アレクさんのお仲間
「よし、これでとりあえず急ぎの分は終わったな。ケンさん、お待たせしました。では、アレクと合流して行くとしましょう」
駆け寄ってきたスタッフさんから渡された何かの書類にサインをしたヴォイスさんが、こっちを振り返って笑顔で手にした大きな鍵を見せる。
多分、あれが今から行く場所の鍵なんだろう。
「ええ、よろしくお願いします。実はさっき行った市場で、俺も鎧海老を丸ごと買ってみたんですよ。せっかくなので一から自分で捌いてみたいですからね。ご指導よろしくお願いします」
「おお、やる気満々ですね。もちろん喜んでお教えしますので、是非とも頑張って自分で捌いてみてください」
俺の言葉に、満面の笑みになったヴォイスさん。だけど何故だろう。笑顔のはずなのに、この湧き上がる不安は……。
ちょっとビビりつつそんな事を考えていると、奥の部屋から鞄を抱えたアレクさんが出てきた。
多分、あの鞄が収納袋なのだろう。
「おはようケンさん。良いのが入ったから楽しみにしていてくれよな」
「おはようございます。ええ、俺も楽しみです」
「よし、じゃあ行こうか」
ヴォイスさんを見てから笑顔でそう言ったアレクさんとヴォイスさん、俺の三人は、そのまま一緒にギルドの建物を出て海側へ向かう道を歩く。
しばらく歩いて到着したのは、港の端っこ辺りにある二棟並んだ大きな平屋建ての石造りの建物だった。とはいえ、かなり屋根が高いのでもしかしたらロフトみたいになっているのかもしれない。
話に聞いていた通り、海側とは反対側にやや背の低い木製の物置小屋と思しき建物がこちらも二棟、建物の影に隠れるようにして建てられていた。
そしてその物置小屋の扉は大きく開かれていて、そこでは大柄な男性が二人、何やら謎の武器のようなものを台車に積み込んでいる真っ最中だった。
「ナフ、ダイ。準備はどうだ?」
アレクさんが、背後からその大柄な男性達に話しかける。
「おう、これが最後だよ」
「さあて、久々の大物だ。腕が鳴るぜ」
揃って振り返ったその二人が、なんと二人揃ってスキンヘッドの超マッチョだった。
多分身長も体格も、ハスフェル達とタメ張れるレベル。めっちゃデカい。でもってちょっと怖い。
ヴォイスさんも超マッチョだから、この中では俺だけ小さくてへなちょこ。なんか子供になったみたいだ。
「おおい、この方が言っていた魔獣使いのケンさんだよ。ケンさん、こいつらはこんな見かけだが、気のいい奴らだよ。俺の冒険者仲間であり、鎧海老漁師の後輩だよ。こっちがナフ。それでこっちがダイだよ」
体を起こした二人が、揃ってアレクさんの声に振り返る。
右側にいた、頬に大きな傷跡のある方がナフさん。でもって左側の、額に星みたいな傷跡のある方がダイさんだ。
特にダイさんは、額の傷以外にも顔にも、それから剥き出しの太い腕にも大きな傷跡がいくつもある。
例えるなら、顔色の良いスキンヘッドのフランケンシュタインみたいだ。
ええ、万能薬があるこの世界で、あんな酷い傷跡があるってどういう事だろう。
冒険者で鎧海老漁師を兼業しているのなら、少なくともお金には不自由していないと思うんだけど違うのだろうか?
密かに首を傾げつつも、とりあえず笑顔で一礼する。
「おお、噂は聞いているよ。ナフだ。よろしく」
「ダイです。よろしく」
人懐っこい笑顔で右手を差し出してくれたナフさんと違い、ダイさんは俺を見て小さな声でそう言って右手こそ差し出してくれているが、何故か少し顔を俯き加減にしていて正面からこっちを見ない。
「ケンです。今日はよろしくお願いします」
笑顔でそう言い、まずはナフさんと握手を交わしてからダイさんの手も握る。
だけど、しっかり握り返してくれたナフさんと違い、ダイさんは、女子か! って突っ込みたくなるくらいにごく軽く握り返してきただけで、やっぱりこっちを見ない。
「ダイさん、ケンです。今日はよろしくお願いしますね」
しっかりと手を握りながら出来るだけ笑顔で、改めてそう言ってみる。
「えっ」
驚いたように、ダイさんが顔を上げて初めて俺を見た。
「お、俺が怖くないんですか?」
「ええ、そりゃあ正直に言わせていただけるのなら驚きはしましたが、怖がるのは、ちょっと違うと思いますが?」
手を握り合ったままで顔を見合わせる俺とダイさん。
「あ、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします!」
何故か嬉しそうにそう言ったダイさんが俺の手を離し、横にいたナフさんとハイタッチした。
「だから言っただろう? ケンさんなら大丈夫だって」
これまた何故かドヤ顔のアレクさんがそう言い、俺達は台車を押す二人と一緒に建物の中へと入って行ったのだった。




