街への帰還とこの後の事
「お、お前ら……俺に無断でそんな良い思いをしやがって! 俺だってスライムをテイムしたいのに!」
郊外でのテイム講習会と海鮮バーベキューを終えた俺達は、のんびりと街へ戻ったのだが、新しくテイムしたスライム達の従魔登録の為にそのまま揃って冒険者ギルドに行ったんだよ。成り行き上、何となく俺達も一緒に行ったら、タイミングが良いのか悪いのか、そこにギルドマスターのヴォイスさんがいて、彼らが連れているスライム達を見て絶句した後に、思いっきり拗ねた顔になってそう叫んだのだった。
当然、冒険者ギルド中にその叫びは響き渡り、その場にいて聞いていた冒険者達やギルドの職員達は驚きに目を見開く。
「いや、別に意地悪したわけじゃあないよ」
「そうだそうだ。たまたまジェム集めの為の狩りで郊外に出ようとしていた俺達が、同じく海鮮バーベキューをする為に郊外へ出ようとしていたケンさんと会って話をして、それならテイムの仕方を教えてくれるって言うから一緒に行こうって展開になったんだよ」
苦笑いしたアレクさんやパロットさん達の説明を聞いたヴォイスさんが、もう一度叫び声を上げる。
「何だと! ケンさん達と一緒に海鮮バーベキューまで楽しんできたのか。ずるいぞ! お前らだけそんな良い思いをしやがって!」
その本音ダダ漏れな叫びに、何事かと聞いていた冒険者達やギルドのスタッフさん達は大爆笑になったのだった。
「申し訳ありません。決してわざと仲間外れにしたわけじゃあありません。本当にたまたまです。成り行きです」
苦笑いした俺も誤魔化すようにそう言い、カウンターの上に並んだまだ紋章の無いスライム達を見た。
「どうしますか? いつでも構いませんから、ヴォイスさんが希望するならまたテイマー講習会しますよ。もちろん、海鮮バーベキュー付きで」
「是非頼む! 俺もスライムをテイムしたい!」
目を輝かせるヴォイスさんの叫びを聞いて、その場にいた冒険者達が無言で顔を見合わせて、あちこちで何やら話を始めた。
「失礼する。ハンプールの英雄で、魔獣使いのケンさんだよな?」
その時、近くにいた明らかに上位冒険者と思われる良い装備をした男性が、ゆっくりと近寄ってきて軽く一礼してから俺にそう話しかけてきた。
まあ、もう俺の事は思いっきり有名になっているので、見知らぬ相手が俺の事を知っているのは日常茶飯事だ。
苦笑いした俺が頷くのを見て、その冒険者は目を輝かせてカウンターに並ぶスライム達を見た。
「俺でもスライムをテイム出来るだろうか? 良ければ対価は払うので、俺にもそのテイマー講習会を受けさせてもらえないだろうか。以前ハンプールの街でスライムトランポリンを体験したんだが、あれは本当に楽しかったんだ。一緒に行った妻と子供が大喜びでね。もしも俺がテイマーになってスライムをテイム出来れば、いつでも子供達にスライムトランポリンを遊ばせてあげられるよな?」
身を乗り出すようにしてそう尋ねる冒険者さん。
くう、ここにもリア充がいたよ。リア充爆発しろ!
嫉妬の炎を密かにボウボウに燃やしつつ、それはそれとして置いておいて右肩に座っていたシャムエル様を横目で見る。
『どう? この人にテイマーの才能はありそう?』
この判断は俺には出来ないので、一応シャムエル様にお伺いしてみる。
『うん、大丈夫だよ。魔獣使いになれるくらいの才能は充分にあるね。それにしても、冒険者なのに自分の狩りや郊外での生活を楽にする為じゃなあなくて、子供達の遊びの為にテイマーになりたがるなんてね。うん、これは新しい時代の新しいテイマー像の一つになるね。是非教えてあげてちょうだい!』
嬉しそうに目を細めたシャムエル様の言葉に、俺は笑って大きく頷く。
「もちろん構いませんよ。ちなみに対価はいただいていませんのでお気になさらず」
笑った俺の言葉にその冒険者さんは驚きに目を見開く。もちろん、俺もそんなテイマーが増えて一般の女性や子ども達もスライムが好きになってくれたら嬉しい。
「いや、そこはきちんと仕事として……」
そこまで言って、カウンターの中にいたヴォイスさんを振り返る。
真顔で頷いたヴォイスさんは、何かの書類を手にして俺を見た。
「それに関しては俺も同じ意見だ。って事で、ケンさんもここに座ってくれ。今から俺の名義でテイマー講習会の講師依頼を出す。ちなみに、他にもテイマー希望者がいるだろうから、しばらく申し込み期間を設けるので希望者がいたら、ギルドに講習会の申し込みをしてくれ」
驚く俺に、ヴォイスさんがにんまりと笑う。
「まずは俺がその講習会を受けてみるので、出来るだけ早くお願いしたい。何なら食材は持ち込むので、オプションで海鮮バーベキューもお願いしたいのだが、どうだろうか?」
「あはは、俺達はいつでも構いませんよ。ちなみに、アレクさん達やパロットさん達とも、もう一度講習会と海鮮バーベキューをする予定でしたので、それなら一緒に行きましょう」
「では、明日でどうだ?」
目を輝かせたヴォイスさんの即座に返ってきた答えに、俺は堪えきれずに思いっきり吹き出したのだった。
「それなら、俺も一緒にお願いしたい! ああ、名乗りもなく失礼しました。ザックと申します。一応上位冒険者です」
先ほどのリア充冒険者さんが目を輝かせて進み出てきたので、そのまま彼も一緒に行く事になった。
それを見て周りにいた冒険者さん達が慌てたようにカウンターに並ぶのを見て、他にもテイマー希望者達がいると分かってちょっと張り切っちゃった俺だったよ。




