今後の予定
「はあ、飲んだ翌朝にいつも当たり前のようにこれを用意してくれるケンに、心から感謝するよ。それにしても、これは美味い」
鎧海老の脚が入った四杯目の雑炊を食べながら、しみじみとハスフェルが呟いている。
その隣で同意するように頷いているギイとオンハルトの爺さんも、それぞれ三杯目の雑魚海老のお粥と鎧海老の脚が入った雑炊を爆食中だ。
でもってヴォイスさんとアレクさん達三人も、最初こそ遠慮していたんだけど海老各種の切り落としがたっぷり入った雑炊を一口食べた途端、全員揃って無言になり、ハスフェルの言葉にもの凄い勢いで頷いている。
でもって、こちらは既に各種鍋を巡回して五杯目を爆食中だ。
「喜んで食ってくれたら頑張って作った甲斐があるよ。それより、あれだけ飲んだ翌朝に、それだけの量を食べられるお前らの胃袋が俺は怖いよ」
海老各種の切り落としが入った雑炊を食べながらの、呆れたような俺の言葉に部屋は笑いに包まれたのだった。
ちなみに俺が食べているこれは、毎回シャムエル様と半分こしての二杯目だから、事実上まだお椀一杯目だよ。
「それにしても、スライムの有用性の話は、聞いてはいたが目の当たりにすると驚いたなんてものではなかったな。あの寝心地の良いベッドもそうだし、あの硬い鎧海老の甲羅を道具も使わずに割って捌いてしまうんだからな。いやあ、冗談抜きでスライムが欲しいよ。なあケンさん、俺達でもテイマーになれるだろうか?」
また別のお粥をお椀いっぱいに取り分けながら、アレクさんが真顔で俺にそう尋ねてくる。
ダイさんとナフさんもその言葉に食べる手を止めて顔を上げ、揃って振り返って俺を真顔で見ている。
『ええと、ちょっと教えて欲しいんだけど、彼らにテイマーとして才能ってありそう?』
迂闊に返事をして才能が無かったら可哀想なので、ここはシャムエル様にこっそり念話で確認しておく。
「そうだねえ。あのアレクって人は案外才能がありそうだね。この四人の中なら一番反応が良いね。あれなら、上位種であるオーロラ種や飛び地のジェムモンスター、地下洞窟の恐竜なんかはさすがに無理だろうけど、それなりの強さの従魔を複数テイムして余裕で魔獣使いになれるんじゃないかな? まあ、本人の頑張り次第な部分は多そうだけどね。あとの二人も……うん、魔獣使いは無理そうだけどテイマーならなんとかなりそうだよ。それからあのギルドマスターも、まあまあ才能はありそうだよ。頑張れば、魔獣使いも夢ではないかな?」
俺の念話に、お粥を食べる手を止めたシャムエル様が、少し考えながらアレクさん達とヴォイスさんを順番に見てからそう教えてくれた。
『お、そうなんだ。じゃあ、冗談抜きでパロットさん達もスライムをテイムしたがっていたから、海産物料理が一段落したら彼らにも声をかけて全員引き連れて郊外へ出て、ハンプールの街でやったみたいに、またテイマー講習会兼スライム集めを開催してもいいかもな』
「うん、いいんじゃない? この街周辺の森にも、スライムの出現場所は幾つもあるからね」
笑って目を細めたシャムエル様は、それだけ言うとまたせっせとお粥を食べ始めた。
「どこまで出来るかは分かりませんが、テイマーや魔獣使いの心得や、従魔の扱い方なんかはある程度は教えてあげられるかと思います。料理が一段落したら、パロットさん達も誘ってテイマー講習会をやってみますか? 何なら実技訓練を兼ねてスライム集めもお手伝いしますよ」
笑った俺がそう言うと、アレクさん達とヴォイスさんが揃って目を見開いていた。
「実を言うと、ハンプールで早駆け祭りの前に、参加する為に集まってきた新人テイマー達に、ギルドから正式な依頼を受けて順番に講習会をしたり郊外へ一緒に出てテイムする手伝いをしたりしたんですよ。で、無事に皆魔獣使いになれたんですけど、結局、教えた弟子に俺がレースで負けて三連覇はならずってオチがつきましたよ」
最後は苦笑いしながらそう言って肩をすくめる。
「いやいや、勝負は時の運。是非夏の早駆け祭りでの王者復活を期待しますので頑張ってください。その春の早駆け祭りでは、文字通り勝利の女神が同着一位だったと聞きました。確か、女性騎手での第一位は初めてだったのでは?」
「あはは、そうなんですよね。大番狂わせで、払い戻しは相当な額だったって聞きましたよ」
「確かにそうでしょうな。いやあ、ギルドマスターの立場でなければ、俺も昔のようにハンプールへ行って早駆け祭りをこの目で見たいものです」
うんうんと頷く本音ダダ漏れなヴォイスさんの言葉に、横で聞いていたハスフェル達も大笑いしていた。
「では、ケンさんの予定が空けばいつでもギルドに声をかけてください。もしかしたら他にもテイマー希望の者がいるかもしれませんから人数を確認しておき、ギルドからケンさんに、正式にテイマー講習会の講師として指名依頼を出させていただきます」
この辺りの事って、俺としてはわざわざ指名依頼を出すなんて大層だと思うけど、ギルド的にはなあなあにしない方がいいのだろう。
「了解です。じゃあもう少し料理もしたいし買い出しもしたいので、落ち着いたら連絡しますね」
「ええ、改めましてよろしくお願いします」
笑ったヴォイスさんに右手を差し出されて、俺も笑顔で握り返したのだった。
ううん、俺の手が華奢に見えるくらいにヴォイスさんの手がデカいぞ〜〜!




