俺の顔を見ながら物凄く大きな欠伸をした。

「おお、このサイズの欠伸を間近で見ると迫力満点だな」

 まだ寝ぼけているニニの額を撫でてやる。

「もう帰るの?」

「今日は終わり。明日はどうすりゃ良いですか?」

 振り返ってハスフェルと話をしているエルさんに聞いてみる。

「午前中はゆっくりしてくれて良いよ。できれば早めに昼食を取ってくれるかな。ここで食べてくれても良いし、宿で早めに食べてから来てくれても良いよ。三周レースが始まるのは、午後の2時からだから、その時に、ここへ迎えに来るから、それまでに準備をよろしく」

「了解。じゃあ、もう今日は宿に戻って早めに休むか」

 一旦テントを引き払って、また護衛のギルドの職員さん達の案内で、俺達はギルドの宿泊所へ戻った。

 道中、当然の様に大歓声に包まれ、頑張れ頑張れと物凄いエールの嵐を贈られました。

 仕方がないので、もう途中からは開き直ってマックスの背の上で、手なんか振りながら進んだよ。

 またしても俺のメンタルがゴリゴリと削られたのは……もう諦めます。帰ったらもふもふ達に癒してもらうから、いい事にする。





「お疲れ様。それじゃあ、また明日!」

 エルさんと職員さん達が帰って行った後、やっぱり何故か全員が俺の部屋に集まってる。

 従魔達は、のんびりと床に転がったりベッドやソファーで転がったりしている。ファルコとミニラプトル達は椅子の背に並んで留まって身繕いの真っ最中。

「じゃあもう、早めに飯食って寝よう。なんかもう……疲れました」

 三人とも頷いているのを見て笑い合い、肉を焼くくらいなら簡単に出来るので、今日はスタミナをつけて貰うためにステーキを焼いたよ。いつも以上に分厚いやつをね。簡単赤ワインソースも手早く作る。

 相変わらず食う量がおかしい三人は、分厚いステーキをあっという間に平らげ、付け合わせのフライドポテトや野菜も完食。三人には丸パンをいくつも出してやり、俺は標準サイズのステーキを白ご飯で美味しく頂いたよ。


 食後のデザートにブドウを出してやり、いつもよりも早めに解散した。


「さてと、じゃあ今夜もよろしくお願いします」

 さっさと胸当てなどの装備を外し、サクラに綺麗にしてもらった俺は、ベッドに転がるニニの腹に潜り込んだ。

 暑くなってるのに、やっぱりここが良いんだよな。

 冬ほど潜り込まず。腹の上に乗っかるみたいにしてもたれかかった俺は、胸元に潜り込んできたしなやかなタロンの背中を無意識に撫でながら、あっという間に眠りの国へ急降下したのだった。

 まあ、人間慣れない事すると疲れるよな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ