狩りの終了と新たなテイム
「ではご主人、また追い出しは私がしますね」
ニニの首輪からするりと離れて地面に降り立ったセルパンが、細い首をもたげてそう言ってくれる。
「ああ、よろしく」
笑った俺の言葉の直後、近くにいたアレクさんが驚いたように突然現れたセルパンを見た。
「おや、この蛇はケンさんの従魔なのか? どこにいたんだ?」
自分を怖がる様子を全く見せないので、大丈夫と判断したのかセルパンも特に動かずじっとしている。
「いつもはニニの首輪にくっついて隠れているんです。まあ、蛇は怖がる人が多いですからね」
自分も最初は怖かったので苦笑いしながらそう言うと、納得したのか小さく笑ったアレクさんは、一つ深呼吸をしてからセルパンの前に膝をついた。
「では、世話をかけるが穴からホーンラビットを追い出してくれるか? 普通なら、火を起こして煙で追い出すんだが、それだとこっちも煙いし視野が狭くなるので怪我のリスクがあるからな」
成る程。ホーンラビットは基本的に穴に潜って隠れているジェムモンスターなので、普通の冒険者はどうやって穴から追い出しているのかちょっと疑問に思っていたんだよな。
確かに、煙で穴から追い出すのは効果的だろうけど、こっちも煙いし危険が伴うってのも分かる気がする。
苦笑いしながらセルパンに向かってそう言ったアレクさんは、なんとそっと手を伸ばして首をもたげていたセルパンを撫でてくれた。
驚くセルパンを見て、なんだか俺まで嬉しくなったよ。
「セルパンを怖がらずにいてくれてありがとうございます。じゃあ、お願い出来るか」
土手の上から笑った俺がそう言うと、俺を見上げたアレクさんは笑って立ち上がると剣を抜いた。
それを見て、他の皆もそれぞれの武器を構える。
「では行きますね」
ちょっと得意そうにそう言ったセルパンが、スルスルと穴の中へ入っていく。
しばしの沈黙の後、ドタバタと暴れる音がして穴という穴から一斉にホーンラビットが飛び出してきた。
おお、なかなかにデカい!
ちなみにここのホーンラビットは、全身が真っ白でお尻が黄色い。角は一本で立ち耳タイプだ。うん、これはなかなか可愛いぞ。
まあ、今は中型から大型犬サイズな上に、歯を剥き出しにしてめっちゃこっちを威嚇しているから全然可愛くないんだけどね。
「よっしゃ〜〜〜〜!」
出てきたホーンラビットを見て声を上げたアレクさんを筆頭に、全員が一斉に前に出て戦い始める。
もちろん、マックスやニニをはじめとする従魔達も、大張り切りの大暴れ状態だ。
入り乱れての乱戦状態だが、新人スライム達はちゃんとそれぞれのご主人の背後を中心に展開していて、主に死角となる背後からの攻撃をしっかりと防いでいる。
そして時にはご主人と連携して、大型のホーンラビットもしっかりと倒している。
その連携っぷりは初めての戦いとは思えないくらいに自然だ。
「おお、なかなか上手く連携が取れているな。あれも、もしかして教えたのか?」
完全に見学者気分な俺は、足元に転がっていたアクアに思わずそう尋ねる。
「そうだね。一応、戦う時に気をつける事やご主人の守り方なんかは一通り教えてあげたよ。でも、ちゃんと聞いただけで初めての戦いでそれを実践出来ているんだから、皆優秀みたいだね!」
最後はちょっと得意そうに伸び上がりながらそう言われて、俺も笑顔になる。
「確かにそうだな。これなら安心して見ていられるよ。お、そろそろ一面クリアーかな?」
確かにかなりの数のホーンラビットが出たけど、そろそろ打ち止めみたいで一気に数が減ってきた。
セルパンも出てきてデカくなって戦っているので、もう穴の中にはいないのだろう。
外にいたホーンラビットが綺麗に殲滅されたところで、俺達のスライム達も参加して散らばるジェムを拾っていく。
ちなみに、ホーンラビットのジェムモンスターには素材は無いので、どれだけ倒しても確保出来るのはジェムだけだよ。
「あれ、これはまた小さいのが出たぞ」
笑ったアレクさんの声に下を見ると、穴に駆け寄ったアレクさんの足元に小さくて真っ白な綿の塊みたいなホーンラビットの子供が何匹か転がり出てきたところだった。
「ああ、それは繋ぎの子ですね。ええと、もしもテイムをご希望なら、その小さいのを捕まえてテイムすればいいですよ」
土手を滑り降りながらそう教えてやると、目を輝かせたアレクさんだけでなく、近くで戦っていたザックさんまでが慌てたように走ってきた。
「ケンさん、俺でもテイム出来ますか?」
真顔で聞かれて苦笑いしつつ頷く。確かザックさんも魔獣使いになれるってシャムエル様が言っていたもんな。
笑ってやり方を教えていると、ギルドマスターのヴォイスさんまでが目を輝かせて走ってきたので、結局三人がそれぞれにイエローホーンラビットをテイムしたのだった。
その後、まだまだ暴れたいらしい従魔達のリクエストで合計三回、セルパンに追い出しをしてもらってガッツリ狩りを楽しんだのだった。
その結果、まずヴォイスさんはスライム二匹にホーンラビットが一匹の合計三匹。アレクさんはスライム六匹にホーンラビット一匹の合計七匹をテイムできたので、彼は無事に魔獣使いの権利を獲得。
ザックさんは、スライム二匹にホーンラビットを三匹テイムしてこちらも無事に魔獣使いの権利を獲得したのだった。
ちなみに、ザックさんには双子の娘さんとその下にもう一人娘さん、合計三人のお子さんがいるらしく、ホーンラビット三匹は、三人の娘さん達へのお土産にするんだって。
「それなら、きっとスライムも欲しがるんじゃあありませんか?」
今日のザックさんは、クリアーとピンククリアーの二匹のスライムをテイムしていて、それ以外にここで三匹のホーンラビットを娘さん達の為にテイムしている。
まあ、魔獣使いの権利はこれでクリアーなんだけど、ホーンラビット達を娘さんに譲るのならもうちょっとスライムが欲しいところだろう。それに、きっと娘さん達もスライムの可愛さを分かってくれると信じたい。
「それはそうですね。まあ、俺はまだまだ大丈夫みたいなので……一度スライムの巣へ戻っていただけますか?」
苦笑いしながらのザックさんの提案に、俺ももっとテイムしたいとヴォイスさんが叫び、その結果、ここは撤収してもう一度スライムの巣を巡回する事にしたのだった。
その結果、ヴォイスさんとザックさんはそれぞれ四匹パステルカラーのスライムをテイムして、ヴォイスさんも無事に魔獣使いの権利を獲得したのだった。よしよし。
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




