今の従魔達に出来る事?
「いやあ、もう最高って言葉しか出てきませんよ」
「しかも俺達、絶対に持ってきた以上に頂いていますよね!」
「だよな。どれだけ高級な魚介類を大量に持ってきたとしても、岩豚を出されたその瞬間完敗だよな」
笑顔でそんな事を言って笑っているダイさんとナフさんの言葉に、アレクさんもそう言って苦笑いしながら凄い勢いで頷いている。
鎧海老の醤油焼きを食べていた俺は、漏れ聞こえた会話に思わず三人を振り返った。
全員のお皿には、綺麗に焼けた岩豚のお肉とハイランドチキンのお肉がまだまだ山盛りになっている。
「全然問題ありませんから、どうぞ遠慮なく食べてくださいね。ちなみにこのお肉に関して言えば、俺は、ギルドに依頼した際の解体費用くらいしか払っていないんですよ。全部従魔達が狩ってきてくれた獲物の肉ですから、実質タダなんですよ」
笑った俺の説明に、こっちを見た三人が揃って目を見開く。
いや、彼らだけでなくヴォイスさんやパロットさん達も、同じく揃って目を見開いて凄い勢いでこっちを振り返っている。
「ええ? ケンさん、それってマジっすか?」
驚くパロットさんの言葉に、俺は笑いながら頷く。
「ちなみに岩豚は、冬のバイゼンに滞在していた時に、従魔達がこれが美味しいからと言って大量に狩ってきてくれたんですよ。何頭かは、頼まれてギルドにも売りましたよ」
「うええ、それは羨ましい! よし、頑張って魔獣使いになって、岩豚を狩ってきてくれそうな強い子をテイムするのも目標にしよう! 俺も岩豚食べたい!」
よしって感じに手を打ったパロットさんの、個人的欲望ダダ漏れな目標設定宣言に、あちこちから吹き出す音が続き、俺も思わず吹き出しちゃったよ。
でもまあ、魔獣使いになる目標がそういうのであっても別に良いよな。
個人的欲望がダダ漏れな目標宣言を笑って聞き流そうとしたところで、何故か急に冒険者ギルドマスターであるヴォイスさんが立ち上がり、スタスタと歩いて行ってパロットさんのすぐ横に立つ。
「ん? どうかしたか?」
驚いてちょっと真顔になったパロットさんの肩を、呆れたような顔をしたヴォイスさんがぽんぽんと叩く。
「パロットよ。気持ちはとってもよく分かるが、ちょっと無理だな。その目標には大きな穴があるぞ」
「へ? どうしてだ?」
「岩豚がいるのは、残念ながらバイゼンの山側。しかもごく一部の限られた地域だけだ。しかも、脂がのって絶品とされるのは、雪が降って以降の冬の時期のみだ。しかもお前さんは知らないだろうが、バイゼンに積もる雪の量は人の背丈さえも超えるほどのとんでもない量なんだぞ。仮にケンさんが連れているような強い従魔をお前さんがテイム出来たとしても、そもそも、獲物になる岩豚がこの辺りにはいない。だからその目標設定自体にかなりの無理があるって事だ」
「た、確かに〜〜〜!」
顔を覆って机に突っ伏すパロットさんの叫びに、俺達の会話を聞いていた全員が揃って吹き出し大爆笑になったよ。
「あはは、残念でした〜〜。でも、岩豚は無理でも、逆にこの地域にしかいないような獲物もあるんじゃあありませんか? ええと、魚介類とかで何か……」
一応気を使って俺がそう言うと、アレクさんが苦笑いしながら俺のお皿を指差した。
鎧海老の醤油焼きを見て納得する。
「それを言うなら間違いなく鎧海老だな。確かにあれを従魔達に狩ってもらえたら最高だが、さすがにちょっと無理があるぞ。そもそも鎧海老がいるのは、海の中だからな」
「ですよねえ。鎧海老は毒持ちで、そのせいで酷い怪我が多いんだっておっしゃられていましたもんね」
ダイさん達に初めて会った時に聞いた話を思い出してしまい、ちょっと遠い目になった俺だったよ。
「ご主人、それなら鎧海老を狩る事自体は、今のあの子達にはちょっと無理だろうけど、ご主人達の狩りの補助程度なら出来ると思うよ。要するに、目標の獲物を包み込んで問題の毒を封じちゃえば良いんだよね。その状態で鎧海老を引き上げてもらって船の上に置いておけば、海の生き物なら勝手に窒息するでしょう?」
ビヨンと跳ね飛んできたアクアの言葉に、俺は驚いて目を見開く。
「た、確かにそれはアリかも」
スライム達は水の中でも平気で泳ぐし、海水も大丈夫だって言っていたもんな。
「ん? 何がアリなんだ?」
アクアの言葉が聞こえていないヴォイスさんに不思議そうにそう聞かれて、俺は思わずアクアを捕まえて手の上に乗せて見せる。
「ええと、俺のスライムが言うには、皆さんの従魔のスライム達が鎧海老を直接狩る事自体は、さすがにすぐには無理だろうけど、補助程度なら出来るだろうって言っていますよ。要するに、スライム達が毒のある棘やハサミ部分に巻き付いて、その体で丸ごと封じてしまう作戦です。その状態で船の上に引き上げて放置しておけば、海の生き物は陸の上では呼吸が出来ないので、もうそれでOKでしょう?」
俺の言葉の直後、ビヨンと伸びたアクアが一瞬で俺の手の肘から先に巻きつき包み込んでしまった。
「な、成る程。確かに鎧海老漁で一番大変なのが、あの毒のある棘とハサミだからな。それを封じてくれるだけでも最高に役に立つぞ」
「「「ええ! スライムにそんな事が出来るんですか〜〜〜?」」」
真顔のヴォイスさんの叫ぶような声に、アレクさんとダイさんとナフさんの絶叫が重なる。
「ええと、どう? 出来そうかな?」
アレクさんの足元にいた子に聞いてみると、ビヨンと伸びて少し考えてからアレクさんの足にくるりと巻きつき、そのまま広がって足を包み込んだ。まさに、今アクアがやっているのと全く同じ状態になる。
「ええとね。やってみないと分からない部分もあるけど、これくらいなら多分出来ると思うよ」
ちょっと得意げなその言葉を通訳してやると、満面の笑みになったアレクさんは足に巻き付いたスライムをそれはそれは優しく撫でた。
「もし本当にそう出来るのなら有り難いが、言っておくが鎧海老の力はかなりのものだからな。絶対に無理はしないでくれよ。それなら今度の漁にお前達を連れて行くから、まずは見学して出来るかどうかを判断してくれ。その上で、小さめのがいたらそれで練習してみればいい」
「そうだね。よろしくお願いしま〜す!」
アレクさんの足から離れて元の形になりコロンと転がったスライムは、嬉しそうにそう言うと跳ね飛んでアレクさんの肩の上に収まる。
「よろしくな」
笑ったアレクさんの言葉に、他の新人さんのスライム達も次々にピョンピョンとその場で飛び跳ね始め、何やら揃ってめっちゃ張り切っていたのだった。
もしかして、ここでもスライムの有効性が発動しちゃうかも。
頑張れ! 新人スライム達!
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




