またしても新技登場!
「それじゃあまた明日〜〜」
「おう、よろしくな」
ギルドで、テイマー講習会の講師役の指名依頼を受けた俺は、カウンターに並ぶ冒険者さん達やアレクさん達、それからヴォイスさんに見送られてとにかく宿泊所へ戻った。
まだ夕食には少し早いしそんなにお腹も減っていなかったので、ひとまず解散してそれぞれの部屋に戻る。
「はあ、疲れた」
「お疲れ様〜〜ほらご主人、くっついていいにゃ!」
笑ったマニが、そう言って部屋に入ったところで俺を遠慮なく押し倒す。
当然、即座に反応したスライム達が一気に大きくなって俺を受け止めてくれる。
「あはは、ありがとうな」
マニを抱きしめたまま仰向けに倒れた俺は、笑ってそう言い腕を伸ばしてスライムベッドをポンポンと叩いてやった。
「今回の新しいスライム達には、こういうのも教えてやったんだよな?」
ご機嫌で喉を鳴らすマニのもこもこな頬毛を引っ張りつつ、不意に思いついてそう聞いてみる。
「そうだね。ご主人の身の回りのお世話をするような事は一通り教えたよ。でも、あの子達には洗浄の能力が無いから、例えばサクラが毎朝やってるご主人の汚れを取る時の方法なんかもちょっと違うの。一応、その辺りは心得ているから普通の方を教えたよ」
「へえ、違うんだ」
驚いてマニを抱いたまま起き上がってスライムベッドを見る。
今まで話していた透明なアクアの部分とその隣にくっついているピンククリアーの部分からにょろんと触手が伸びて一瞬だけ俺の足に絡まってから直ぐに引っ込んだ。
「えっとね。例えて言うなら……乾いた布で汚れを拭くのと、濡れた布で汚れを拭くくらいには仕上がりに差があるね。綺麗にする度合いが違うっていうか、そんな感じです!」
ピンククリアーの部分がプルプルと震えてサクラが教えてくれる。
「ああ、成る程。わかりやすい例えをありがとうな。じゃあ、普通の子達に教える時は、乾拭きのやり方になるわけだな」
「そうそう。そんな感じで〜〜す」
全員の声が重なり、いきなりスライムベッドがプルプルと揺れ始める。
「あはは、マッサージ機状態だぞ」
もう一度寝転がってから笑った俺が思わずそう言うと、ぴたりと揺れが止まった。
「ご主人、マッサージ機って何ですか?」
アクアの質問に思わず吹き出す。
うん、さすがにこっちの世界にマッサージ機は無いよな。
「ええと、マッサージって分かるか?」
「マッサージって何ですか?」
当然、マッサージも知らないみたいだ。
不思議そうなアクアの返事に笑った俺は、とりあえず起き上がってマニを離してやる。
そして手早く身につけていた防具を全部外して服だけになる。もちろん、服の下に着ている鎖帷子はそのままだよ。
「ええと、例えば肩、腕、足、背中、腰回り。今日みたいに出掛けて色々やったあとは疲れている。なので、こんなふうにその疲れている部分をゆっくり揉んだり押さえたり、軽く叩いたりするのをマッサージって言うんだよ。たまに俺がこんな感じで肩を叩いたりふくらはぎを揉んだりしているだろう?」
そう言いながら軽く肩を叩き、それからふくらはぎを揉んで見せる。
「じゃあ、こんな感じですか?」
そう言ったアクアが、俺の下半身を軽く包み込んでからゆっくりと全体に揉み込んでくれた。
「おお。完璧。これ高級マッサージチェアーそのままだぞ」
驚く俺の言葉に、にょろんと伸びたアクアの触手がポンポンと俺の背中を叩く。
「じゃあ、全身もやってみるので、横になってくださ〜〜い!」
張り切ったアクアの言葉に驚きつつ、素直にそのまま仰向けになる。
窒息しないように、顔を除いた全身が一瞬で包み込まれる。
「こんな感じでどうでしょうか?」
そして、その声と共にゆっくりと全身が揉み込まれる。
「おお、力加減も完璧。凄いぞアクア……だいたい砂時計一回分か二回分くらいでいいぞ……」
あまりの気持ち良さに完全に脱力状態になった俺はそう言いながらうっかり目を閉じてしまい、そのまま気持ちよく眠りの海へ落っこちていったのだった。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
しょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
いつものモーニングコールに起こされた俺は、無意識に返事をしつつ違和感を覚えて慌てて起き上がった。
「ああ、そっか。あのまま寝落ちしたんだな」
スライムベッドの横で集まって巨大猫団子になっている従魔達を見て思わず吹き出す。
「一応、砂時計一回分でやめたけど、お体の調子はどうですか?」
聞こえたアクアの声にもう一度吹き出し、スライムベッドから降りてからゆっくりと腕を回し首も回してみる。
全体に感じていた脱力感は全く無くて、なんと言うかめっちゃ元気だ。
「完璧だよ。これって、他の子達にも教えてあげられるのか?」
「うん、これは特別な事はしていないから、他の子達にも教えてあげられるよ〜〜!」
「これはハスフェル達も喜ぶだろうし、他の冒険者の人達も絶対喜ぶな。よし、じゃあ後で順番に教えてあげてくれるか」
「はあい、じゃあ皆に教えておきま〜〜す!」
一瞬でばらけたスライムベッドだったけど、そのままアクアを真ん中にしておしくらまんじゅうが始まった。
新技を開発した際に、情報を共有する時のお約束の動きだ。
「ありがとうな。冗談抜きでもう俺、お前ら無しの生活なんて考えられないよ」
笑っておしくらまんじゅうしているスライム達を、そう言ってそっと撫でてやった俺だったよ。




