解体の終了と水遊び!
「じゃあ、とりあえず先ほど出して頂いた鎧海老、全部まとめてこの子達に処理してもらいますね」
話が一段落したところでそう言い、捕まえたままだったサクラを一旦作業台の上に置いてやる。
「じゃあ、順番にお願い出来るかな」
そう言いながら、先程俺が自分で収納していた鎧海老を一匹、まずは作業台の上に取り出す。
「もちろん任せて〜〜〜!」
「すぐにやるからね〜〜!」
「ご主人は、中身の受け取り準備をよろしくで〜〜す!」
張り切ったスライム達が次々に集まってきて、そう言いながらまた鎧海老に飛びついていく。
先ほどスライム達が処理してくれた鎧海老よりもこちらの方が一回りくらい大きかったんだけど、スライム達は特に問題なくあっという間にこれも解体してしまった。
しかも、どう見ても先ほどよりも手際が良くなっているし、殻には全くと言って良いほど身が付いていない。
もう完璧な処理だよ。
「お、おう、じゃあ次を頼むよ」
鞄に飛び込んでもらったサクラに空いているバットをありったけ取り出してもらい、もう一匹捌いたところで慌ててストップをかけた。
何しろ、もうこれ以上は置いておく場所がない。とにかく桁違いにデカい身のおかげで、手持ちのお皿ごときではそもそも身を載せられない。
「待った待った。とりあえずここまで! あとは俺が料理をして在庫が減ってからまた捌いてくれるか」
残りの鎧海老は、後でサクラに預けておこう。スライム達の中にあれば時間停止だから古くなって傷む心配もないからな。
「ええ〜〜もっとやりたいのに〜〜」
しかし、やる気満々だったのに俺に止められて不満たらたらなスライム達。そんな子達を見て苦笑いした俺は、ため息を吐きつつ、とりあえず機嫌を直してもらえるように撫でたりおにぎりにしたりしてやる。
「だから捌いてもらっても、もう置くところがないんだよ。午後からはまたがっつり料理をするから、また在庫が減ったら捌いてくれよな」
言い聞かせるように少しゆっくりと話しかけてやると、ようやく納得してくれたらしいスライム達が一斉にビヨンと伸びた。
「わかりました〜〜!」
「じゃあ、また無くなったらいつでも言ってね」
「おう、もちろんだよ。ええと、じゃあとりあえずその辺を片付けてくれるか」
ずらっと並んだバットやトレーに載せられた巨大な鎧海老の身を、そう言いながら鞄に入ってくれたサクラにどんどん預けていく。
こうしておけば、アレクさん達には、俺が自分で収納しているように見えるだろう。
「じゃあ、俺達も一旦片付けるか。いやあ、なかなかに面白い経験だったぞ」
俺の言葉にアレクさん達も苦笑いしつつそう言うと、使った道具を集めて水場へ運び始めた。恐らくあそこで洗おうとしているのだろう。
「あの、汚れている道具はスライム達にお任せいただいて大丈夫ですよ」
それを見た俺は、収納していた手を止めて足元にいたスライム達を見た。
「なあ、アレクさん達に聞いて、使った道具を綺麗にするお手伝いをしてくれるか」
「はあい、じゃあお手伝いしてきま〜〜す!」
そう答えた何匹かのスライム達が、嬉しそうにアレクさん達のところへ跳ね飛んでいった。
「ええ? さっきのスプーンみたいに、これも綺麗にしてくれるのか?」
振り返ったアレクさんが、足元のスライム達を見ながら驚いたようにそう言って俺を見る。
「ええ、どうして欲しいか言ってくだされば、その通りにしてくれますので」
「了解だ、じゃあこれを今から洗おうと思っていたんだよ。ここが汚れているから……」
ペンチやニッパみたいな道具やデカい包丁、それから俺も使わせて頂いた鎖帷子の手袋など、次々に取り出しては説明をはじめてくれている。
それを見た俺は、まだはめたままになっていた鎖帷子の手袋を慌てて外してお返ししたよ。
しかし、半分以上のスライム達は、まだ俺の側に残ったままだ。
「ねえご主人。この殻はどうするの?」
アクアの言葉に思わず振り返ると、アクアを先頭に残ったスライム達が見ているのは、身を取り終えた後の鎧海老の殻だ。
用意してあった巨大な木箱に無造作に突っ込まれたままになっているそれは、はっきり言ってめっちゃ大量にあるよ。そうだよな。エビとかカニって廃棄率高いんだよ。
ついでに言うと、木箱の底からは汁というか磯の香りのする液体や滑りぽいものが染み出して流れている。
若干遠い目になった俺だったけど、そわそわしているスライム達を見てこの子達の言いたい事を理解した。
「あの、ちょっと質問なんですが、この剥がした殻って何かに加工したりします? それとも、もう廃棄物として捨てるだけですか?」
めっちゃ硬いから、もしかしたら防具の素材とかになるのかもしれない。
そう考えての質問だったが、答えてくれたのは台車を運んで来たヴォイスさんだった。
「それは、そのまま廃棄物として処理するよ。ごく一部は乾燥させて砕いて畑の肥料なんかにも使われる事もあるが、まあほぼゴミだな。乾燥させてから燃やすだけだよ」
予想通りのその言葉に、にんまりと笑う俺。
「あの、じゃあ今回出た廃棄物も、俺が全部まとめて引き取ります」
満面の笑みの俺の言葉に、ヴォイスさんが無言になる。
「もしかして……それもスライム達が処理してくれるのか?」
「処理と言いますか、スライム達にとってはご褒美みたいなものです。では、これも全部いただきますね。じゃあそっちの片付けが終わったら、これも全部食べちゃってくれても良いからな。それで、全部片付いたらちょっとだけそこの水場で水遊びもさせてもらおう。良いですか?」
俺の言葉に、一瞬驚いたように目を見開いたヴォイスさんだったけど、すぐに笑って大きく頷いてくれた。
「成る程。スライム達は水遊びが好きなのか。もちろん構わないぞ。ここなら床を水浸しにしても宿泊所なんかとは違って気にしなくて良いからな」
全面タイル張りの綺麗な床を見て、俺も思わず笑顔になる。
水場に近い場所の床には若干斜めになっていて排水口もあるので、確かにこれならどれだけ水を跳ね飛ばしても床が水浸しになる心配はしなくても良さそうだ。
「わあい! では早く片付けま〜〜す!」
嬉しそうにそう言ったスライム達は、嬉々としてアレクさん達の道具の片付けを再開し、他の子達は俺が収納を終えて空っぽになった作業台の上や足元をあっという間に綺麗にしてくれた。
それどころか、何匹ものスライム達が壁や天井に張り付き大掃除を始めた。
「天井に、鎧海老の汁が飛んでいたから綺麗にしたよ〜〜!」
「壁にも、同じく鎧海老の汁が飛んでいたから綺麗にしました〜〜〜!」
「作業台も全部綺麗にしたよ〜〜!」
「こっちのお道具も全部綺麗になりました〜〜!」
「木箱も全部綺麗にしたよ!」
「台車も綺麗にしておきました!」
「以上でお掃除終了で〜〜す!」
最後はもう踊りださんばかりに嬉しそうな声で言われて、もう俺は笑うしかない。
「よし、お疲れ様。じゃあ好きに遊んで良いぞ」
「わあい、水遊びだ〜〜!」
そう言いながら、何故かいつもの朝のように一匹ずつ俺のところへ跳ね飛んでくる。
これはフリースローで、水槽に投げて欲しいんだな。
即座に理解した俺は、鞄を足下に置き跳ね飛んできた子達を受け止めておにぎりにしてからいつものように水槽めがけて思いっきり放り投げてやった。
とはいえ、いつもの水場よりもかなり距離が遠かったので、若干投げる力が足りずにワンバウンドしてから水槽に飛び込んでいったよ。
水槽に飛び込み、大はしゃぎして水を噴き出して遊び始めたスライム達を見て、ヴォイスさんやアレクさん達は揃って吹き出し大爆笑になったのだった。




