まずは朝食だな
「さてと、じゃあ作るとしますか」
スライム達を引き連れてキッチンに行った俺は、そう呟いて持っていた鞄を作業台の端に置く。
一応、キッチンと皆が寝ている部屋の間には仕切りの壁はあるんだけど、扉は無いので丸見えだ。
まあ、角度的にヴォイスさんやアレクさん達が寝ている位置からは見えないだろうとは思うけど、ここにはサクラが入ってくれているので万一を考えて材料は鞄から取り出すように見せておかないとな。
「ええと、じゃあ今から言うものを出してくれよな」
小さな声でサクラにそうお願いして、二日酔いメニューの定番、お粥を作る際に使う土鍋や調味料、それから一番出汁などの材料を一通り出してもらう。
具は、小さい雑魚海老と、やや小さめの鎧海老の脚の身、それから海老各種の切り落としだ。
小さい雑魚海老は、尻尾まで全部殻を外してもらってあるので丸ごと使える。多分、これを茹でたら直径2センチくらいになりそうなレベルの小ささだけど、まあお粥に入れるなら逆に丁度良い大きさだろう。
鎧海老の脚の身も全部殻から外してもらってあるので、そのまま使える。でもちょっと細長いので、これは一口で食べられるように適当な大きさにスライム達に切っておいてもらう。
それから、鎧海老の胴体と巨大車海老を料理した際に出た、端っこの切り落とし部分をまとめておいた大皿を見て少し考え、これは全部まとめてスライム達にお願いして小さめの一口サイズに切っておいてもらう。
よし、これで具材は完成だ。
後は、玉子とネギくらいあればいいだろう。
「じゃあ、味付けは定番の和風出汁で作る雑炊バージョンと、後はシンプル塩味オンリーのお粥の二種類でいいな」
小さくそう呟き一番大きな土鍋をコンロに全部で十個並べた俺は、半分の五個にはお水を入れ、残りの五個には一番出汁の入った寸胴鍋からお玉を使ってお出汁を取り分けて行った。
一応、定番のたまご粥や刻んだ野菜を入れた雑炊、それから豚骨スープを使ったガッツリ系のお粥や鶏がらスープを使った鶏団子雑炊なんかは作り置きがあるから、わざわざ作る必要はないんだけど、やっぱりせっかくの海老が手に入ったんだから海老入りのお粥や雑炊が欲しいよな。ってか、俺が食べたいからガッツリ作るよ。
お出汁の方にはお酒とみりんと醤油で順番に味付けをしていきお湯が沸いてきたところで、数と量を確認しながら雑魚海老とご飯、刻んだ鎧海老の脚とご飯、それから細切れのいろんな海老の身とご飯を並んだ土鍋に順番に投入していく。
「ご飯がほぐれるように、軽く火を入れて混ぜるよ〜〜〜」
そう言いつつ菜箸で土鍋の中のご飯を順番にほぐしていき、合間に具の雑魚海老と鎧海老の脚を摘んでみて火の通り具合も確認する。
当然、味見する時にはシャムエル様がコンロの横でカリディアと並んで踊り始めていたので、その度に小さい身を渡す羽目になったよ。
「よし、もういいな。塩味は……うん、もうちょい塩だな」
シンプル雑魚海老粥は思ったよりも薄味だったので、軽く塩を振り入れてから混ぜる。
「よし、出来た。こっちは大丈夫そうだな」
順番に味見をして塩加減を確認してはシャムエル様にも渡してやり、全部出来上がったところで蓋をして自分で収納しておく。
頑張ってずっと一緒に踊っていたカリディアには、いつもの飛び地の激うまブドウを一粒渡しておいたよ。
「この熱々のお鍋でもそのまま収納出来るって、考えたらすごい事だよなあ。でもまあ、出す時には鍋つかみ必須だけどさ」
苦笑いしつつ、外した鍋つかみを手にしたままで部屋に戻る。
「おおい、起きろよ〜〜!」
ヴォイスさんは起きてはいるもののまだスライムベッドに寝転がったままだ。でもって、それ以外の全員がまだ熟睡中だ。
いつもとは逆の立場にちょっと優越感に浸りつつ、笑いながら近くにあったハスフェルの寝ているスライムベッドを思い切り揺らしてやる。
「うおお! 何だ?」
当然、驚いたハスフェルがそう叫んで飛び起きる。
吹き出した俺を見てハスフェルも吹き出し、そのまま仰向けに倒れる。
「ああ、さすがに飲みすぎたな……うん、このいい香りは、もしや海老でお粥か雑炊を作ってくれたのか?」
クンクンとマックスみたいに匂いを嗅いだハスフェルの言葉に、ちょっとドヤ顔になる俺。
「おう、雑魚海老と鎧海老の脚の身、それから海老各種の切り落としを使ったお粥と雑炊があるよ。もちろんいつもの定番のお粥や雑炊もあるぞ」
「飲んだ翌朝に、当たり前のようにそれを出してくれるお前に、心から感謝するよ〜〜」
バンザイをするように両手を上げたハスフェルの笑った声に、もう一回ドヤ顔になった俺だったよ。
美味しい水を取り出して飲み復活したハスフェルが起きてから顔を洗って戻って来て、まだ寝ていた全員を順番に叩き起こして洗面所へ追いやってくれたので、俺はその間にテーブルの上に簡易コンロを取り出して並べ、新作のお粥や雑炊の入った土鍋を並べていった。
それから、食べるかどうかは分からないけど、一応定番のたまご粥と刻み野菜の雑炊、それから豚骨スープの雑炊の鍋も出しておく。
まだ少し寝ぼけてはいるが、顔を洗って復活した皆が部屋に戻って来たのを見て、笑った俺は取り分け用の大きなお椀を取り出して並べたのだった。
あ、水分補給用に冷やした麦茶もガッツリ出しておこう。




