街への帰還と出迎え?
「よし、街に到着だ!」
「このまま神殿へ行くぞ!」
「おお〜〜〜!」
先頭を走っていたヴォイスさんの叫びに、アレクさんとザックさんも嬉々として拳を振り上げつつそう言って笑っている。
まだテイマーなダイさん達も、そんな三人を見て、いいなあ、羨ましいなあ、なんてちょっと拗ねたように言いながらも、こちらもそれぞれにとても良い笑顔だ。
ちなみに、初めて街へ来た時にはバリバリに警戒されていた俺達と従魔達だったけど、もうすっかり街の人達や門番さん達も覚えてくれていて、普通に出入り出来るようになっているよ。
まあ、今回は冒険者ギルドのギルドマスターであるヴォイスさんが一緒だったってのは、間違いなく大きいと思うけどね。
「ええと、ところで神殿って街の何処にあるんですか?」
街へ入ってのんびりと並んで進みつつ、マックスの背の上から街を見回した俺は前を行く彼らにそう尋ねた。
なにしろ、ここから見る限り他の街ならすぐに神殿だと分かるような高い塔が何処にも無いのだ。
基本的に教会の高い塔には、お祭りや祭事などの際に鳴らす大きな鐘とは別に、時を告げる高い音の鳴る時報専用の鐘があって、それを定期的に鳴らしてくれる。なので、街の何処にいても高い塔が見えるのでそこに教会があるとわかるんだよ。
ちなみにその鐘を鳴らすタイミングを知るには、ちゃんとそれ専用の装置があるらしい。もちろんジェムで動くんだって。
多分だけど、大きな時計的なやつなんだろう。それはちょっと見てみたいかも。
だけど、さっきからずっと周りを見て確認しているんだけど、少なくとも見える範囲にはそれらしい高い塔が何処にも無いんだよ。
「ええ? どういう事だ? あれ? でも時刻を告げる鐘の音は、この街でも普通に聞こえていたぞ。じゃあ逆にあれって何処で鳴っていたんだ?」
首を傾げてそう呟きながら、改めてマックスの背の上から街を見回す。
「時を告げる鐘は、商人ギルドの建物にあるんだ。時を刻む装置の維持管理も含めて商人ギルドが担当している。言ったようにこの街は、特に冬場に海から吹く強風のせいで高い建物はほぼ立てられない。内陸の街には当たり前にある背の高い時を告げる鐘撞き塔は、海岸沿いの街では商人ギルドの建物の上側にあって、鳴らす際だけ鐘ごと一段階上がる仕組みになっているんだ。まあ、規定以上の強風が吹く場合は、そのままの低さで鳴らす事もあるがな」
笑ったヴォイスさんの説明に納得する。
もしかして、可動式の台ごと上下するんだろうか。それもちょっと見てみたいかも。
よし、今度街へ出る時はその辺りも見ながら行こう。
のんびりとそんな事を話しつつ、俺達は冒険者ギルドの建物の前を通り過ぎてそのまま道なりに進んでいく。
しばらくして大きな広場に面した一角にがっしりした石造りの建物が見えてきた。
他とは明らかに作りが違うそれは、高い塔こそ無いものの、他でも見慣れた教会と似たような作りになっている。
「よし、まずは紋章を描いた紙を渡して受付で紋章付与の申し込みをしてこよう。いつ紋章を授けてくださるかは、神官様の予定もあるだろうからな」
笑ったヴォイスさんの言葉に、前のめりになっていたザックさんとアレクさんも苦笑いしつつ頷いていた。
「お父さ〜〜ん!」
「おかえりなさい!」
「ねえ、どうだったの?」
その時、教会前の広場の隅に座っていた小学校低学年くらいの小柄な女の子達が、大きな声でそう言いながらこっちに向かって手を振りながら駆け寄ってきた。
「ただいま! ディアナ、エリマー、リリア!」
笑ったザックさんが、笑顔でそう叫んで馬から飛び降りる。
両手を広げた女の子達は、三人同時にザックさんに飛びつく。
笑ってその場にしゃがんだザックさんは、大きく両手を広げてそんな三人をまとめて抱きしめた。
ちなみに、従魔のスライム達はザックさんの両肩と頭にくっついて留まっているし、三匹のホーンラビット達は、馬に取り付けた袋の中に入っていて、揃って顔を出してそんな彼らを見ている。
「ああ、約束通り、父さんは魔獣使いになったぞ。今から紋章を授けてもらいに神殿へ行くんだ」
ちょっと得意そうにそう言って笑うザックさんは、とてもいい笑顔だ。
「すご〜〜い!」
「もう魔獣使いになれたのね!」
「すごいすごい! ねえ、何を捕まえたの?」
「「「見せて見せて〜〜!」」」
綺麗に揃った三人のお嬢さん達の声に、俺達はもう笑うしかない。
双子とその下に妹さんだと聞いていたけど、三つ子だと言われても信じるくらいに三人はそっくりだよ。
でも、改めてよく見るとちょっと小柄な女の子が一人いるから、あの子が多分妹さんなのだろう。
「ああ、失礼した。改めて紹介させてください。双子のディアナとエリマー、それから妹のリリアだよ」
我に返ったようにザックさんがそう言い、栗色のふんわりとしたちょっと巻き毛の女の子達は、ザックさんの言葉に笑顔で頷き合うと、揃ってこっちに向かって笑顔で手を振ってから一礼した。
「この人が、魔獣使いの師匠、ケンさんだよ」
「「「初めまして!」」」
「初めまして。師匠なんてたいそうなものじゃあないけどね」
慌ててマックスの背から飛び降りてそう言うと、娘さん達はそれはもうキラッキラの目でマックスを見て、それから背後にいたニニをはじめとする従魔達を見てからもう一回俺を見た。
「すごい!」
「ねえ、あれ全部ケンさんの従魔なんですか?」
「あの、あのふわふわな猫ちゃんを触らせてくだしゃい!」
妹のリリアちゃんは、慌てすぎて最後にちょっと噛んでいたよ。
「もちろん触ってもらっても構わないよ。だけど、目元周りや口元、それから毛やヒゲを引っ張ったりしないでね」
笑ってそう言い、一応ニニの横に立って首輪を掴んでやる。
「ネコしゃん、こんにちは」
キラッキラの目をした三人が駆け寄ってきて、そう言いながら小さな手を伸ばしてニニに触れる。
目を細めて喉を鳴らしたニニがゆっくりとリリアちゃんのそばに行って、鼻先でスリスリと甘えるように擦り寄る。
「うわあ、可愛い!」
君の方がもっと可愛いよ!
満面の笑みでそう言い、飛びつくみたいに首元に抱きついたリリアちゃんの叫びに、おそらく見ていた大人達全員が心の中でそう叫び、揃って悶絶していたのだった。
それから、興味津々で集まってきた猫族軍団をはじめとする従魔達に取り囲まれた三人は、怖がる様子は全く見せず、それはそれは大はしゃぎで順番に撫でたり飛びついたり、抱きしめたりしていたのだった。
従魔達も小さな子供が可愛くて仕方がないみたいで、どの子もご機嫌で相手をしてくれていたのだった。
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




