シーフード料理は続くよどこまでも!
「よし、まあこれくらいあれば良いだろう。ううん色々作って楽しかったぞ」
ずらりと並んだパスタ料理を前に、俺はにんまりと笑う。
シャムエル様からも美味しいと太鼓判をもらったイカスミスパゲッティを量産したあとは、海産物系のパスタを色々と量産してみたんだよな。
まずは朝市で見つけた魚卵、間違いなくたらこと思われるそれを使った、たらこパスタだ。
これは、シンプルにバターと醤油と一番出汁の味付けにネギを散らしただけの、シンプル和風たらこパスタバージョンと、トッピングにたっぷりのほぐした焼きたらことツナマヨを盛り付けた贅沢バージョンを作ってみた。
残念ながら明太子はまだ見つけていないけれど、案外あるのではないかとちょっと期待している。
後でアレクさんかパロットさん辺りに、明太子っぽいのがないか聞いてみても良いかもしれない。
それから、雑魚海老や鎧海老の脚の部分をたっぷりと入れたホワイトソース味のエビグラタンも作ってみた。
もちろん、これは耐熱容器に入れて、たっぷりのチーズを振りかけてからオーブンで焼いてある。
他には、雑魚海老とイカとホタテにほうれん草を加えてバターと醤油で味付けをしただけのシーフードスパゲッティや、ホタテや雑魚海老に塩昆布を絡め、刻んだネギをたっぷりと散らした和風スパゲッティなんかも作ってみた。
ちなみにこれは、どちらも元いた世界での俺が残業したお疲れの日なんかに作っていたレシピだよ。
冷凍シーフードミックスと冷凍ほうれん草、細切りの塩昆布があれば、あとは乾燥スパゲッティを専用容器でレンチンすれば出来る簡単時短レシピで、よく作っていたんだよ。
不意に思い出して作ってみたら予想以上に上手く出来て、懐かしい味にちょっと涙腺が緩んだのは内緒だ。
「そろそろ日が暮れてきたな。さて、じゃああとはこれだな」
一段落したところで薄暗くなってきたのに気付き、慌ててランプに火を入れて壁にある金具に引っ掛けておく。
部屋に戻ってこちらにも一通り明かりを灯してからキッチンに戻り、自分で収納していた塩辛のデカい瓶を取り出す。
「ううん、やっぱりまずは味見をしてみないとな」
かなり硬い蓋を側にいたサクラに開けてもらってからそう呟いた俺は、小皿を取り出して塩辛をお箸でちょっとだけ摘んで取り出す。
「ええ、何それ? なんだかネバネバしていて気持ち悪いんですけど〜〜?」
驚いたのだろう、いつもの倍サイズになった尻尾をバンバンと振り回しつつシャムエル様が小皿を覗き込んでいる。
「これはイカの塩辛だよ。俺は好きなんだけど、塩辛は好みが分かれるものの代表レベルだからなあ。シャムエル様が美味しいと思うかどうかは俺には分からないよ。とりあえず食ってみるか?」
「ううん、さっきのイカスミスパゲッティも美味しかったから、ケンの言う事は信用しているんだけど……でもねえ……」
ねっとりとした塩辛を前に完全にドン引き状態のシャムエル様を見て苦笑いした俺は、もう一つ小皿を取り出してシャムエル様用に一切れだけ塩辛を取った。
「ちなみにこれは、吟醸酒とめっちゃ合うぞ。俺はとりあえず確認のために一杯やるよ」
にんまりと笑ってそう言いながら取り出したのは、自分で収納している吟醸酒の瓶だ。
「ええ、それはずるい! 私も検証してみるので、ここにください!」
即座に取り出された小さな盃を見て吹き出した俺は、自分の盃とシャムエル様の杯にゆっくりと吟醸酒を注いだ。
「では、いただきます」
若干テンションの低いシャムエル様の声に苦笑いしつつ頷き、お箸で塩辛を摘んで口に入れる。
「うん、この独特の香りと舌触り。良いねえ……」
じっくりと噛み締めて、懐かしい香りと味をしみじみと味わう。
「で、ここに吟醸酒っと」
そう呟いてぐいっと一杯。
「ううん。口の中に広がる吟醸酒の香りに、塩辛が重なる。ああ、美味い……」
「へえ、案外美味しいんだね。確かにちょっと独特の味と香りだけど、吟醸酒に合うってケンの意見には全面的に賛成するね。うん、良いね」
あっという間に塩辛を食べて吟醸酒も飲み干したシャムエル様が、何度も頷きつつ嬉しそうに笑う。
「気に入ってもらえたみたいで嬉しいよ。じゃあこれを使った料理もお楽しみに〜〜」
「へ? これで料理をするの?」
驚いたシャムエル様の言葉に笑顔で頷いた俺は、とりあえず塩辛に合わせるのに一番定番であろうキャベツを取り出して見せた。
「例えば、このキャベツのざく切りに塩辛を合わせて炒める。もうそれだけで美味しい一品が出来上がるぞ。あ、それにスパゲッティを合わせたのもいけるから、これも作ろう」
キラッキラに目を輝かせるシャムエル様にそう言った俺は、もう一度にんまりと笑って頷いて見せる。
「ちなみに、この塩辛にごま油をちょいと垂らしただけで、また違う味になるんだよな」
そう言いながら、さっきの小皿に塩辛を取り出し、そこにごま油を軽く回しかけて混ぜれば出来上がりだ。
これは会社近くにあった居酒屋に同僚と飲みに行った時には、ほぼ毎回頼んでいた酒のあてに定番のメニューだったんだよな。
塩辛がある時には、宅飲みでも作ったくらいに気に入っていた一品だよ。
「へえ、ごま油を混ぜただけなのにそんなに変わるの? あ、じゃあそれにも合うかどうか検証しないとね!」
空になった盃を差し出されて吹き出した俺は、自分の分の盃と並べてまた吟醸酒を注ぐ。
「では、いっただっきま〜〜〜す!」
今度はいつものハイテンションでそう言ったシャムエル様が、両手で塩辛を引っ掴んで齧り付く。
「うわあ、本当だ! さっきのと全然違うね! うん、これも美味しい!」
そう言いながらぐいっと盃を呷るシャムエル様を見て笑った俺も、ごま油をかけた塩辛を口に入れてから吟醸酒をぐいっと飲み干したのだった。
うん、やっぱり塩辛に吟醸酒は合うよな。美味しい。




