テイムの意味
「おお、これはまさにスライムが潜んでいそうな茂みですね」
思わずそう言った俺の呟きに、アレクさん達は笑って頷いていたよ。
馬に乗ったパロットさん達やアレクさん達と一緒に街の外へ出た俺達は、彼らの案内で街道を外れて森の中を進みしばらく走ってから、いかにもスライム達が潜んでいそうな茂みに到着した。
「ええと、では、テイマー希望の方はこっちに集合してくださ〜〜い。まずは座学ですよ〜〜」
俺の声に笑って頷いたハスフェル達が従魔達を引き連れて少し離れてくれたので、まずはここで簡単にテイムの仕方について、それからテイマーや魔獣使いとなる為に重要な、絶対に知っておいてもらわないといけない主人と従魔の関係について詳しく説明した。
テイムされた従魔にとって、ご主人がどれほど大切で唯一無二の存在であり、また愛おしい存在であるか。
その際に、セーブルの事やヤミーの事についても詳しく説明した。
彼らは、皆黙って俺の説明をそれはそれは真剣に聞いてくれた。
「主人に捨てられたら、それだけで寂しくて死んでしまう……どれほど一途な存在なんだよ」
思わずと言った風にアレクさんがそう呟き、離れてこっちを見ている俺の従魔達を振り返った。
「つまり、自分の従魔にしたらその子とは文字通り一生の付き合いになる。それが出来なければ、そもそもテイマーになってはいけない」
自分に言い聞かせるようにそう呟いたアレクさんは、無言になってしばし考え込んでいたが、顔を上げてスライムが潜んでいる茂みを見た。
「お前らはどうだ? 便利だ、役に立つ。ケンさんが連れているスライム達を見て簡単にそう考えてテイマーを希望したのだとしたら……一生の付き合いになると言われてどう考えた?」
一つ深呼吸をしたアレクさんは、そう言って俺の前に並んでいるパロットさん達やダイさん達を見た。
「俺は、恐らくそうだろうと思っていたから、ケンさんの説明を聞いても別に驚かなかったよ。まあ、従魔のご主人への一途な思いと依存度についてはちょっと驚いたがな。でも逆にこうも言えると思うぞ。絶対に裏切らない無条件で信じられる仲間が出来るんだから、冒険者としてはこれ以上ない喜びだと思うけどなあ。まあ、動物嫌いの家族がいたりしたら困る事があるかもしれんが、俺達にはそっちの心配はないので大丈夫だよ」
何故か最後は胸を張ってそう言ったパロットさんの言葉に、ユーニンさんとドワーフのクラウスさんだけでなく、ダイさんとナフさんまで揃って大爆笑していたので、どうやらここにいるのは、俺も含めて全員家族のいないぼっち族みたいだ。あれ、どうして視界が滲むんだろう……。
「ケンさん、話してくれてありがとう。その上でお願いする。それら全てを理解した上で、俺達はテイマーになりたいと思う。なので俺達にテイムのやり方を具体的に詳しく教えて欲しい。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
真顔になったアレクさんの言葉に、即座に全員が揃って直立して声を揃えて俺に向かって深々と頭を下げた。
「もちろん。そう言ってくれるなら喜んでなんでもお教えしますよ。じゃあ、まずはスライムのテイムからですね」
今度は感激のあまりまたしても潤んだ目を誤魔化すようにパチパチしてからこすった俺は、そう言って今は静かな目の前の茂みを見た。
「しかし、先ほどテイムしたい相手を確保してからテイムすると聞いたが、例えばスライムをテイムするにはどうするんだ? 確保すると言っても、素手でスライムに迂闊に触ったらまとわりつかれてしまう。下手をすれば窒息死だ。だが、逆に火をつけてしまえば、確保する間も無く一瞬で焼けて消滅してしまうぞ?」
「確かに、今までスライムなんて剣で一瞬で切り飛ばすかまとめて焼却するかのどちらかだったからな。確保するなんて、そもそも考えてもみなかったよ」
「確かにそうだな。確保するなら……器の中に捕まえるとかか?」
戸惑うようなパロットさんの呟きに、他の皆も腕を組んで考え込んでいる。
「俺はこんな感じで、こっちに向かってきたスライムを剣の腹で殴り飛ばしてから確保していますよ。一応、これが一番安全にスライムを確保出来る方法だと思いますね。それで、吹っ飛ばしたのを捕まえて確保してからこう聞いてやるんです。俺の仲間になるか? ってね。あるいは、俺の仲間になれ。でもいいですよ」
そう言いながら鞘ごと剣を剣帯から外して、バットを振るようにスイングして見せ、それからつまむ振りをして自分の顔の前へ持ってくる。
まあ、他にも方法はあるかもしれないけど、俺はずっとこの方法でやってきたからね。
「成る程。確かにそれなら張り付かれる事なく安全に確保出来そうだな。殴り飛ばす程度なら死にはしないだろうがある程度は弱るだろうから、そこを捕まえてテイムするわけか。少々可哀想な気もするが、まあ、ここは安全第一で行くべきだな」
うんうんと頷くアレクさんの言葉に、真顔になった全員が揃って頷く。
「じゃあ、ご理解いただけたところで、一度やってみましょう。俺達は下がって見ています。万一確保に失敗して絡みつかれるような事があったら、即座に対応しますのでご安心ください」
スライムといえども、軽く見るのは危険だ。鼻や口をマジで塞がれたら、上位冒険者であっても死ぬ事だってあるだろうからな。
「ええ、よろしくお願いします」
アレクさんの言葉に頷き、それぞれ剣や杖を握りしめて身構える。
「じゃあ、いきますよ!」
足元に落ちていた小石を拾った俺は、笑顔でそう言って手にした石を思いっきり茂みに向かって投げ込んだのだった。
さあ、初心者達による初のスライムテイムは上手くいくのだろうか?
頑張れ! テイマー希望者の皆!




