夕食準備と可愛さの塊?
「じゃあ、時間まで冒険者ギルドでゆっくりするといい。なんなら弁当でも買って先に早めの夕食にするか?」
笑ったヴォイスさんの提案に、俺は思わずニニ達と戯れている娘さん達を見た。
「あ、それなら手持ちに色々ありますから提供しますよ。ええと、お嬢さん達も一緒で大丈夫ですか?」
冒険者ギルドは、男性率が異常に高い。というか職員の方以外はほぼ男性しかいない。しかも屈強な、見かけの怖い男性が多い。
そんなところにご両親が一緒とはいえ、未成年の女の子達を連れて行っていいのだろうか。
その辺りの常識がいまいち分からないので、ここは素直に聞いてみる。
「おう、あの子達は冒険者ギルドでも大人気だぞ。たまにザックがギルドへ彼女達を連れてくると、皆先を争うようにして遊んでくれるし、筋肉自慢や獲物自慢が始まっているからなあ」
そう言って笑うヴォイスさんの言葉に、俺も思わず笑っちゃったよ。
確かに、見かけは怖い冒険者が多いけど、大抵は話せば気の良い奴ばかりだからね。まあ、問題のある奴もいない訳じゃあないけど、確かに俺の知る限り、冒険者ギルドはかなり治安は良い方だな。
「そういえば、奥さんのマーサさんも元冒険者だって言っておられましたね。もしかして、同じパーティーで出会ったとかですか?」
寂しい独り身の俺としては、そういう出会いがあるのならちょっと期待したい部分もある。
神殿から冒険者ギルドへ向かいながら、俺はなんとなく並んで歩いていたザックさんにちょっと期待を込めた控えめな声でそう聞いてみる。
「いや、元々俺とマーサとは家が隣で幼馴染だったんです。母親は、俺が幼い頃に家を出たきりでね。俺は、この街で漁師だった親父の手伝いをしながら登録出来る年齢になると同時に冒険者登録をして、十代の頃から主に近隣の畑に出没するネズミや害獣、それからジェムモンスター狩りをしていたんです。彼女も漁師だった両親を幼い頃から手伝っていたんですが、男所帯の俺の家を彼女の母親が気にしてくれて、よく一緒に夕食をいただいたり、狩りに行く際に弁当を持たせてくれたりしていたんです。途中からは彼女も冒険者登録をして、親父達が漁に出られない時は俺達が狩りに出て稼いでいました。それでまあ、気が付けば彼女が側にいるのが当たり前になっていましてね。俺の方から結婚してくれって言ったら、やっと言ったわねって笑われまして、それでそのまま結婚したんですよ」
くう、幼馴染からの結婚ルートかよ! 全然参考にならないじゃないか! リア充爆発しろ!
「あはは、そういう事でしたか。お幸せそうで何よりです」
心の中で拳を握って絶叫しつつ、乾いた笑いをこぼす俺だったよ。くすん。
「おお、かなり広いですね。ここなら従魔達も安心だ」
冒険者ギルドに到着したところで、ヴォイスさんの案内で全員揃って別室に通された。もちろん、従魔達も一緒だよ。
かなり広い部屋には奥側にソファーが並んで置かれていて、その前にはやや低めのテーブルが並んでいる。
部屋の真ん中には会議机っぽいのがいくつか並べられていて、その横には背もたれの無い丸椅子が積み上げられているので、こっちのテーブルを使う時には、この丸椅子を使えって事だろう。
「ええと、じゃあここに色々出しますので、好きに取ってくださいね。一応、お皿に取ったものは極力残さないようにお願いします」
サクラが入ってくれた鞄から、作り置きを色々取り出しながらそう説明する。
お嬢さん達は、俺が取り出す料理の数々をそれはもうキラッキラな目で見ている。
「ねえ、お父さん。あれ何?」
「生のお魚に見えるけど……」
しかし、寿司や刺身に気付いた双子のディアナちゃんとエリマーちゃんが、完全にドン引きした口調でザックさんのところへ駆け寄ってそう尋ねる。
逆に、妹のリリアちゃんは興味津々で握り寿司と巻き寿司の並んだお皿をガン見している。
「大丈夫だよ。俺も頂いたがどれも最高に美味しいよ。きっとお前達も気にいると思うぞ」
ちょっとドヤ顔になったザックさんの言葉に、二人が驚いている。
「ねえ、これ食べてみても良い?」
対して、キラッキラの目になったリリアちゃんにそう聞かれて、お皿を取り出していた俺は笑顔で大きく頷いた。
「もちろん。じゃあお皿をどうぞ。これで好きなのを取ってくれていいよ。あ、取りにくかったら言ってくれれば取ってあげるからね」
会議机の方に並べちゃったから、一番背の低いリリアちゃんはちょっと自分で取るのは無理そうだ。
「ああ、ありがとうございます。この子達の分は私が取りますので」
慌てたように呆然と見ていたマーサさんが駆け寄って来てくれたので、人数分のお皿を渡しておく。
だけど、何故かリリアちゃんはお皿を持ったまま俺の横にぴたりとついた。
「ええと、じゃあ、ケンさんが良いと思うのをここに入れてくだしゃい」
満面の笑みでそう言われてしまい、俺も笑顔で頷く。
うん、先を争うようにして彼女達を構うのだという冒険者の皆さんの気持ちが、今思いっきり理解出来たね。
これは可愛い。可愛いが過ぎるよ。
完全に保護者目線になりつつも、ちょっとあまりの可愛さに悶絶した俺だったよ。
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




