試食という名の飲み会の始まり!
「塩辛は、火を通しても美味いんだぞ。って事で。まずはこれだ」
また吟醸酒をぐいっと飲み干した俺は、スライム達に用意してもらったざく切りのキャベツをシャムエル様に見せる。
それから、用意しておいたフライパンにオリーブオイルを軽く回し入れてからコンロの火をつけてキャベツをぶち込み、そのまままずは軽く炒める。
それからすりおろしたニンニクと塩辛を一緒に入れてさらに炒める。
塩辛に火が通ったら軽く塩胡椒とお酒少々、それから最後にちょっとだけ醤油を鍋肌に回し入れれば完成だ。
これはキャベツと塩辛に火を通しすぎないのがコツかな。
「へえ、なんだか良い香りがするね!」
キラッキラに目を輝かせたシャムエル様が、当然のように小皿を差し出してくる。
そしてステップを踏みながら歌い出したのは、失職に聞こえる例の試食の歌だ。
「しっしょく、しっしょく! しっしょくだ、イェ〜イ!」
「だから、それは失職に聞こえるからやめてくれって」
苦笑いしつつ小皿を受け取り、味見用にキャベツと塩辛を適当に入れてやる。
「もちろん、これも吟醸酒と合うか試さないとね!」
そして当然の様にグラスが差し出され、にっこり笑った俺もマイグラスを並べて追加の吟醸酒を注ぎ入れる。
「あれ? もう無いぞ。じゃあこっちかな」
しかし、もう瓶の中は空だったらしく雫しか出てこない。
笑った俺は、かなり酔いが回っている気がするぞ。
一応、それほど酒精が強くないのを収納していたんだけど、そもそも吟醸酒自体それなりにきついお酒だからね。
俺だけでなくシャムエル様もかなり酔いが回っているみたいなんだけど、双方共に止めどころが分からない。
って事で、そのまま新しい吟醸酒の瓶を取り出し栓を開ける。
顔を見合わせてまた乾杯したのだった。うん、この吟醸酒にも合うみたいですねえ……。
鼻歌まじりに蒸したじゃがいもに塩辛を合わせていたところで、ノックの音が聞こえて驚いて部屋を見る。
「ケンさん、お言葉に甘えて押し掛けさせてもらったよ〜〜」
笑ったアレクさん達の声が聞こえて納得した俺は、ちょうど手の空いていたアルファに頼んで扉を開けてもらった。
笑顔のアレクさん達の後ろには、ヴォイスさんも一緒に来ていた。
「おすすめの酒を色々持ってきたから、ここに置くぞ」
ガチャガチャと大きな音を立てながら台車を押して入ってきたアレクさんの言葉に、思わず吹き出す俺。
だって、アレクさんとダイさんが押していた台車には、俺でも入れそうなくらいにデカい木箱がそれぞれ四段積み上げられていたのだ。
あれ一箱で、いつも飲んでいる1リットルサイズのビール瓶ならどれくらい入るんだろう。
まあ、何か持ってきてくれるだろうとは思っていたけど、予想以上の量にもう笑うしかない俺だったよ。
「ううん、部屋中にめっちゃ良い香りがしているんだが、今は何を作っているんだ?」
「ってかケンさん! すでに飲んでいるな! 料理しながら一杯やるなんて、なんて贅沢な事しやがる!」
木箱を積んだ台車を扉横の壁際に並べて置いたアレクさん達が、興味津々って感じにキッチンを覗きに来て、空っぽの盃と並んだ吟醸酒の瓶を見てそう叫ぶ。
「あはは、これは料理をする奴の特権なんですよ〜〜ええと、ちなみに今作っているのは、この塩辛を使った料理です。これは酒に、特に吟醸酒にピッタリなんですよ。ほら、試作したら、本当に合うかどうかは試してみないと駄目でしょう?」
「成る程。では、俺達が責任を持って試食させていただこう!」
真顔で進み出たヴォイスさんの言葉にアレクさん達も揃って吹き出す。
「あはは、ではこちらをどうぞ〜〜」
笑いながらそう言い、鞄に飛び込んだサクラが即座に取り出してくれたお酒用の小さめのグラスを並べ、栓を抜いたばかりの新しい吟醸酒を注ぎ入れる。
これは、ハスフェルから貰った吟醸酒でそれほど高級なものではないらしいが、ちょっとフルーティーな香りのするそれほど酒精の強くない一品だ。
「おお、これは良い香りだ。では、料理上手なケンさんに、乾杯!」
笑ったヴォイスさんの言葉に俺も吹き出し、笑顔で頷き合ってからグイッといく。
「ちなみに、これがごま油を足した塩辛で、こっちが塩辛のキャベツ炒め。それでこっちがじゃがいもの塩辛和え。どれも美味しいですよ〜〜」
お箸を使えるかどうか分からなかったので、全員分のお箸とフォークとスプーンを出しておく。
でも、全員が笑顔でお箸を手にするのを見て、ちょっと嬉しくなった俺だったよ。
って事で、何故かキッチンで立ったまま試食会という名の飲み会が始まってしまい、今日作った新作料理を試食という名目で少しずつ取り分けては美味しくいただき彼らから大絶賛をいただき、大盛り上がりになったのだった。
そして場所を部屋に移してソファーや椅子に座ったあとは、俺が持っていた吟醸酒だけでなく、彼らが持って来てくれた地ビールや吟醸酒、それから芋焼酎や麦焼酎などが次から次へと用意されその度に乾杯し、その結果……へとへとに疲れたハスフェル達が戻ってくる頃には、完全なる酔っ払いが五人も爆誕していたのだった。
だってどの料理も、最高に吟醸酒に良く合って甲乙つけ難かったんだからさ……。




